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進路相談13・立命館アジア太平洋大って進学しても大丈夫?

石渡嶺司大学ジャーナリスト

質問:前に石渡さんがかなり否定的としていた、立命館アジア太平洋大(APU)に行くことになりそうです。何がダメなのか、もう一度教えてください。

この件で立命館関係者とAPU関係者から恨み骨髄(らしい)の石渡です。

APUを目指すのであれば、入試成績、推薦入試なら書類などをしっかりしておきましょう。

このAPU、脳科学者の茂木健一郎さんなどの論客やマスコミも評価する国際系大学です。日本人学生もものすごい優秀との評判。

私も日本人学生の半数以上が優秀という点は全くその通りと思います。実は大学とは無関係に学生持ち込み企画で2013年にAPU学内で就活講演をしたことがあります。

この企画を持ち込んでくれた学生グループとちょっと話をしましたが、フィンランドに留学した学生と香港に留学した学生がそれぞれいて話を聞いて、こいつらすげえな、というレベル。

就活対策とか考えなくてもどこかには受かるくらいの優秀さで感心しました。

その私・石渡がAPUの評価を引き上げないか、と言えば理由があります。

優秀な学生が半数以上いるにも関わらず、日本人学生の1~2割はぱっとしません。

その理由は外国人学生と一緒に生活する国際寮にあります。

この国際寮に入れれば、嫌でも外国人留学生と接点を持つことになります。

その分、グローバル人材にもなっていくでしょう。

では、日本人学生が全員入れるか、と言えばそんなことはありません。

入れるのは日本人学生の半分。

それも、入試成績などで決まります。

では、入れなかった日本人学生は全員ダメ?

いえ、そうではありません、ここでさらに分かれます。

寮に入れなくても、せっかくAPUに入ったのだから、と外国人留学生と接点を持とう、とする日本人学生はまだ救われます。

通常の講義以外でもサークル活動や自主的な勉強など、機会はいくらでもあります。

ただし、その機会、というのは与えられるものでなく、自分から作るものです。

ここで、寮に入れなかった日本人学生のうち、ざっくり言って約半数は自分から機会を作るので、問題ありません。

問題はさらに残った半分。

国際教養大(定員175人)など小規模校であれば逃げ場はありません。

しかし、APUは2学部合わせて1200人。日本人学生が600人として、寮に入れない・積極的でない日本人学生は推定150人。なんと、国際教養大と同じくらいの規模。

つまり、留学生とうまく行かない日本人学生同士でコミュニティを作れてしまうのです。

実際、私が取材したところでは、4年間、最後まで留学生と接点をうまく作れなかった日本人学生は1~2割います。

しかも、中退率はアジア太平洋学部10.1%、国際経営学部14.0%と低い数値ではありません。

優秀な学生が多いことは素晴らしいですが、できない学生1~2割もちゃんとケアするべきです。

それができないから2000年開学当初は京都本校の経営学部と同じくらい高かった偏差値が低迷しているのではないでしょうか。

という話はさておき、あなたがAPUを目指すのであれば、まずは国際寮に入ることを全力で目指しましょう。

もし、ダメなら引っ込み思案かどうかに関係なく、サークル活動や自主的な勉強会などで外国人留学生とどんどん接点を持つことです。

そういうのができなそう、というのであればAPUはやめておいた方がいいでしょう。

中退しなくても、日本人学生同士で固まっているだけの学生なんて、企業側からすれば期待外れもいいところなのですから。

※『時間と学費をムダにしない大学選び2016』(中央公論新社)より引用

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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