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リクナビに「不信任案」が直撃か~内定辞退予測に大学、学生が猛反発

石渡嶺司大学ジャーナリスト
リクナビ合説のパンフを読む学生。内定辞退予測で個人情報漏洩の疑念も浮上。(写真:森田直樹/アフロ)

リクナビの内定辞退予測が大炎上

リクナビを運営するリクルートキャリアは2019年8月1日、リクナビが会員の行動履歴に基づく「内定辞退率」予測のサービス「リクナビDMPフォロー」の販売休止を発表しました。

このニュースから、一時は「内定辞退予測」がトレンドワード入りするほど、大きな波紋を招きました。

「リクナビDMPフォロー」は「内定辞退率」について、リクナビサイト上での行動履歴の解析結果に応じて5段階評価。38社の企業に提供されていました。

その後、リクルートキャリアは8月5日にサービス廃止を発表します。

が、問題が収束する気配はなく、それどころか、個人情報保護法、職業安定法にそれぞれ抵触する疑いも出てきました。

「本人同意の不備」ではなく個人情報保護法違反の疑い

この問題については、このYahoo!ニュース個人でも私以外のオーサーが8月2日と8月9日の2度、記事化しています。

リクナビ、学生個人の「内定辞退予測」説明なく企業へ販売…。選考への影響、オワハラにもつながる不祥事(8月2日公開、酒井一樹)

思ったより「深刻」なリクナビ問題 「スコア社会」への予兆か?(8月9日公開、今野貴)

その後、事態が動いていることもありますので、この内定辞退予測、いったい、何が問題だったのか、改めて整理します。

問題点は「個人情報保護法違反」「職業安定法違反」「予測の精度」「被害学生・大学への謝罪・補償」の4点です。

まず、1点目の個人情報保護法違反について。

リクルートキャリアのプレスリリースによると、8月5日付(本記事公開の8月13日時点ではこれが最新)でも記事タイトルに「プライバシーポリシー同意取得の不備」とあるように、あくまでも不備だった、と主張しています。

一方、就活生の個人情報を流用したことは個人情報保護法に抵触する疑いが持たれます。

2019年8月11日の読売新聞朝刊「内定辞退予測 学生への背信 個人情報同意なき商品化」は3面の社説以外、全部を使った、長めの記事です。同記事では個人情報保護法について違反状態だった、と指摘しています。

個人情報保護法は、第三者に提供する際、本人同意を義務付けている。学生はサイトへの登録時の規約で、閲覧履歴が分析・利用されることへの「同意」を求められていたが、分析・利用の内容は不明瞭だった。

(中略)

システムの不備で、約8000人の学生には規約すら示しておらず、同法違反の状態だった。

個人情報保護法の条文はこうあります。

第4章 個人情報取扱事業者の義務等 第1節 個人情報取扱事業者の義務 (利用目的の特定)

第15条 個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。

2 個人情報取扱事業者は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。 (利用目的による制限)

第16条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

つまり、内定辞退予測は、リクルートキャリアのプレスリリースにある「本人同意の不備」という軽い話ではありません。

まず、個人情報保護法違反(またはその疑いがもたれる)というかなり重い話であるのです。

職業安定法にも抵触?厚労省は調査へ

問題の2点目は職業安定法(正確には職業安定法の指針)への抵触です。

北海道新聞2019年8月9日朝刊「<フォーカス>採用激化 ルール後回し リクナビ『辞退率』販売 プライバシー侵害指摘も 学生『筒抜け怖い』」では、厚生労働省の調査開始と根本匠・厚生労働大臣のコメントを掲載しています。

リクルートキャリアが学生の内定辞退確率を企業に販売していた問題で、厚生労働省の東京労働局が同社を調査していることが8日、分かった。職業安定法の指針に違反していると認められれば、行政指導の対象になる。

「リクナビ」の事業は同法が定める「募集情報等提供事業」に該当。事業実施の際のルールとなる指針では、業務のために収集した個人情報を本人の同意なしに保管・使用することを認めていない。

