近畿大「深夜アニメ20本視聴」講義の実況中継ルポ~想像の斜め上を行くガチ中のガチだった!

教室の画面で一斉に流れるアニメ。もちろん、ちゃんとした講義の一環

「アニメ週20本視聴」シラバスがねとらぼなどで話題に

4月、ねとらぼで近畿大文芸学部の講義が話題になりました。

近畿大学で「週20本以上のアニメ視聴」を前提とした授業が実施中 ハードル高いと話題に

ねとらぼ記事。そう言えばアニメネタ、好きですね。
ねとらぼ記事。そう言えばアニメネタ、好きですね。

「深夜枠を中心に週に20本以上『アニメ』を視聴しておくこと」――ある大学の講義が、このような項目を“受講の前提“に掲げて注目を集めています。1話25分として予習に毎回8時間20分以上……!!

(中略)

アニメ監督の庵野秀明さん、幾原邦彦さんについてはそれぞれ90分使って学ぶそうで、「『輪るピングドラム』徹底分析」という記述も。前期のラストは「PSYCHO-PASS」がテーマで、「監獄の誕生」(ミシェル・フーコー)、「環境管理型権力」といったキーワードがちりばめられています。あぁ、これは完全にガチなやつだ。

(中略)

ネット上では「楽しそう」「受けてみたい」といった肯定的なものから「エリート向け」「この授業のための生活しか許されない」と畏怖するものまで、いろいろなコメントが寄せられていました。

「映像・芸術論1」のシラバス。中ほどの「授業時間外に必要な学修」に注目
「映像・芸術論1」のシラバス。中ほどの「授業時間外に必要な学修」に注目

その後、BuzzFeedさんも追撃記事を掲載。

こちらは担当の町口先生へのインタビュー。

町口哲生先生(町口先生提供)
町口哲生先生(町口先生提供)

その次となる、本稿ではインタビューだけではありません。

どうせなら、ということで、講義に参加。

どの程度、ガチでハードルが高いのか、それとも、アニメを見るだけで終わる「バカ大学」化の現れなのか、見学をしてきました。

近鉄難波駅の近畿大広告。やっぱり、マグロですか。
近鉄難波駅の近畿大広告。やっぱり、マグロですか。
「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」のキャッチコピーがいいですね。まあ、私などはしょっちゅう言っていますが。
「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」のキャッチコピーがいいですね。まあ、私などはしょっちゅう言っていますが。

なお、取材前に町口先生のTwitterを拝見すると、

「Yxxoo!ニュ○スの潜入ルポみたいな取材らしい。オタク的な知識がある方とそうでない方とでは印象が違うと思うけれど、受ける方向でいく。でもちょっとこの点が心配かな…」

なるほど。

オタク的な知識という点では、

・ファンの作品は、ジブリ系、エヴァンゲリヲン、銀河英雄伝、ガールズ&パンツァーなど

・ガンダム、ドラゴンボール、けいおんなど、見ていないアニメはそれなりにあり

・コミケは早朝4時50分(始発)から並んだこと、それなりにあり

・漫画の所蔵は数えたことないけどたぶん1000冊は軽くある

などなど。

ここ、最近だと、『ガールズ&パンツァー』に、はまっています。

オタク知識はそれなりにあるような、ないような…。

教室に到着するとアニメ画面が広がる

教室に到着したのが講義開始5分前ほど。

到着すると、「コードギアス 反逆のルルーシュ R2」の映像が教室中に流れていました。

これは壮観!

