今想定される3つの医療崩壊

救急室で空を見上げる医療従事者(写真:ロイター/アフロ)

今後想定される3つの医療崩壊

 新型コロナウィルスが蔓延して1番心配されるのが医療崩壊です。現在日本では患者数や死亡者数は徐々に増えていますが、欧米のように毎日5000人が感染し、500人ぐらいが亡くなっていることに比べればはるかに良い状態です。

 感染者数が増えないことが望ましいですが、緩やかに感染を広げていくと言う方針ではあまりにも感染者数が少ないと長期化する恐れがあります。その間にワクチンや治療薬の開発が進むか、気候が食い止めてくれるのを望むばかりです。

 今後患者さんが爆発的に増えて危惧される医療崩壊には3つ想定されます。

1. 重症患者さんが増えて集中治療室が破綻する

2. 一般の患者さんの診療が減って医療機関が破綻する

3. 集中治療室の医療関係者の心が折れて、医療自体が破綻する

患者の爆発的増加による医療機関の破綻

 感染者数が増加して問題になるのは医療機関の受け入れ態勢です。最近ではようやく無症状と軽い症状の方は自宅や宿泊施設に隔離すると言う方針が打ち出され、少し余裕ができたといえ都心部ではかなり厳しい状態が続いています。

 自宅待機に関しては医療関係者の目が届かないので危険だと言う事例があることから、医療関係者の診察や監視がある宿泊施設に隔離する方向になっています。インバウンドなどで客が激減した宿泊施設にも、ある程度収入が入るので良い方法ではないでしょうか?

 問題は中程度の症状の患者さんの入院です。おそらく酸素投与は必要だが、人工呼吸器はまだ大丈夫と言う容態ですので、ある程度の病院なら管理ができます。しかし、一般病院で新型コロナウィルス患者さんを引き受けると院内感染の恐れが強まります。そのため一般病院だけでなく高度医療機関でも新型コロナウィルス患者さんの受け入れに難色を示している病院もあります。

中等度の患者さん専用の病院は各地で必要

 感染患者さんを受け入れないのは、単に入院患者さんや医療関係者を守ると言うだけではなく、経営の問題も大きいようです。そのために民間病院には依頼しにくいと思いますが、国公立の病院の一部を新型コロナ専用病院に転換した方が効率は良いのではないでしょうか?

 大阪では市民病院を新型コロナ専用病院にするようです。これにより少なくとも入院患者さんへの感染は防げ、医療資源を集中することができます。このような中程度の患者さんを引き受ける病院をある程度用意できれば、最終的に重症患者さんを引き受ける専門病院に余裕ができるはずです。

 また多くの病院は緊急手術を停止したり、外来を制限していますのでかなり経営が厳しくなっています。たとえばクラスター化した病院をこの際コロナ専用病院に転嫁するのも良いかもしれません。

 このように医療側の受け皿を広げることによってある程度の感染者が出ても対応できるのではないでしょうか?約8割の患者さんが無症状または軽い症状です。ただインフルエンザと違って症状が重症化することや回復までの期間が長い事が病院の稼働を悪くしています。現在はアビガンなどの治療薬が期待されています。軽い症状の方を重症化させないためには宿泊施設への十分な医療的対応も重要です。

心配される医療機関の経営破綻

 私も以前お話したように実は多くの医療機関では患者さんが減少して経営危機に陥っています。経営が厳しい背景には単に患者さんが減っただけではなく患者さんが病院内に長くいたくないと言う気持ちから検査が大幅に減少しています。特に感染が危惧されるような検査に関しては自主的に緊急以外はしないようにしている病院もあるようです。そのため、新型コロナウィルスの蔓延が長期化すると医療機関の倒産も増え、第二の医療崩壊とが起こる心配があります。

1番恐れるのは第3の医療崩壊

 感染者数が爆発的に増えれば当然集中治療室が満床になります。海外では人工呼吸器を若い人の治療に回すと言う「命の選択」が行われていると聞きます。重症患者数が増えれば日本でも同じような悩みに直面するでしょう。

 集中治療室で働く医療関係者は自分がコロナウィルスに感染するのではないかと言う心配のもとで頑張っています。しかし、患者さんが増え「命の選択」を迫られた場合に心が折れてしまうかもしれません。

 多くの医療関係者は金銭面よりも、使命感で働いています。もし「適切な命の選択」を行ったとしても、後ほど訴訟に巻き込まれる可能性があれば職場から去る可能性もあります。2006年に福島県の産婦人科医が帝王切開に関して逮捕されたことをきっかけに、産婦人科を始め多くの救急医が職場を立ち去りました。

 病床数を増やしたり、人工呼吸器や防護服を十分に取り揃えても、肝心の集中治療室で働く医療関係者がいなくなればお手上げです。第3の医療崩壊を防ぐためにも皆さん方のご支援とご理解が必要です。