従軍慰安婦問題、本当に解決?~教育の観点から
年末のこの時期、急に従軍慰安婦問題で日韓両国が合意しました。
記事のオーサ―コメントにも書きましたが、これで本当に解決か、というのは、色々とツッコミどころがあります。
中国、台湾、北朝鮮、フィリピンなど従軍慰安婦の関連国が、
「韓国に謝罪するならうちにも謝罪しろ」
と言い出すんじゃないか、とか。
どうせ、韓国は政権交代をすれば、
「あれって、前の大統領が勝手に決めたことで知らない」
と言い出すかも、とか。
その辺は、外交や韓国の専門家にお任せします。
私が危惧するのは、教育の観点から。
要するに、従軍慰安婦問題をお互いの教科書でどう扱うか、そこまで踏み込まないと、いつまでも続く話なのでは、と考えるのです。
そもそも、従軍慰安婦問題は韓国発の問題ではありませんでした。
1977年、吉田清治が『朝鮮人慰安婦と日本人』を刊行。
同書で、済州島で慰安婦狩りをした、と告白します。いわゆる「吉田証言」です。
これを朝日新聞などが記事にします。
韓国でも吉田の本が翻訳され、1990年ごろから日韓両国で政治問題化してしまいました。
この吉田証言、1992年の歴史家・秦郁彦の現地調査、1989年の済州新聞記事などで、全くのでたらめであることがすでに明らかになっていました。
吉田本人も1996年に、創作であったことを認めています(その後、2000年に死去)。
朝日新聞も、2014年になってようやく関連記事の取り消し・謝罪に追い込まれます。
ところが、この吉田証言をもとに朝日新聞が記事として、さらに韓国にも飛び火したことで、韓国世論は沸騰。
1991年に、従軍慰安婦を主人公にしたテレビドラマ「黎明の瞳」(韓国MBC)が大ヒットしたことも韓国の国民意識を変えてしまいました。
韓国では、1996年の高校、1997年に中学の、それぞれ「国史」教科書に従軍慰安婦問題が記載されるようになります。
2002年ごろからは、さらに増加・過激化。
一時は、女子挺身隊と従軍慰安婦を混同するかのような記載もありました。
現在でも、民族抹殺統治、被害者が受けた精神的な苦痛などが日本の教科書以上に長く書かれています。
この歴史教科書の影響が日韓両国の意識の差となってしまっています。
やや古い調査ですが2010年の朝鮮日報調査によると韓国人が「教科書・慰安婦問題」を日韓最大の障害と回答したのは34.8%。世代別では20代が48.9%と最も高く回答しました。
安倍首相は、
「私たちの子や孫の世代に、謝罪し続ける宿命を負わせるわけにはいかない。その決意を実行に移すための合意だ」
と述べました。
しかし、そのためには、今回の合意では不十分です。
国民意識を形成するのが教育であり教科書です。
これを整理しないと慰安婦問題はまだまだ続くだけです。
もちろん、現在の朴槿恵政権にそこまでの力がある、とは思えません。そもそも、ソウルの日本大使館前にある慰安婦像は、ウイーン条約違反なわけですが、それを「民間団体が自発的に設置したものだから」と受け流してきています。
しかも、従軍慰安婦問題の急先鋒の団体である韓国挺身隊問題対策協議会は、強く反発。
韓国外相は「解決へ努力」としていますが、努力しました、でもできませんでした、というオチのような気がしてなりません。
話を教育問題に戻すと、吉田証言はねつ造であったことも含め、従軍慰安婦問題を教育現場でどう扱うか、それもきちんと話し合うべきでした。
もし、そこに踏み込めば合意できない、ということであればむしろ合意しなくてもよかったのではと考えます。
それを「日韓国交正常化50周年だから」という理由だけで合意を焦ったのは、日韓両国とも、あとあと禍根を残すだけではないでしょうか。