根本匠厚労相は8日の記者会見で「就活生に不安な気持ちを抱かせることになり大変遺憾」と述べ、一般論とした上で「法律違反があれば厳正に指導することになる」と指摘した。

関係者によると、労働局は同社から聴取を行うなどして事実確認を進めている。

「職業安定法の指針」は「平成11年労働省告示第141号」で正確には「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針」と言います(長い!)。

該当する項目は「第4」の「2」になるでしょう。一応、「1」の「(1)」と合わせて以下が該当部分です。

第4 法第5条の4に関する事項(求職者等の個人情報の取扱い)

1 個人情報の収集、保管及び使用

(1) 職業紹介事業者等は、その業務の目的の範囲内で求職者等の個人情報(1及び2において単に「個人情報」という。)を収集することとし(以下略)

2  個人情報の適正な管理

(1)  職業紹介事業者等は、その保管又は使用に係る個人情報に関し、次の事項に係る措置を講ずるとともに、求職者等からの求めに応じ、当該措置の内容を説明しなければならないこと。

イ  個人情報を目的に応じ必要な範囲において正確かつ最新のものに保つための措置

ロ  個人情報の紛失、破壊、改ざんを防止するための措置

ハ  正当な権限を有しない者による個人情報へのアクセスを防止するための措置

ニ  収集目的に照らして保管する必要がなくなった個人情報を破棄又は削除するための措置

(2)  職業紹介事業者等が、求職者等の秘密に該当する個人情報を知り得た場合には、当該個人情報が正当な理由なく他人に知られることのないよう、厳重な管理を行わなければならないこと。なお、有料職業紹介事業者は特に厳重な管理を行わなければならないこと。

(3)  職業紹介事業者及び労働者供給事業者は、次に掲げる事項を含む個人情報の適正管理に関する規程を作成し、これを遵守しなければならないこと。

イ  個人情報を取り扱うことができる者の範囲に関する事項

ロ  個人情報を取り扱う者に対する研修等教育訓練に関する事項

ハ  本人から求められた場合の個人情報の開示又は訂正(削除を含む。以下同じ。)の取扱いに関する事項

ニ  個人情報の取扱いに関する苦情の処理に関する事項

(4)  職業紹介事業者及び労働者供給事業者は、本人が個人情報の開示又は訂正の求めをしたことを理由として、当該本人に対して不利益な取扱いをしてはならないこと。

リクルートキャリアの内定辞退予測は、この職業安定法違反にも抵触する可能性が濃厚です。だからこそ、厚生労働省労働局は調査に乗り出し、厚労相は「遺憾」とのコメントを出しているわけです。

しかも、この職業安定法違反については、リクルートキャリアだけではありません。内定辞退予測を利用した企業側の責任も問われます。

根本匠厚労相は同日の閣議後記者会見で、リクルートキャリアから情報を買い取った企業計38社についても「一般的に違反が認められる場合には厳正に指導する」と述べ、調査対象になり得るとの認識を示した。

※毎日新聞2019年8月8日朝刊「厚労省、リクナビを調査 『違反あれば指導』 内定辞退率販売」

予測精度に専門家「ノイズが多そう」

問題の3点目は予測精度です。これは4点目の謝罪・補償に関わる話でもあります。

リクルートキャリアのプレスリリースにはこうあります。

リクナビDMPフォローは、当該採用企業における前年度の応募学生のリクナビ上での行動ログなどのデータを解析の対象に、その企業に対する応募行動についてのアルゴリズムを作成します。そこに、今年度に当該採用企業に応募する学生の行動ログを照合。その結果を「採用選考のプロセスが途絶えてしまう可能性」として企業に提示することで、企業は適切なフォローを行うことができ、学生にとっては、企業とのコミュニケーションを取る機会を増やすことができます。

要するに「リクナビ上の行動ログ」の前年度分と今年度分をそれぞれ分析し照合したうえで、内定辞退率を予測するわけです。

「リクナビ上の行動ログ」というのは、就活取材18年の私からすれば、大きな疑問です。

というのも、学生本人の性格や行動などが100%、ストレートにリクナビに出るものでしょうか?