中央スクリーンと各席モニターに広がるアニメ。大学広報部職員も「これはすごい」と撮影
中央スクリーンと各席モニターに広がるアニメ。大学広報部職員も「これはすごい」と撮影

なお、この時点で、このアニメが「コードギアス」であることをこの石渡、分かっていません。

私のアニメ関連の知識について、ざっとお話しすると、

町口「あー、ずいぶん偏っていますねえ」

はい、否定はしません。

開始1分でついていけない取材者と広報部職員2人

講義中の町口先生
講義中の町口先生

町口:はい、連休明けの授業を始めていきます。

毎回、講義のルールを出していますが、今回から4番と5番が増えました。

4番、レジュメの下線部にラインマーカーを引くこと。

それと、5番、毎回講義の際に皆さんを見ていると、筆記用具を持たないまま受講している人がいます。それは受講生の態度としてよろしくない。

というわけで、僕が話したことで重要と思ったことは筆記用具で適宜、メモを取る、と。

ま、そんな感じかな。

前回はゼロ年代以降のセカイ系について解説しました。

講義のルール。それくらいわかれよ、と思うがどの大学でもできない学生はそれなりに存在。心なしか、就活でもできない学生はそれなりに存在
講義のルール。それくらいわかれよ、と思うがどの大学でもできない学生はそれなりに存在。心なしか、就活でもできない学生はそれなりに存在

はい、この時点ですでに、私、ならびにアテンドをしてくれた近畿大広報部職員のお二人は何が何だかわかっていません。

という前提を町口先生も最初から、わかってくれていたのか、講義後のインタビューで、昨年の講義レジュメ14回分を資料として渡してくれました。

本稿では以降、この資料も合わせてまとめていますが、この石渡、半分くらいしかついていけなかったことを先に告白する次第です。

なお、「セカイ系」とは、

自意識過剰な主人公が「意識」のカテゴリーだけが「世界」であると判断し行動する作品。その源流は『新世紀エヴァンゲリオン』(碇シンジの一人語り)とされている。のちに東浩紀さんらが再定義し、「きみとぼくという小さな関係性が、世界の危機やこの世の終わりといった抽象的大問題に直結する作品群」(『美少女ゲームの臨界点』編集部注)。つまり「きみとぼく」⇔「社会」⇔「世界」という3段階のうち、「社会」を飛ばして「きみとぼく」と「世界」のあり方が直結してしまうような作品を指すようになった。

とのことです。ほほう。

町口:ゼロ年代後期、セカイ系の流行は沈静化。

特筆は9点あります。

1:ネオセカイ系

2:サヴァイヴ系

3:世界内線系

4:「ループもの」の定着

5:「物語」への回帰と「せつな系」

6:「コミュニケーション」ツールとしての作品

7:「空気系」(日常系)

