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学生読書時間0時間約5割はスマホが原因?~大学生協連学生生活実態調査から

石渡嶺司大学ジャーナリスト

読書時間0分は45.2%

2月24日、全国大学生活協同組合連合会は第51回学生生活実態調査を発表しました。

同調査では、生活費から就職、日常生活、政治意識まで調査しています。

調査実施時期は2015年10月~11月。

全国30大学・9741人の大学生が回答。

この記者会見に行ってきましたが、注目は読書時間。

「0分」との回答が45.2%で2004年の調査開始以来、過去最高となりました。

「0分」45.2%

「30分以上60分未満」23.3%

「60分以上」20.0%

「30分未満」10.6%

平均時間28.8分

スマホ利用は読書時間の5倍以上!

読書時間の減少と言えば、2015年4月、信州大の山沢清人学長が入学式挨拶で「スマホやめるか、大学やめるか」と挨拶。

賛否両論で大きな話題となりました。

大学生協連の調査ではスマホの利用時間も対象となっています。

同調査によると、スマホの利用時間は平均で155.9分。

スマホを持たない、または利用しない「0分」の回答は2.3%でした。

別の調査ですが、マイナビ・ライフスタイル調査によると、2016年卒向け調査(2015年2月発表)で、スマホ所有率は94.9%。

今回の大学生協連調査と合わせて考えますと、学生生活でスマホ利用が不可分であることをよく示しています。

読書離れはスマホが影響?

では、読書離れはスマホが影響したか、と言えば、微妙なところ。

単に

「平均読書時間28.8分」「平均スマホ利用時間155.9分」

とデータだけ並べると、スマホが影響した、と捉えることができます。

そうした記事もこれから出るでしょうし、その記事に感情的に反発する意見も出ることは十分予想できます。

記者会見では、この読書時間とスマホ利用時間の相関関係にも触れていました。

0分(45.2%)・167.3分

60分以上(23.3%)・155.3分

30分以上60分未満(20.0%)・142.0分

1分以上30分未満(10.6%)・135.8分

読書時間が「0分」(全体の45.2%)の学生はスマホ利用時間が167.3分と階層別では最長です。

しかし、その次に多いのは読書時間60分以上(全体の23.3%)で155.3分。

つまり、読書時間が長い学生でもスマホの利用時間は長いことを同調査では示しています。

スマホか、読書か。

という二元論ではなく、スマホも、読書も、と両立する学生とそうでない学生、二極化が進んでいる、とも言えるでしょう。

読書は「情報収集」と学生委員長

記者会見には全国学生委員会の委員長、副委員長2人も出席。

荒木翔太・委員長によると、

「本は読む人は読む、読まない人は読まない。二極化が進んでいる。レポートのための読書はむしろ『情報収集』」

一方、小説をよく読むと話す、升本有紀・副委員長によると、

「読書を非日常と捉える学生もいる」

なお、この調査における読書の定義は、

「あえて定義付けていない」(堀内久美・調査担当)

とのことです。

出版業界関係者の背筋が凍るデータ

配布されたデータ集には、「生活費」の項目があり、これは1975年から自宅生・下宿生別に詳細項目が掲載されていました。

収入に占める割合を計算していくと、結構怖いデータが出てしまいました。

1975年

自宅生収入合計27530円/書籍費3420円/収入比12.4%

下宿生収入合計53090円/書籍費4040円/収入比7.6%

1980年

自宅生収入合計41520円/書籍費4240円/収入比10.2%

下宿生収入合計82330円/書籍費5350円/収入比6.5%

1985年

自宅生収入合計53720円/書籍費3700円/収入比6.9%

下宿生収入合計101280円/書籍費4460円/収入比4.4%

1990年

自宅生収入合計64510円/書籍費3560円/収入比5.5%

下宿生収入合計120620円/書籍費3990円/収入比3.3%

1995年

自宅生収入合計62220円/書籍費2950円/収入比4.7%

下宿生収入合計132510円/書籍費3640円/収入比2.7%

2000年

自宅生収入合計65770円/書籍費2380円/収入比3.6%

下宿生収入合計137760円/書籍費2910円/収入比2.1%

2005年

自宅生収入合計61590円/書籍費2300円/収入比3.7%

下宿生収入合計129580円/書籍費2490円/収入比1.9%

2010年

自宅生収入合計59170円/書籍費2090円/収入比3.5%

下宿生収入合計122610円/書籍費2250円/収入比1.8%

2011年

自宅生収入合計58830円/書籍費1850円/収入比3.1%

下宿生収入合計118900円/書籍費2070円/収入比1.7%

2012年

自宅生収入合計58360円/書籍費1800円/収入比3.1%

下宿生収入合計120640円/書籍費2030円/収入比1.7%

2013年

自宅生収入合計60990円/書籍費1740円/収入比2.9%

下宿生収入合計121500円/書籍費1820円/収入比1.5%

2014年

自宅生収入合計61120円/書籍費1670円/収入比2.7%

下宿生収入合計122170円/書籍費1950円/収入比1.6%

2015年

自宅生収入合計62190円/書籍費1680円/収入比2.7%

下宿生収入合計122580円/書籍費1720円/収入比1.4%

※データは「第51回学生生活実態調査データ集」、収入比は石渡の計算による

そりゃまあ学生に本が売れないわけだ

1975年と2015年では自宅生・下宿生とも収入は2倍以上になっているのに、書籍費はそれぞれ半減以下。

収入比では、自宅生12.4%、下宿生7.6%だった1975年から2015年には、自宅生2.7%、下宿生1.4%と激減しています。

なるほど、学生をマーケットとした本が就活本(それも一部の定番)を除けばなかなか売れないわけです。

書籍費の減少もスマホが影響?

書籍費の減少は、やはりスマホが影響しているのでしょうか?

同調査では、「電話代」という項目を2000年から入れています。

2000年には自宅生7240円、下宿生9570円の支出。

あ、やっぱり影響あるかな、と思いきや、この電話代、2001年以降、減少傾向にあります。

2015年は自宅生2670円、下宿生4100円。

この理由について、堀内久美・調査担当は、

「家族割などが増えている影響ではないか」

出版業界・生協も「家族割」を検討すべき

なるほど、学生本人でなく親が支払うのであれば、学生個人の負担額が減るのも道理です。

だとしたら、出版業界全体でも、大学生協と組んで、「書籍家族割」を始める、というのはどうでしょうか。

いや、これ、真面目な話です。

「親が先払いして学生が利用する」ということであれば、大学生協ではミールカードや学食パスを導入しています。

親はこのミールカードを購入。学生は一日の上限額の範囲内で学食を利用できます。生協によっては、購入履歴も確認可能。

これと、同じ仕組みを「書籍家族割」でも実施するのです。

主体は生協になりますが、出版社各社は協賛のうえで自社の本・雑誌について、多少割り引くとか。

なんか、それくらい思い切ったことをやらないと、出版業界の将来はなさそうな気がするのですがどうでしょうか?

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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