ある程度は出るでしょうけど、全部出るわけがありません。

しかも、「行動ログ」は、要するに説明会・選考の予約(またはキャンセル、無断キャンセル)、志望企業・業界のパターンあたりが候補。

そうした情報から本当に内定辞退予測ができるのでしょうか。

というわけで、内定者SNSのトップ企業で、内定者フォローの第一人者と言ってもいい、EDGE(エッジ)・佐原資寛社長に聞きました。

辞退予測については一定の信ぴょう性はあるだろうと思います。

結局、当該企業に対する志望度、入社意思は学生の志望順位と相関するので、それを可視化する上では、当該企業以外に対する興味度や、他の企業に対するアクション履歴から分析するというのは、判定の正確性と言う意味では妥当だと思います。道義的にはかなり問題がある、と思いますが。

やはり道義性については相当問題がある、との認識。

判定の正確性は妥当としながらも、以下の問題点も指摘しました。

結果的に就活を通じて、志望度が大きく変化しない限り、そこそこ正確な予測になるのではないかと思います。

ただし、就活初期時点で解析した内容だと、ノイズが高く出る可能性もあります。と言いますのも、就活の初期段階とそれ以降で志望業界や企業が大きく変わるのはここ5年ほどで大きく増えています。志望業界や企業を変える学生に問題があるわけではありません。

内定前に内定辞退予測のスコアを出すと、合否に影響しかねません。

やはり、内定後、企業が選ばれる立場になってから、解析したうえで内定者をフォローしていくのが、正確性、道義的にも正しいのではないでしょうか。

佐原社長が指摘するように、志望業界が複数にまたがる学生は売り手市場の中で増加しています。

2000年代の就職氷河期では「業界は絞った方が効率的」とするマニュアルがあり、それがある程度、有効でした。

が、2010年代の売り手市場以降はどうか、と言えば、ほぼ崩壊している、と言えます。もちろん、公務員・教員、マスコミ、フライトアテンダントなど他業界とは異なる独自性の高い採用活動を展開する職種・業界については、絞りこみも必要でしょう。

が、それ以外の業界だと、複数の業界にまたがって志望、内定まで至る学生が増えています。

そうした中で志望業界・企業のエントリーも含めて行動ログを解析、それを個人情報に紐づけるのは、正確性という点でも疑問に感じます。

学生、大学は怒り心頭で「不信任案だ!」

問題の4点目は学生への謝罪と補償をどうするか、という点です。

上記3点目で内定辞退予測の正確性について疑問点をまとめました。

が、リクルートキャリア「リクナビDMPフォロー」は内定辞退予測について「5段階で予測」(8月11日読売新聞朝刊)とあります。

つまり、約8000人の学生について内定辞退予測のスコアを勝手につけて、それを38社の企業に販売したわけです。

すでに38社に提供されているこの個人情報は、リクルートキャリアのプレスリリース(2019年8月5日付け)

『リクナビ DMP フォロー』をご利用いただいておりました 38 社の企業の皆さまには、 分析スコア等の個人情報の破棄をお願いすることとなり、多大なるご迷惑をおかけします ことをお詫び申し上げます。

の文面だけで済む話ではありません。

今後は、この約8000人の個人情報が「破棄をお願いすることになり」で本当に済むのか、はなはだ疑問です。

そして、過去の個人情報流出事件では、2015年ベネッセ事件をその典型として、被害にあった消費者・顧客に対してお詫び料として500円から数千円以上の金券を出しています。付言すると、ベネッセは500円の金券で、私の知人いわく「一度、模擬試験を受けただけで送られてきた」。

ただ、ベネッセ事件の場合、グループ会社のシステムエンジニアが情報を持ちだして名簿業者に販売していました。ベネッセの管理監督責任はあるとはいえ、ベネッセが意図して情報漏洩を起こしたわけではありません。