8:地域密着アニメと東京を舞台にした群像劇

9:ネオヒーローもの

前回は1番のネオセカイ系についてやりました。

これは私が命名したジャンルです。

「きみとぼく」にプラスして「かれ」との関係性が世界の危機といった抽象的問題に直結する作品群のことです。

要するにBL的設定を背景としたセカイ系の異種バージョンという位置づけでした。

今回のテーマは、2番のサヴァイヴ系と3番の世界内戦系です。

ちなみに、6番はニコ動で人気の作品のことですね。

町口:まず評論家の宇野常寛さんは『バトル・ロワイヤル』(99年)と『無限のリヴァイアス』(99年)をサヴァイヴ系の源流に挙げています。

要するに、登場人物が殺し合いを強いられ、その極限状況の中でいかにサヴァイヴするかをテーマとした作品のことです。

宇野さん曰く、「セカイ系」は95年のオウム真理教事件や阪神・淡路大震災以降の不透明な社会に対する「引きこもり/心理主義」的な反応でした。

若者の引きこもり現象……エヴァもその影響があります。

参考資料の提示。どうせ受講するなら読んでほしいところ
参考資料の提示。どうせ受講するなら読んでほしいところ

これは意外でしたが、言われてみればその通りかも。

付いていけなくてどうしよう、と思いましたが、私も90年代に学生(2016年現在、41歳…)なので、話はわかります。

町口:一方、サヴァイヴ系は、9・11同時多発テロと小泉構造改革の影響を受けています。

9・11同時多発テロはニューヨークの貿易センタービルに飛行機が突っ込んで3000人以上が死亡しました。

この同時多発テロがその後、2001年のアフガニスタン戦争、2003年のイラク戦争につながっていきます。

一方、小泉構造改革、当時、首相だった小泉さんはポピュリスト、大衆からとても人気がありました。

ところが、彼がやった聖域なき構造改革は、とくに若者にとってやさしくなかった。

たとえば労働者派遣法の改正により、派遣切りの問題などが引き起ります。

若者たちの中にはワーキングプアに陥った人もいます。

サヴァイヴ感、つまり、引きこもりでは生き残れない決断主義、これに反応した想像力のある作品が登場したということを宇野さんは言われています。

この指摘はその通りですね。

宇野さんは平成「仮面ライダー」シリーズを挙げていますが、それ以外にも、純文学では、白岩玄さんの『野ブタ。をプロデュース』、綿矢りささんの『蹴りたい背中』などにもこうした想像力が垣間見えます。

これも同時代だったので、なんとなくわかります。

生き残るにはどうするか。

私で言えば、2001年に当時所属の派遣会社を退職(まあ、仕事がなくなった、と)。

2002年に編集プロダクションに転職。

アルバイト採用から一瞬だけ(4か月のみ)、正規雇用になって、これで人並みの生活が送れる、と思いきや、年明けの2003年にクビ。

それで、仕方なくフリーランスになって、現在に至る、と。

引きこもれるものなら引きこもっていたいですが、それだとお金にならないのですよねえ…。

「世界内戦系」あたりから学生、死す

町口:では、次に世界内戦系について。

ミステリー作家の笠井潔さんが提唱されています。

笠井さんはドイツの思想家、カール・シュミットを取り上げて、第一次世界大戦後のドイツの状況は21世紀の世界状況を先取りした面がある、としています。

第一次世界大戦でドイツは負けました。その結果、政治は、国家国民党、中央党、社会民主党、左の共産党、右のファシスト、ナチス党などが乱立します。

有名な社会学者、マックス・ウェーバーは1917年、この状態を「神々の闘争」と呼称しました。

色々なイデオロギー、多様な価値観が交差する状況ですね。

他方、シュミットはこの「神々の闘争」=バラバラの状況を、政治によって克服することこそドイツ救済の唯一の道と考えました。

ただ、これってちょっと危ない発想、と思いません?

事実、1930年代に入ったら、ナチス党が独裁権力を確立しました。

政治での克服、というのはそうした結果もあり得ます。

ここで第一次世界大戦後のドイツ史が出るのは全くの想定外。

このあたりは、歴史ファン(または歴史オタ)の石渡は、よくわかります。

が、この歴史がアニメの世界観形成につながることはちょっと考えてもいませんでした。

町口:それはともかく、9・11同時多発テロ以降の世界内戦の状況を考えると、今の世界は新たな「神々の闘争」と考えられます。

そこでシュミットの『政治神学』を笠井さんは再評価しています。

ここ最近だと、IS(イスラム国)という原理主義グループも出てきましたし、世界はますます混沌としています。

まあ、このような世界状況を反映した作品が世界内戦系。

笠井さんは『コードギアス 反逆のルルーシュ』と『東のエデン』などを挙げています。

このあたりで、教室を後ろから見ていると、受講者約40人のうち、付いていっている学生は6割くらい。後ろの方では、爆睡しだす学生が5人から10人ほど。

町口先生も、途中で「質問のある人?」と聞くが誰も挙げません。

町口:では、そろそろ飽きてきたと思うので、「コードギアス」の視聴に行きましょう。

「コードギアス」見た人?6割くらいかな~。

今日は第四話を見ていきますが、世界観とか、みんなわかっている?

