英検2級で学費タダの大学~現代大学奨学金事情

がま油の口上と同じ?

さてお立会い。

それなりの効き目あるはずの大学進学、いったい一山もとい一人いくらだと言うお方があるかも知れないが本日はせっかくの大安売り、男は度胸、女は愛嬌、山で鳴くのはホーホケキョ、清水の舞台からまっ逆さまに飛び降りたと思って4年で1000万円かかるところ、逆にこちらが1000万出すのではどうだ。もちろん、あとで返せなんて野暮は言いっこなし!

筑波山のガマ油売りの口上を日本の各大学が言ってまわっているわけではありません。

しかし、これと五十歩百歩のことを言っているも同然の大学が今、増えています。

今回は奨学金を支給(返済義務なし)する大学をご紹介します。

「大学校がお勧め」というオチにあらず

なお、学費が無料の大学と言えば、よく文部科学省所管外の大学校が取り上げられます。

確かに防衛大学校防衛医科大学校気象大学校などはそれぞれ学費無料の上、学生でも公務員扱いなので給料・ボーナスも支給されます。

※他に航空保安大学校も学費無料・給料等支給ですが、こちらは2年制で大卒扱いになるわけではありません

この大学校はいずれ別の機会にご紹介しますが、それぞれ目的がやや専門的な教育機関で多くの高校生にあてはまるわけではありません。

この記事では「学費タダ」とぶち上げていながら大学校を紹介しておしまい、というオチではありませんのでご安心を。

英検2級で学費タダを広めた大学

「英検2級取得者が学費無料」の制度を広めた、と大学関係者の間でもっぱら評判なのが

群馬県にある共愛学園前橋国際大学です。

同大の「資格特待生制度」には対象の学生として、

実用英語技能検定2級合格者、GTEC 620以上、TOEIC 500以上、TOEFL iBT 50以上

情報処理技術者試験合格者(ITパスポート試験を除く)

日商簿記検定2級合格者

■上記資格を取得している人:初年度の授業料全額が免除となります。

■受験後、資格を取得した場合は、「資格特待生追加申請書」の提出が必要となります。申請書の提出期限は3月24日(月)でこれを過ぎると採用となりません。

■どの受験区分(AO・推薦・一般・センター利用)でも適用になります。

対象になれば、初年度の学費が無料となります。

いくら初年度のみとはいえ、1年分の学費(99.2万円)がタダに。

どうして、こんな大判振る舞いなのでしょうか?

奨学金で定員割れから復活

1999年に開学の同大は翌年、早くも定員割れしてしまいます。

2000年代前半には地元高校関係者や高校生から

「創造学園大と共愛は願書を出せばだれでも入学できる」

「どのタイミングで廃校してもおかしくないと思った」

などとうわさされるまでになっていました。

そこで大学改革に乗り出すわけですが、その一環として導入されたのが資格特待生制度です。

2002年に導入された当初は実用英検2級で「学費を4年間免除」としていました。

日本の学生の英語レベルは4級程度?

