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進路相談16・漫画系学部は漫画家出身の教員でないとダメだよね?

石渡嶺司大学ジャーナリスト

質問:漫画家志望です。漫画関連の学部を考えていますが、制作演習で漫画家以外の先生が担当になるってなんか変じゃないですか?そういう大学は避けた方がいいのでしょうか?

漫画家志望のあなたからすれば、漫画家出身の教員が教える実習は正解で、それ以外は不正解、ということになるのでしょうか?

あるいは漫画家なら正解、それ以外なら不正解?

だとしたら、ちょっともったいない気がします。

たとえば、東京工芸大マンガ学科には伊藤剛准教授が在籍しています。この方は漫画家でなく漫画評論家です。

あなたの考え方からすれば、こういう教員に当たりたくない、要するに外れ・不正解ということになるでしょう。

しかし、この伊藤准教授、漫画評論の世界では相当有名な方です。

こういう方に漫画作品を見てもらえることは、外れ・不正解どころかむしろ幸運なこと、と私は思います。

仮に技術指導が他の漫画家出身の教員よりも弱かったとしましょう。しかし、漫画はきれいな絵であれば売れるというものではありません。

ちゃんと読ませる内容になっているかどうか。そのための指導は伊藤准教授であれば十分に可能です(付言すれば伊藤准教授は浦沢直樹のアシスタントをしていたので技術指導も十分できるはず)。

どうしても伊藤准教授の指導が嫌なら、他の漫画家出身の教員に作品を見てもらえばいいだけの話です。

この話、編集者との関係と全く同じです。

もちろん、人と人が接する話ですから相性などで当たり外れはあるでしょう。

しかし、「この教員は漫画家出身でない」「この編集者は若いからちゃんと作品を見なさそう」など思い込み・偏見で短所(もしくは短所と思えるもの)をわあわあ言うよりも、いい作品にしていくにはどうすればいいか、考える方がよっぽどまし。

それに、相手にあれこれ要求して、いい作品を描けないあなたは何者?という話にもなってしまいます。

相手にあれこれ要求ばかりしていると、漫画家志望者としては自滅パターンに入り込み、死亡フラグ確定です。

今から変えていくことをお勧めします。

※『時間と学費をムダにしない大学選び2016』(中央公論新社)より引用

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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