世界観を示す地図。日本は属国という設定
世界観を示す地図。日本は属国という設定

この作品の中で、世界は3つに分かれました。神聖ブリタニア帝国、中華連邦、EUです。

日本は神聖ブリタニア帝国の属国、エリア11として存在しています。

今日、見ていただくのは第四話です。

というわけで30分ほど、同作品を学生全員が視聴。

講義開始前にも感じたことですが、教室中にアニメ作品が広がる、というのは、なかなか壮観です。

まして、教室を暗くしているのでなおさら。

暗い中、目のアップが教室に広がるのもなかなかの光景
暗い中、目のアップが教室に広がるのもなかなかの光景

町口:解析は4点あります。

1点目、キャラ読みをするなら私のいうネオセカイ系的設定です。

まず、ナナリーは主人公ルルーシュの妹。

で、ルルーシュがいて、スザクはルルーシュの友達でありライバルです。

ルルーシュは自意識過剰でモラルも欠如したキャラとして描かれています。

ネオセカイ系の「きみ~ぼく~かれ」というトリアーデを使うなら、

「きみ(ナナリー)とぼく(ルルーシュ)とかれ(スザク)」という設定。

セカイを救うのは「きみ」ではなく、「かれ」を助ける皇帝ルルーシュ。

世界観は世界内戦系なのですが、ネオセカイ系でもあり、BL的な要素があります。

女の子にも人気があるのは、そうした背景があるかもしれません。

解析を図で説明
解析を図で説明

町口:2点目は、「宿命の女」。

これは、フランス語でFemme fatale と言います。

ヨーロッパでは、魔性の女のことを「宿命の女」と呼びます。

19世紀の世紀末芸術で好んで取り上げられるモチーフで、サロメが有名。

C.Cはサロメ的な女性なのですが、本来は愛情深く寂しがり屋です。

彼女の秘密は15話で明かされます。

町口:3点目は「記憶」。

ルルーシュのギアスの能力は認知心理学の知見で説明できます。

ちょっと難しいのですが、簡単に言うと、ルルーシュのギアスは他者に記銘(記憶の局面の一つ)を強いて、その偽の記憶でその者を操作する能力です。

認知心理学で解説しているのでレジュメを読んでおいてください。

町口:そして4点目は、「萌え」キャラ殺し。

西尾維新さんなんかもそうなんですが、萌えキャラをあえて殺すことで、その魅力を3倍にも4倍にも5倍にもできます。

この「コードギアス」だと、

ルルーシュ、知っている人もいると思いますが、最終回で死にます。

それから、ロロ。彼も死にます。

それと、シャーリー。

主要登場人物のうち、3人が死んでしまいます。

これはどういうことなのか。

視聴者はみんなそれぞれ、思い入れがあるわけですよ、主要登場人物ですから。でも、死ぬ。

死んでしまうと永遠の存在になるわけですから、萌え要素がさらに強まるわけです。

このあたりで、取材対応をしてくれた広報部職員2人のうち1人が離脱。

別に逃げたわけでなく、もともと途中で出る、という予定だったのですが、ほっとした顔を見せていたのは気のせいでしょうか。

なお、残った(あるいは、残された)もう1人にあとで聞くと、

「僕ずっと野球部だったのでアニメ、ほとんど見ていないです。全然付いていけませんでした」

とのこと。

話をストーリー解説に戻すと、作家志望の学生に聞かせたいなあ、と思いました。

善人ばかりが登場する、というのも、ストーリー作りの一つではあります。

でも、起伏のない、平板な作品など面白くもなく、誰も相手にしません。

アニメにしろ、文芸にしろ、作品を作るうえでこうした批評がきわめて有効、と強く感じました。

教室の外が騒がしくなる

「コードギアス」のあとは「機動戦士ガンダム00」を視聴し、その後、解説。

このあたり、えいやと飛ばします。

別に寝ていたわけでなく、教室の外から観察するなど、出たり入ったりだったなので。

この教室、文芸学部のある教室棟ではなく、建築学部のある教室棟のPC教室です。

普段は建築学部の学生が自習用に自由に使っているとのこと。

自習で使いたい学生からすれば、教室が空くのを待っているのです。

そっと、教室の外に出て、うろうろしていると、

「えー、なんでアニメが流れているの?」

「ほらー、ネットでなんか出ていたじゃない。アニメをひたすら見るって」

「受けて~」

「受けたいかあ?アニメ、ひたすら見るんだよ」

などなど賛否両論。

まあ、普段使いしている教室でアニメがどどんと流れていたら、そりゃ驚きますよね。

そうこうしているうちに講義が終了。

ネットで話題になった反応は?

