大学病院を襲うコロナ危機とは?

大学病院の危機(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除され安心したとたんに、北九州市や東京で感染者が増えだしました。早くも第2波が心配されます。

 特に心配されるのが受け入れの医療機関の問題です。前回も指摘したように、新型コロナウイルスを受け入れている感染症病棟や集中治療室の医療関係者は忙しいですが、それ以外の部門では緊急手術や検査以外は控え、患者さんも感染を恐れて来院しないなど経営危機が心配されています。

大学病院の経営ひっ迫

 新型コロナウイルスのまん延は、一般の医療機関だけでなく大学病院のような高度医療機関にもかなり悪い影響を及ぼしています。国公立大学は、独立行政法人化の一環で2004年に国立大学法人(公立大学法人)になりました。付属病院の運営は病院収入と運営費交付金などで行われています。病院収入が減少すると経営は厳しくなります。

 さらに法人化された時にかなりの借入金を譲り受けていますので、借金の返済も大変です。追い打ちをかけるように昨年10月から2%上がった消費税が経営を圧迫しています。

 そのために全国医学部長病院長会議(AJMC)は4月20日に新型コロナウイルス対策で経営がひっ迫するとして大学病院を含む医療機関に約2000億円の損失補てんを要求していましたが、事態が深刻化したために5月18日には約5000億円の財政投入を要求しています。

個人の収入も激減

 大学病院には正規のスタッフの他に大学院生や薄給や無給で働く非常勤医師も大勢います。働き方改革でこのような中途半端な立場の医師をどのように処遇するかが大きな問題となっていました。薄給や無給の医師の収入は地域の病院での外勤(アルバイト)です。

 医師の足らない病院との関係は良好でしたが、新型コロナウイルスのまん延で外来患者がかなり減った診療所や病院では外勤(アルバイト)の雇い止めが始まっています。また、他府県に外勤している場合は「しばらく来ないで欲しい」とも言われているようで、大学病院のみならず、個々の医師の収入もかなり減少するでしょう。

実習が多い医学教育カリキュラムを直撃

 大学病院では病院経営も大変ですが、さらに大変なのが学生教育です。おそらくほとんどの医学部は現在休校中でしょう。医学部では他の学部よりも実習が格段に多いことはご承知の通りで、特に病院研修がまったく行われていないのが気になります。

 今休校が解除されれば、まだ夏休みや冬休みをつぶすことで何とかなるかもしれませんが、あと1~2カ月休校が続けばカリキュラムの消化はほぼ不可能です。おそらく来年2月に行われる医師国家試験の準備も間に合わないでしょう。

 新型コロナウイルスが終息する前に、中途半端に学生が復学すれば学生教育と患者ケアでスタッフは疲弊するでしょう。流行が長引けば、カリキュラムを消化するのが難しいばかりか、国家試験にも間に合わないのではないでしょうか?

 9月入学には消極的な政府ですが、第2波が来て、再度休校になれば、2月の国家試験、3月卒業はほぼ不可能です。

経済的困難から退学を考える学生も

「高等教育無償化プロジェクトFREE」が4月9日からインターネット上で実施した医学生の調査によると回答者の約7%が親の収入減などを理由に退学を検討しているようです。約5割の学生が家計を支えている人の収入が減った、またはなくなったと答えています。

 さらに病院実習の不安も目立ったと言います。私立大学では学生が頑張ってアルバイトしても、とても学費を払いきれるものではないでしょうし、そもそもアルバイト自体がかなり減っていますので、学生の不安は高まるばかりです。

大学病院の崩壊が現実化する

 今や大学病院は新型コロナ対策、経営、学生教育、非常勤医師の外勤確保などの新しい大きな問題を抱えています。政府からの全面的な援助がなければ、9月には大学病院の小崩壊、来年3月には大崩壊するのではないかとAJMCは予想しています。たとえ、新型コロナウイルスが終息しても、経営再建のために人員削減もしくは給与の見直しなどに着手する可能性があります。

 一時的に減ったアルバイトも、外勤先の経営が同様に厳しいために再度の外勤を受け入れてくれない可能性があります。常勤ならともかく、外勤先が減った非常勤医師は大学を辞める可能性もあり、大学の研究や教育に大きな支障をきたす恐れがあるでしょう。新型コロナウイルスのまん延は、大学病院にも大きな影響を及ぼしつつあります。