実用英検2級は高卒程度とされています。

「そんな簡単な資格で学費を4年間無料なんて正気か?」

との意見も出てきそうです。

しかし、日本の大学は入りやすくなった結果、学生の英語のレベルはそう高くありません。

私が日本の各大学を回った感触では難関大などを除けば実用英検だと中学卒業レベルである3級どころか4級も怪しい大学がゴロゴロあります。

ここで本コラムの読者だけでなく、当事者(英検4級程度も怪しい学生ばかりの大学の教職員・経営幹部)ですら、

「大学とは高等教育研究機関で」

とか

「学生が勉強する気になっていないこと自体おかしい」

などと言い出します。

大学経営に責任ない立場の方があれこれ無責任に言うのはまだしも、当事者が現実を見ずに理想論を追いかける姿は痛々しいものがあります。

その点、共愛学園前橋国際大の経営幹部も教職員も厳しい現実から逃げようとはしませんでした。

定員割れをして、学生が勉強をしていない現実を大学改革によって変えようとしたのです。

その一環が、実用英検2級で学費無料という方策でした。

この資格特待生制度を導入すると途端に学内の雰囲気が変わりました。

「なんで勉強するの?」

から

「勉強するのが当たり前」

に変わったのです。

その結果、他の大学改革策も相まって受験生が増加。

2014年1月現在では代々木ゼミナールの偏差値では49に上昇しました。

付言しますと、群馬県内の文系私立大ではもっとも高い大学にまで成長しています。

参考

上武大学ビジネス学部 36

関東学園大学経済学部 37

高崎商科大学商学部 40

かつては嘲笑していた高校関係者も今では生徒に対して国公立大志望者には滑り止め校として受けるように指導するまでに変わりました。

滑り止め校と言えば聞こえは悪いですが、これは地元高校の高評価の裏返しでもあります。

関係者によると、

「国公立志望の子は落ちても、きちんと勉強させる大学に行かせたかった。

それまでは群馬県内になく、首都圏に行かせるしかなかった。

共愛は大学で雰囲気が大きく変わったし、生徒やその保護者にもお勧めできる大学になった。

ただ、偏差値が上がりすぎて国公立の滑り止めと言いながら、国公立に受かり共愛には落ちる生徒も出てきている」

とのこと。

私も見学に行ったことがありますが、小規模校ながら学生はみな勉強に熱心で、教職員も前向きな方ばかりでした。

現在では、受験生が集まるようになったこともあり、「4年間タダ」は1年のみ(延長なし)に後退していますが、それでも学費だけでなく教育の質という点でも評価できる大学となっています。

群馬から広がる英検2級優遇策

この共愛学園前橋国際大の成功は全国の私立大にも波及することになりました。

学費全額無料でなく、2~5割相当額支給の大学も含めれば新潟県の長岡大学新潟経営大学、兵庫県の神戸海星女子学院大学など全国に広まっています。

私立大学だけでなく、公立大でも沖縄県の名桜大学は英検準1級合格者に10万円、1級合格者に20万円の学長特別奨学金を支給しています。

※なお、2014年1月13日閲覧時点(記事作成時)では「現在、その他検定等の点数との換算表を見直し中」とのことでした。

奨学金情報を網羅したサイト

日本学生支援機構は旧・日本育英会であり、奨学金の老舗としても有名です。

同機構に奨学金情報を網羅した一覧があります。

国立・公立・私立(地域別)に分かれています。

難点は「英検2級」などでなく「指定資格」などあいまいになっている大学など読みにくさ。

それから、奨学金によっては特待生や資格奨励制度ということで記載がないのも残念。

たとえば、先ほどの共愛学園前橋国際大などは記載されていません。

日本の大学サイト782校分、全部チェックするよりは、はるかに楽です。

以前、某週刊誌の奨学金特集のために2週間近く、782校分、一気読みした私が言うので間違いありません。

しかも、その後、その某週刊誌編集部と色々…、まあ、これはいいや。

国立大でも奨学金を支給する時代

注目は国立大・公立大です。

国立大ではもともと学費が安く、しかも学費減免制度というものがありました(現在もあります)。

家計の苦しい学生向けの制度がある以上、わざわざ奨学金制度を作る必要がない、との立場を国立大は取っていました。

これは国立大に右にならえの公立大も同様です。それに公立大は地元出身者に対して入学金を割り引く制度を設けているのが通例です。

ところが、この学費減免制度、非常にわかりづらい制度です。

大学も対象者や選考結果(申込者数なども含む)などを含め、わかりやすく提示しているとは言えません。

参考1:千葉大学

参考2:文部科学省通知

ところが、国立大学法人化によって、国立大も就職や受験生確保、広報などに気遣わなければならない時代になりました。

奨学金も受験生確保の手段の一環として導入されていきます。

国立大の奨学金で目立つものを5校、ご紹介します。

山形大学・山澤進奨学金…入学金・在学中の学費免除のうえ、月5万円支給

広島大・フェニックス奨学制度…入学金・在学中の学費免除のうえ、月10万円支給

新潟大・輝け未来!! 新潟大学入学応援奨学金…入学金(40万円)支給、寮費無料、学費を減免(全額か半額)

電気通信大・UEC修学支援奨学金…50万円支給、学費免除。大学の広報活動協力が条件

東京農工大・東京農工大学教育研究振興財団奨学金…10万円支給、前年度の学業成績優秀者108人

上記5校のうち、

東京農工大は在校生対象、

電気通信大・新潟大は前年10~11月に締切、

山形大・広島大は応募書類提出が必要ですが、本記事公開(1月13日)時点ではまだ提出(広島大は申請書類の請求も必要、1月23日まで)が可能です。

奨学金で学生の2極化対応

国立大学以上に奨学金を充実させているのが私立大です。

私立大で奨学金、それも返済義務なしと言えば経営難の大学が乱発というイメージを持たれる方がいるかもしれません。

現在では早稲田大、慶応義塾大など難関私大でも奨学金を充実させています。

たとえば、早稲田大だと学内奨学金はすべて給付型で返済義務がありません。創立125周年記念奨学金は学部により基準が異なりますが、対象者数は学部生合計1070人。

明治大も明治大学給費奨学金(20~40万円)が1400人

近畿大の成績優秀者特待生(学部授業料等の半額~全額相当額/171~591万円)は980人が対象です。

かつて奨学金と言えば、家計が苦しい学生のみ対象というイメージがありましたし、実際に奨学金はそうした学生のみが対象でした。

しかし、今では欧米と同じく、優秀な学生に与える栄誉、という意味合いが強まっています。

さらに言えば、受験生が順調に集まっている難関大や中堅大のマンモス大学では、奨学金制度をうまく使っています。

客寄せ、広報対策というだけではありません。

入学できるレベルの学生でも、さらに優秀(スポーツでも学業でも何でも)なら奨学金を支給して大学を活性化させる、そうでない学生には学費を普通に課すことで差を付ける、という次第。