場所を文芸学部棟に移動して、町口先生にインタビューにご対応いただきました。

石渡:ネットで話題になったことはいかがですが?

町口:コメントを見ていると、好意的な反応が多かったですね。是非、受けてみたい、という方も多いようでそれは光栄なことです。

石渡:アニメを週20本視聴とのことでしたが、コードギアスだと6割くらい、ガンダムだと半分くらいしか見ていませんでした。普段もこれくらいの比率ですか?

町口:それくらいですね。ただ、オタク率は文芸学部だと50%以上なので講義はやりやすいですね。

私自身は文芸評論家なので、この講義ではまずジャンル批評の観点からアニメ作品を評価していくという案配です。

1か月で見たアニメは42本!

石渡:先生もアニメを結構見られているのですか?

町口:今期(4月から/取材時は5月中旬)はアニメが42本。それと特撮ものが2本です。

広報・石渡:それはすごい!

町口:学生さんでもいますよ、これくらい見ている人は。

見ていないとハードなオタクの学生さんに、対処できません。

まあ、かなりしんどいですけどね。

石渡:私も漫画やアニメ、結構見ているつもりでしたが、すみません、甘かったです。

「アニメ週20本」というハードルの設定はどのような理由でしょうか?

町口:アニメは週80本くらいあります。大人が見ても視聴に耐えられるものがその半分くらい。

20本はそのまた半分くらいですし、アニメのトレンドをとらえる、という意味では、それくらいは見ていてほしい、という意図で設定しました。

アニメを見るだけでは講義に付いていけない?

石渡:マックス・ウェーバーから宇野常寛さんまで、様々な本を読んでいないと、これ付いていけないですよね。かなり厳しいのでは?

町口:確かにハードルは高いですね。ただ、これくらいは読んでほしい、という高い理想があります。

その理想から推し量って、自分のできる範囲で学生さんには頑張ってほしい、という思いがあります。

石渡:後ろで観察させていただくと、半分くらいは付いていける、かなり入り込んでいると思いました。

一方、10人くらいはかなりめげているかな、と。

町口:それはしょうがないですね。どの講義でも同じではないでしょうか。

単位を取るためだけに受けている学生さんもいますから。

私としては真面目についてこれる学生がターゲットです。

私は文芸評論家ですので、この講義を通して文芸批評家になりうる教養を身に付けてほしいと思います。

石渡:ネットの効果は履修登録に影響ありましたか?

町口:履修登録が終ったあとに話題になったので、影響はありません。

近畿大、アニメコースを作る?

石渡:将来、この近畿大がアニメコースなどを作ったときは、ポジションも上がりそうなのですがいかがですか?

町口:ですよね。世界的に見ても、日本の映像コンテンツでは映画よりもアニメが高く評価されています。

それを考えると、アニメコースや学科、というのは需要があるかもしれません。

広報さん、どうですか?

広報:コース・学科新設については慎重な回答をさせてください(苦笑)。

新書とかどうでしょう?

石渡:近い将来、新書でアニメ批評とか出されるお考え、あります?今日いただいた資料、拝見していると、何か、書けそうな気がするのですが。

町口:とあるレーベルから出せないか、ということで交渉中です。もちろん、話題になっている今なので出版社からのオファーは大歓迎です。そこそこ売れると思いますよ。

インタビュー終了後、改めて資料を熟読したのですが、なんかもう、これだけで本になりそうなくらい、まとまっていて面白い。

というわけで、新書編集部でご興味ある方は、町口先生のTwitterか、石渡までご連絡をどうぞ。

私個人について言えば、漫画・アニメとキャリアを絡めた本の企画、ちょっと出ていたのですが、この取材で流すことを即断しました。

この町口先生くらいの知識がないと、しんどいわけで。

でも、この町口先生との共著、ということならありかなあ。

こちらもご興味ある編集部の方はご連絡を。

稲垣早希との番組ってどう?

