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宝塚大造形芸術学部が募集停止!~でも看護と東京は残る件

石渡嶺司大学ジャーナリスト

潰れそうで潰れない大学業界ですが、学部の統廃合や新設などはちょこちょこと進んでいます。

国際系学部もそうですが、5月14日、宝塚大が造形芸術学部の募集停止を発表。

宝塚大学 造形芸術学部(宝塚キャンパス)の学生募集停止について

宝塚大は1987年、宝塚造形芸術大として開学(当時は造形学部)。

2005年にメディア・コンテンツ学部、2007年には東京メディア・コンテンツ学部(2015年、東京メディア芸術学部に改称)を開設するなど拡大路線を取ります。

特に後者は宝塚キャンパスではなく、東京・新宿に開設。この拡大路線は関係者の間でかなり話題になりました。

が、受験生は減り、2010年にはメディア・コンテンツ学部と造形学部を統合して造形芸術学部に、さらに大阪市内に看護学部を開設、これで大学名を宝塚大に改称します。

それでも受験生が集まらず、今回の募集停止となりました。

関西はそもそも私大の芸術系学部が多く、競合しています。

●滋賀県

・成安造形大芸術学部(200/1.3)

●京都府

・京都嵯峨芸術大造形学部(85/1.2)、デザイン学部(95/1.6)

・京都精華大芸術学部(240/3.3)、デザイン学部(208/3.2)、マンガ学部(232/3.3)、ポピュラーカルチャー学部(118/2.3)

・京都造形芸術大芸術学部(694/3.2)

・京都美術工芸大工芸学部(95/1.2)

●大阪府

・大阪芸術大(1245/1.2)

・大阪成蹊大芸術学部(157/-)

●兵庫県

・神戸芸術工科大デザイン学部(270/2.0)、先端芸術学部(130/2.5)

・宝塚大造形芸術学部(150/-)

※学部名後ろ括弧の数字は左が入学定員、右は一般入試倍率。「―」は非公表

※代々木ゼミナールの2014年データより引用

※大阪成蹊大は157人の入学定員に対して200人が入学(2014年)

9校で入学定員3919人、これはきつい。

しかも、京都市立芸術大という公立大の伝統校があって、美術教員養成は京都教育大、大阪教育大、兵庫教育大、奈良教育大と国立大4校ががっちり握っています。

宝塚大は、宝塚キャンパスには行っていませんが、東京・新宿キャンパスのオープンキャンパスに参加したことがあります。

数年前のことで、今はどうか知りませんが、当時は来場者全員に500円のクオカードを配布していました。

ただでさえ参加者が少ないところに、ビルキャンパスということもあってか、教室以外に誰も人がおらず、閑散としていました。

オープンキャンパスは、どこまでお金を掛けるか、それはその大学次第ですが、私は過度なグッズ・金券配布には賛成できません。

オープンキャンパスの参加者のみを増やすことが目的なら、グッズ・金券配布、学食の無料化などもいいでしょう。

しかし、オープンキャンパス開催の目的は大学のアピールであり、ひいては受験生確保のためです。

500円のクオカード配布が大学のアピール、そして、受験生確保に本当につながるものでしょうか。

ところで、宝塚大は創立時の学部を募集停止にはしますが、大阪の看護学部と東京の東京メディア芸術学部は存続します。

看護学部は文部科学省のアフターケアで是正意見が出るほど、定員超過。2015年入学者からようやく改善されて、まあ、それくらい順調です。

一方、東京メディア芸術学部は苦戦中。収容定員520人に対して2014年時点で323人、うち1年生が74人。

こちらも、いつ募集停止になってもおかしくない状況です。

宝塚大と言いつつ、最後に残るのは看護学部だけ、ということも十分あり得ますし、気が付けば「宝塚」が原型をとどめない、ということも。

大学にとって厳しい状況はまだまだ続きます。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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