しかし、今回のリクルートキャリアは意図して内定辞退予測を商品化、販売しています。

はっきり言って、ベネッセよりも悪質だ。しかもプレスリリースを読む限り、「同意取得の不備」など論点をすり替えていて、これはおかしい。

こう憤る大学教職員は少なくありません。

ちょうどお盆休みに入る前に起きたこともあり、

「うちには謝罪に来たが、プレスリリースとほぼ同じ内容で意味がなかった」

「うちは謝罪の電話が来て、お盆休み明けに改めて謝罪に来るとのことだった」

「×大学は学生に説明する機会を作るよう、要求したらしい」

などなど、大学、リクルートキャリア側双方とも、かなり混乱しているようです。

中には、個人情報の漏洩を問題視して、次年度について、学生にリクナビ登録はやめさせる、とする大学職員もいました。

例年、学生にはリクナビ、マイナビなど主要ナビの登録と使い方を解説するガイダンスを開催している。が、2021年卒については、リクナビのガイダンスは外す。政治にたとえるなら「リクナビ不信任案」だ。学生や学生の保護者からの問い合わせもあるし、こちらもリクナビのプレスリリース以上のことは言えない。そもそも、個人情報保護法・職業安定法とダブルで違反していて悪質だ。おそらく「不信任案」は「可決」されるのではないか。

「大企業は採用弱者」だから使った?

ところで、この内定辞退予測、その後、ホンダとトヨタが利用したことを認めました。

職業安定法違反にリクルートキャリアだけでなく利用企業側も問われるわけですから、今後も利用企業の公表は相次ぐでしょう。

企業側としては、内定辞退予測は知りたい情報、という面もあります。

企業の採用活動においては、歩留まりを考えて内定が乱発されることによって、内定辞退することが常態化している。そんな中で、採用者を決める段階で「わが社に来てくれるかどうかの確率」を知ることができれば、かなり貴重な情報だといえる。

※2019年8月12日東洋経済オンライン「就活生データを商品化、『リクナビ問題』の本質」

ただ、全企業が欲しがるか、と言えばそうではありません。

冷ややかに見ているのは準大手以下の企業。特に中小企業は、

「リクナビはそもそも高いから使わないし、内定辞退予測で数百万円など使う余裕もない」

では、企業規模が大きくなれば利用するか、と言えばそうでもないようです。

ある大手専門商社の採用担当者は、「情報弱者ならぬ採用弱者であれば、使いたがる」と辛らつです。

採用担当者は学生のことをきちんと把握していれば、内定辞退予測など使わなくてもある程度、予測できます。

説明会や選考の予約・キャンセルを繰り返す学生は例年、一定数います。一度や二度ならまだしも何度となく繰り返す学生は途中の選考で落ちていきます。

志望業界?ああ、一時期は『教員試験と併願する学生は落とした方がいい』とか言われていましたよね。あれだって、学生と信頼関係をきちんと築いていれば、問題ありません。うちは教員試験と併願した学生が今年、入社していますし。

企業の規模に関係なく、学生と信頼関係を構築できない企業は、採用も下手。要するに「情報弱者」ならぬ「採用弱者」なんですよ。そういう企業が使いたがるのではないですか?

流通企業の採用担当者は、この「採用弱者」説について否定的でホンダやトヨタに同情的です。

ああいう大手企業にも、切れ者の採用担当者はいますし、「採用弱者」はちょっと言い過ぎでしょう。

考えられるのは、リクルートキャリアが営業に来て、日ごろの付き合いもあるから、と乗ってしまった可能性です。

新聞報道で出た400万から500万円という金額も実際には「いや、おつきあいいただければ」と無料にしたか、あるいは半額程度にしたのではないでしょうか。

それと、もう1点、分かりやすさを採用担当部署の統括役員から促された。そこに内定辞退予測が出て、というのもあり得ます。

いくら信頼関係ができていても、それは数値化しづらいし、統括の役員からすれば「言葉じゃわからない。本当に辞退しないのか?」となります。そこに内定辞退予測があれば、数値化しているので最終選考に残す、内定を出す、というのもしやすくなります。「選考にデータを使わないと約束させた」?そんなもの、リクルートキャリアの勝手ないい分でしょう。こういうデータがあって、精度が担保されていれば、そりゃ使いますよ、企業は。