石渡:先生はテレビ取材も希望、とTwitterに出されていましたが、テレビ出演はありますか?

町口:今のところ、特にないですね。

石渡:講義に参加させていただいていて、ちょっと思ったのですが、稲垣早希さんとお二人で番組持つ、というのはどうですか?

稲垣早希さんの出世作「ロケみつ」DVD『ロケみつ ~ロケ×ロケ×ロケ~ 桜 稲垣早希の四国一周ブログ旅 4 ネコの巻』表紙より。
稲垣早希さんの出世作「ロケみつ」DVD『ロケみつ ~ロケ×ロケ×ロケ~ 桜 稲垣早希の四国一周ブログ旅 4 ネコの巻』表紙より。

稲垣早希さんは、「新世紀エヴァンゲリオン」のアスカのコスプレで有名。

2008年~2014年に、毎日放送の深夜番組「ロケみつ」でヒッチハイク旅行ロケを敢行し、人気芸人に。

講義を聞きながら、ふと思いついたのが、この稲垣早希さん。

アニメに造詣の深い町口先生と、同じキャラの稲垣早希さんのWキャストの番組ならブレイクしそうな気がして、この話に。

町口:あ、いいですねえ!やりたいです。

私もちょっと、コスプレもしてますし。

吉本興業に所属して、タレントとして活動してみたいです。

広報:オープンキャンパスでスペシャルトークショー。

「受験生が聞くべきアニメ論」とかどうですか?

町口:あ、いいですねえ。やるなら出演します!

石渡:では、その実現の暁には、取材に行きます。

今日はありがとうございました。

取材を終えて~石渡はアニオタではありませんでした!(謝)

まずは謝罪から。

私こと、石渡嶺司はこれまでアニオタを自称していましたが、甘かったです。

色々とすみませんでした(誰に謝っているんだ?)!

もうこれからは、アニオタを自称せず、

「漫画とアニメ?ちょっとは好きです」

くらいにしておきます。

漫画だけでも、所蔵数1000冊(数えたことないけど、たぶん)は行っているのですけどね…。

アニメを研究・教育のテーマとすることの是非

私の話はさておき、この講義はアニメを研究・教育のテーマとすることについて、意見が分かれるところです。

アニメを軽く見る人からすれば、

「アニメを大学の講義で取り上げるなんて」

などとネガティブにとらえることでしょう。

大学教育の劣化と結びつける論調で非難する人がいてもおかしくはありません。

一方で、アニメを大学の講義や研究でテーマとすることを肯定する人も少なくないはず。

私は後者の意見です。

大学での研究・教育は本来、自由なものです。

付言しますと、私は東洋大学社会学部出身。

卒業論文は「公営競技が地域社会に与える影響についての一考察」。

これでちゃんとB評価をもらって卒業しました。

いわばギャンブル社会学。

麻雀の井出洋介プロは東京大卒ですが、卒論は「麻雀の社会学」。

ギャンブル社会学は大阪商業大学の谷岡一郎学長など研究者もいます。

アニメに話を戻すと、日本製アニメは世界シェアの60%を占め、海外輸出額は年5000億円。

魚かい類など食料品の輸出額とほぼ同額です。

金額だけでなく、世界的な評価も高いものがあります。

そのアニメを文芸批評の観点から論じる、というのは学問としても十分にあり得るでしょう。

「アニメ批評でメシが食えるのか」批判は別問題

「アニメ批評でメシが食えるのか」

「アニメの評論家なんか数人で十分だし、大多数の学生にとっては実用性がない」

「アニメ批評など役立たずな勉強をしても就活では無意味」

との批判もあるでしょうから、先回りしてお答えしておきます。

前回の天文学もそうですし、今回のアニメ批評もそうですが、大学という機関において実用性の有無は別問題なのですよ。

というか、教養という点で実用性を論じること自体、無意味です。

「多くの人にとっては役立たず」という事象(ま、ある面では現実)が、

「だから大学という機関では不要」

という主張を補強するものとなるのでしょうか。

私は全く有効な主張とは思えません。

アニメ批評が日本を救う?

