医療崩壊を防ぐためには病院や役所の役割分担を柔軟に:集中治療室を守るために機器の整備と人材確保を

集中治療室を守るために(写真:アフロ)

病床数は西高東低

 新型コロナウィルスが猛威をふるい、感染症病棟が不足する医療崩壊が心配されています。特に東京では感染者の急増により病室が確保できなくなっています。そのため無症状や軽症者に関してはホテルなどでの隔離を始めています。

 自宅での療養も考えられていますが、家族内感染や独居の場合は日常生活の問題が危惧されますので、ホテルや施設での隔離が望ましいと思います。

 大阪では約1ヵ月前からこのような事態を予測して患者さんをトリアージする計画を立てていましたので、現在のところ医療崩壊を起こしそうではありません。

 東京都には高度な医療設備を持った病院がかなりありますが、人口比率の病床数では関東は関西に比べてかなり少ないです。例えば人口10万人当たりの病床数は福岡1683、大阪1211に比べて、東京942、埼玉852、神奈川809です。

 今頃、病床が足りないというのは、オリンピックのことに集中しすぎてこのような対策が遅れたのではないでしょうか?

医療資源のアンバランスが生じている

 さて、この前にも投稿したように、医療崩壊が危惧されるのは専門の感染症病棟、そしてその集中治療室です。しかし、一般病院や医院の患者さんはかなり減っています。月に2回ほど受診していた高齢者は院内感染を恐れて「3ヶ月ほど薬を出してほしい」というので患者さんは減ります。

 また一般病院でも予定手術等を制限しているために空いているベッドが目立ち始めました。また交通事故なども減っているために救急受診する患者さんも減っているようです。このように感染症以外の多くの医療関係者はむしろ暇になっているようです。

 マスコミや一部の医療関係者は医療崩壊をかなり心配しています。確かに集中治療室が医療崩壊するのが1番恐ろしい状態です。現場では新型コロナウィルス患者の治療にあたる医療関係者は疲弊し、その他の医療関係者は暇になっていると言う奇妙な現象が起きております。このような状況を改善するのは組織のトップや行政の力です。

担当する医療関係者を守れ

 新型コロナウィルスが蔓延し始めて2ヶ月ぐらい経ちます。担当している医師や看護師などの医療関係者の疲労も溜まってきていると思います。

 現在は特別な治療法はなく、治療と言えば酸素投与や点滴、それでも状態が悪くなれば人工呼吸器を装着します。このような処置なら一般の内科や外科医でも可能です。 

 人工肺を装着した時は集中治療室で慣れた医療関係者が管理することが必要ですが、専門病院には人工呼吸器の管理ができる内科や外科医がたくさんいると思います。適切に配置転換をして、疲れている医師を休ますことは可能ではないでしょうか?

 我々が医師になったころから、内科や外科は臓器別に細分化され、専門性が高くはなっていますが、総合的な診療ができる医師が不足していることも問題でしょう。

 集中治療室での看護は専門知識が必要ですが、院内では定期的に看護師さんの配置転換が行われます。一般病棟にも集中治療室勤務を経験した看護師が少なからずいるはずです。そのような経験のある看護師をうまく配置転換すれば、今頑張っている看護師も少しは休憩できるのではないでしょうか?

保健所も限界

 新型コロナウィルスのPCR検査で大変忙しいのが保健所です。保健所は適正配置のもとにかなり人員が減らされています。そのために、このような緊急時になれば人手不足となるのは明らかです。医師や保健師は国家資格が必要ですので、臨時に経験のある方を雇えば良いのではないでしょうか?

 また事務担当の方もかなり忙しいと思いますが、自治体では定期的に配置転換が行われますので、以前に保健所の勤務経験のある職員をうまく活用すれば職員の疲弊は防げると思います。

研修制度の油断

 毎年2月上旬に医師国家試験が行われ、3月中旬にその結果が発表されます。試験が終了すると他の学部の学生と同様、卒業旅行などに行く医学生も多いようです。2月の上旬ならまだ危機感の薄かった時期で、多くの医学部卒業生が海外旅行に行った可能性があります。

 また平成16年から始まった医師臨床研修制度で医学部卒業後2年間の臨床研修が義務付けられました。3月後半になるとほとんどの病院で研修が終了し、次の病院に向かう準備をします。頑張った研修医が打ち上げをする気持ちは理解できますが、今の時期に多くの人と飲み会をするのは常識外れです。

 慶応病院で起こったような事はおそらく各地の研修病院で起こってる可能性があります。幸いにも陽性者がいなかったので大きな問題になっていないだけでしょう。

病院をクラスター化がさせないために

 新型コロナウィルス感染者とわかって引き受ける専門病院はまだしも、一般病院の救急に新型コロナウィルス感染者が紛れて搬送されることがあります。十分な感染防御を行わずに治療すると医療関係者が感染し、病院がクラスター化する可能性があります。

 そのためには一般病院の救急担当の医療関係者にも感染防御の資材を十分に供給する必要があるでしょう。もし感染しても、2週間で復帰できるような医療関係者なら戦力になるでしょう。

 新型コロナウィルスが恐ろしいのは、その感染性だけでなく、いったん肺炎になると回復に時間がかかるということです。長時間の治療が必要になると病院の収容数を超える恐れがあります。

 医療関係者だけでなく、国民一人一人がもう少し頑張らなければいけないと思いますが、日本の医療にはまだ余力があると思いますのでうまく活用していただきたいと思います。

 もし感染者が爆発的に増えて医療崩壊が起これば、現場で「命の選択」が現実化するかもしれません。