リクルートキャリアは「対応を含めて回答できない状態」

現在の状況について、リクルートキャリア社外広報グループに電話取材を申し込んだところ、大学等への謝罪については、

どの程度動いているかはお答えできませんが、できるだけ謝罪にお伺いしたいと考えています。

とのこと。

ただ、過去の個人情報流出事件のようにお詫び料として学生に金券を出すかどうか、などについては、

現状は対応を含めて回答できない状態です

とのことでした。

売り手市場の長期化から脱ナビ・小規模化が進む

今回のリクルートキャリアの内定辞退予測について、背景には、就職情報会社を取り巻く厳しい環境があります。

売り手市場が続く中で、就職情報会社は競争が激化しています。

新興の就職情報会社やサービスも含めて、どこも学生を集められず、苦戦しています。

合同説明会は採用時期の分散化(通年化とも言います)で、広報解禁日の合同説明会ですら参加者数が減少を続けています。

ナビサイトの利用も同様であり、特に学生へのダイレクトメールは開封率が1%どころか、さらに下回る企業も続出。

「学生はうちの大学も含めて、主要ナビは全部、登録させられる。ところが、それで学生は殺到するダイレクトメールにうんざりして、ナビごとにメールの捨てアカウントを用意するようになった。本命企業で固めるナビを用意しておいて、それ以外のナビはダイレクトメールをろくに読まないようになった」(中部地方私立大キャリアセンター職員)

「就職情報会社はほぼ全部、ダイレクトメールが投げ売り状態。中には事情を知らない採用担当者に『うちと契約してくれたらダイレクトメールを×万通、無料にする』とおまけにしているところも。え?うち?『そんなゴミはいらないから、いくら安くなる?』とはっきり伝えて値引きさせている」(関東・機械メーカー採用担当者)

そのナビサイトも、最低限の機能だけ契約する、あるいは、全く使わない企業も増えつつあります。

「就職情報会社のナビに高い費用を払うくらいなら、小規模なイベントに参加していく方がよほど効率的。最近は大手・中小・地方とも各就職情報会社がそのことに気づいて、小規模なイベントを打つようになった」(中国・小売メーカー採用担当者)

「ナビよりも、就活カフェにスポンサー料を払って、座談会を開く方がよほど、学生と接点を持てる」(東日本・金融機関採用担当者)

内定者フォローの第一人者である佐原資寛・EDGE社長も、脱ナビの一環で学生と企業が接点を持てるイベントを10月に開催する、と話します。

弊社会議室(赤坂)で、10月26日(土曜)に学生と採用担当者がざっくばらんに話せる就活交流会を開催します。企業側は弊社の顧客企業含め15社(すでに締め切り済み)、学生は50~60人(今後、募集)を予定しています。他社主催のものに私も何度か参加させていただきましたが、学生と社会を結ぶいいイベントです。そこで弊社でも、今年、実施しようという話になりました。

この就活交流会や模擬面接・模擬グループディスカッションなどのイベントは日本全国、どの地域でもよく聞きますし、そこに企業採用担当者も参加するようになっています。

就活カフェにしろ、就活交流会などの小規模イベントにしろ、効率が悪い、というのは今は昔。

「学生とじっくり向き合う、という点では結果的には小規模イベントや就活カフェの方が効率はいい。そうなると、就職情報会社の存在は何なんだ、という話になってしまう。」(東日本・金融機関)

そう話すのは、ダイレクトメールを「ゴミ」と断じた関東・機械メーカー採用担当者。

「就職情報会社は無料利用の学生を大量に集めつつ、企業の有料利用でビジネスが成り立つ、微妙な匙加減が求められる。サーカスで言うなら『綱渡り』をしているようなものだ。ところが、そもそも無料利用の学生を大量に集めるのが難しくなった。今回の事件を機に各企業とも、『綱渡りは無理そう』と見て、就職情報会社離れが進むではないか」

私が取材したところ、この事件を好機と見て、リクルート叩きに回る就職情報会社の営業担当も相当、いるようです。その暴走ぶりを苦々しく見る採用担当者はこんな話もしてくれました。

「リクナビを叩いている就職情報会社の営業はブーメランとなって自分に跳ね返ることを理解していない」

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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