まず、アニメ批評という専門家養成について。

現在、日本のアニメは世界をリードしています。

一方、人件費や後継者不足などが理由で、アジア諸国を中心に技術がどんどん流出しています。

このあたり、モノづくり全般と全く同じですね。

仮に、技術移転が進んだとしても、日本のアニメがリードし続けるとしたら、それは分厚いアマチュア層、それから、アニメ批評ではないでしょうか。

分厚いアマチュア層の存在が多数のプロを生むのは、野球などと同じです。

そして、アニメ批評で理論や世界観などがしっかり研究されていればどうでしょうか。

それが基盤となって、良質なアニメを量産し続けることになるはずです。

アニメ以外の業界でも就活では十分役立つ!

次に一般学生の就活について。

アニメ批評を勉強しても、大多数の学生は、アニメとは無関係の一般企業に就職していくでしょう。

その際に、アニメ批評の勉強が役立つかどうか。

これ、昨年、文系学部廃止の是非が議論された際、特に文学部が役立つかどうか、ということで大きな議論となりました。

私は読売オンラインで「文学部就活最強論」というものを書いて、文学部を擁護したのですが、アニメ批評についても同じです。

文学部就活最強論!?~役立たず批判を検証してみた(上) 2015年9月7日

多くの企業が総合職・一般職採用で求めるのは専門性でも実用性でもありません。

広い教養と判断能力です。

それがある学生は経済学であり、法学であり、別の学生は文学であり、哲学であり、あるいは天文学、というだけです。

研究テーマが、コードギアスでも、ギャンブル社会学でも、天文学でも、そこは何だっていいのですよ、極端な話。

企業からすれば、何か一つのテーマを勉強してれば、広い教養と判断能力が身に付いていて、それが幹部候補(今更ですが大卒総合職は幹部候補という位置づけです)として、役立つときもあるだろう、と考えます。

まして、アニメですよ、アニメ。

大手企業も含めて、CMに起用する企業が多い中、アニメ批評がムダと切って捨てることはできないはず。

たとえば、こちら。Z会CMにアニメの新海誠監督を起用しています。

わずか2分間で、独特の世界観が繰り広げられる名作CMです。

アニメ専攻開設と稲垣早希との番組を是非

というわけで近畿大学は、マグロだけで受験生日本一になった、との評価を覆すためにも、ぜひ、文芸学部を改組して漫画・アニメ専攻を開設していただきたいところです。

で、町口先生を専攻長に就任させる、と。

さらに、平日深夜にアニメ批評番組を作成・スポンサードしていただいて稲垣早希さんと二人で回していただく、と。

これで近畿大学、ならびに日本のアニメ業界、百年の計、成れり!

…。

……。

………。

いいアイデアと思う反面、何かが足りない気もします。

さしあたり、オープンキャンパスでの稲垣早希対談を実現していただくのを待つとしましょう。

新企画「大学ディープ紀行」は、このYahoo!個人(石渡嶺司)の中で、大学に関連したルポやインタビューなどを今後、展開していく予定です。

なお、掲載頻度は、「シェフの気まぐれサラダ」に入る具材、ディスカウントストアの値付け並みにいい加減、もとい、不定期です。

ネタの投稿、自薦・他薦などありましたら、ディープかどうかに関係なくお待ちしております。

大学ディープ紀行・1回目:日本の天文学プロジェクトチームはハワイにたどり着けるのか~1億円が出せて旅費80万円が出せない謎(5月16日)

2016年5月24日追記

文中で「コードギアス 反逆のルルーシュ R2」と表記すべきところを「コードギアス 反逆のルルーシュ 2」と表記していましたので修正しました。

訂正してお詫びします。

あわせて、ご指摘いただいたophites様、try_shel様に感謝します。