優秀という定義も、一昔前のイメージよりも相当広く、それが実用英検2級でも学費無料(相当額を支給)という大学が登場している理由なのです。

繰り返しますが、「優秀」の定義も含め、奨学金の対象者は大学によって異なります。

冒頭でご紹介した大学校やトップクラスの成績優秀者など、現代日本の大学では奨学金とは

ごく少数が対象で、しかも返済義務あり

から

それなりの人数が対象で、返済義務なし・給付

と変わってきています。

制度がある以上、もらえるならもらっておいた方が得することは言うまでもありません。

志望校がどんな奨学金を用意しているか調べてみてはいかがでしょうか?

以下に奨学金をもらうコツ7点をまとめたので参照してください。

昔、家族ドラマのステレオタイプでは親同士の見得の張り合いで

「偏差値がこんなに上がりまして」

「うちの子は×校に通っておりまして」

というのがありました。

今後は

「うちは成績優秀ということで学費がタダですのよ、ムオッホッホ」

となるかもしれません(たぶん)。

コツその1:高校時代に英検2級、できれば準1級まで取得

実用英検2級、できれば準1級は高校在学中に頑張って取得しておきたいところです。

そうすれば、奨学金給付の大学が間違いなく増えていきます。

大学入学後の取得でも私立大だと奨励金を支給する大学は多くありますので、頑張りましょう。

コツその2:一方的な思い込みを捨てる

たとえば、スポーツ対象の奨学金・特待生でも、

「部活をやっていれば何でもOK」

から

「全国大会で入賞・正選手として活躍」

まで大学によって相当違います。

補欠クラスの生徒でも、対象とする大学もありますので、スポーツを大学でも続けたい高校生は自分で色々と見比べてください。

同じことはスポーツ以外にも言えます。この記事にも書いた通り、国立大でも奨学金制度を作っている時代です。

高校生個人あるいは保護者や高校教員などが一方的に思い込んでいる場合がありますが、現代の奨学金事情はそうした思い込みのはるか上を行っています。

コツその3:大学サイトを確認

2週間かけて872校全部見た私が断言できることです。

志望校なら、必ずサイトを確認しましょう。

それも奨学金の項目だけでなく入試や学生生活、経済サポートの項目などを探すことです。

これは大学の不親切さを表しているのですが、奨学金の情報が充実している早稲田大

のような大学ばかりではありません。

これは、奨学金が

「受験生を対象としている」

「在校生を対象としている」

の2種類あり、大学によって

「奨学金」

「特待生」

「学業奨励金」

「授業料免除制度」

など呼び方がバラバラだからです。

たとえば、一橋大では大学独自の奨学金制度をサイトで紹介しています。

ところが、学業優秀学生奨学制度はまた別。

国公立大は他の国公立大の奨学金新設の動きを見て毎年、新設する大学が出ています。

私立大も制度をよく変えているので、最初に見てから数か月後に新設していた、ということも珍しくありません。

コツその4:入学前年9月ごろの志望校選択で再確認

私立大ではAO・推薦入試受験者を対象とする奨学金・特待生制度が多数あります。

戦前の1933年から実施している神奈川大の給費生試験(合格すれば学費全額免除)などもあります。

それから国立大でも新潟大、電気通信大などは前年度に募集を締め切ります。

再確認しておけばそれだけで選択肢は増えるでしょう。

コツその5:入学直後も再チェック

出願前に締め切る奨学金もありますが、入学後に奨学金の説明会を開催したうえで受け付ける大学もあります。

気になったら学生課などに相談してみてください。

コツその6:勉強やサークル活動をさぼらない

学業成績で学年上位に入っていればそれだけで学業奨励金の対象となる大学もあります。

さらにサークル活動・学生活動の内容次第では活動資金を提供する大学も増えています。

参考1:東海大チャレンジセンター

参考2:京都産業大サギタリウス・チャレンジ チャレンジ部門

それから受験時ないし入学時に奨学金・特待生の対象になっても学業成績が水準以下になると支給打ち切りという大学も多いので注意が必要です。

コツその7:家計急変でもまずは相談

失業や両親の死亡など家計が急変したとしても、まずは大学の学生課などに相談してみてください

一昔前ならともかく、今の大学は国公立・私立問わず、家計が急変し学費を払えなかった学生対象の奨学金や学費免除制度などを用意した大学が増えています。