医療崩壊の陰で起こっている別の医療問題とは?

イタリアの医療崩壊の現場(写真:ロイター/アフロ)

感染患者さん全てを受け入れると医療崩壊に

 新型コロナウィルスの患者さんは徐々に増加し、大都市圏では医療崩壊が心配されています。現在は新型コロナウィルスに感染した方は症状に関係なく、入院しているようです。しかし、感染者の約8割は軽症か無症状です。

 そんな患者さんでも感染症病棟に2週間ほど隔離されます。現在カウントされているのは感染者数=ほぼ入院患者数です。もちろん2週間ぐらい経って症状が治まり、ウィルスが検出されない方は退院されていますので、ある程度病床は稼働しています。

 しかし、現在のように感染者が増えてくれば軽症や無症状の方も重症の方も同様に専門病院に入院させていては早晩入院できない方が増えるのは当然です。それを専門家は医療崩壊と呼んでいます。

 すでに大阪では軽症や無症状の患者さんをホテルや自宅で療養する案を示しています。また東京でもやっと軽症者や無症状者をホテルなどで経過観察するようです。かなり後手に回っていると思われた厚労省もこの方針を追認するようです。この方針によって専門病院にゆとりができ、これ以上の感染者の爆発的な増加がなければ何とかしのげるのではないでしょうか?それでもさらなる爆発的な患者さんの増加には対応できませんので、油断は禁物です。

感染症病棟以外の医療現場

 医療崩壊と聞けば病院が患者さんで溢れかえっているような印象を受けると思います。しかし、現在多くの病院では外来患者さんが少なく、かなり空床が目立っています。社会活動が低下して交通事故等も減っているために救急搬送もかなり減っているようです。個人の医院では新型コロナウィルスに感染することを心配する高齢者が薬を長期間分もらう傾向にあり、患者さんがかなり減っているようです。

 つまり病院全体が忙しいというわけではありません。新型コロナウィルス患者さんを受け入れている専門病院は大変でしょうが、その他の一般病院は救急患者さんや通院患者さんがかなり減って余裕のある診療科も多いようです。私の友人の医師も志村けんさんが亡くなって以来、患者さんが減って暇だと言っています。ただ、そのような余裕のある病院も救急患者さんなどに新型コロナウィルス感染者が紛れることがあり、十分注意しなければ病院機能が麻痺します。

なぜ遠隔医療が進まないのか?

 前回も新型コロナウィルスの検査は開業医で受けにくい状況を説明いたしました。発熱の患者さんが安易に医療機関に来て医療関係者に感染させてしまうのを予防するために、厚労省はインフルエンザや新型コロナウィルス検査に関してかなり厳しい感染防御の方針を打ち出しました。これによりマスクや防御服が足らない医院では検査を行うことが困難になっています。

 医療関係者の感染を防ぐために、対面ではない遠隔診療を推進する動きがあります。特に発熱に関しては問診をすればある程度のアドバイスができますので遠隔医療は有効な手段です。

 政府側としては早くから遠隔医療の方針を打ち出したのですが、日本医師会側が遠隔医療に対する不信感があり、強硬に反対をしてきたようです。詳しくは現代ビジネスの長谷川学さんの記事を参照ください。医療は対面診療が原則だということがわかりますが、このような非常時だけでなく、今後も同じような感染症に対して医療関係者を守るためにも必要な手段だと思います。

 しかし、遠隔医療が発展すれば、現在の開業医中心の医師会はかなりダメージを受ける可能性がありますので、積極的に賛成ができなかったのかもしれませんが、最近はようやく遠隔診療も止む無しと言う態度になってきました。

医療崩壊を防ぐにはシステムを変えることが必要

 このように医療全体が崩壊しているのではないので安心してください。医療崩壊を防ぐには医療のシステムを少し変えるだけで十分対応できるのではないでしょうか?例えばホテルや施設に軽症患者さんや無症状の患者さんを収容した場合も、ある程度余裕がある開業医や病院の先生が往診したり、遠隔医療で対応することが可能でしょう。軽症患者さんの容体が悪くなれば、すぐに専門病院に送ることも可能です。こんな緊急時にもいろいろな組織の思惑が絡んで、政府のやりたいことがスムーズに遂行できないようです。

 こんなときこそ組織の長は利害関係を考えずに素早く対応していただきたいものです。ただし、よく指摘されているように爆発的に患者さんが増加した場合は、専門病院での人工呼吸器や人工肺(ECMO)が不足しますので、引き続きの感染予防は必要でしょう。

対応する医療機関にこそ十分な補助を

 新型コロナウィルスの感染者が増えるにつれて多くの医療機関に収容できる空きベッドを確保することが望まれます。国公立病院ならその経費はある程度自治体が責任を持てます。しかし民間病院の場合は念のために空きベッドをたくさん用意しても、患者さんがあまり来られない場合は収益がかなり悪化します。社会としてはそのほうが望ましいのでしょうが、経営が厳しい民間医療機関は受け入れのための空きベッドを長期間確保するだけで経営破綻を起こす可能性があります。それこそ医療崩壊が起こります。国民全体にマスクを配るのも良いでしょうが、その予算があればベッドを確保する病院の補助に当てるのも重要ではないでしょうか?

 確かに新型コロナウィルスは厄介ですが、終息したときには経済界だけでなく医療現場も大きな変化が起こっているように思います。新型コロナウィルスの蔓延はピンチですが、新たな医療の枠組みを作るためにもチャンスと思って取り組んでみてはいかがでしょうか?