診療所でのウィルス検査は必要か?:医療従事者を守るためにも患者さんのご理解が重要

遠隔医療のイメージ(写真:アフロ)

医療崩壊を防ぐのが一番重要

 新型コロナウィルスが流行して1番危惧されるのが専門病院に患者さんが殺到して医療崩壊が起きることです。そのため政府はPCR検査をある程度の人に限定してきました。しかし、いろいろな批判から、現在はPCR検査を保険適用するようになりました。これにより専門病院だけでなく一般の内科開業医にも検査してほしい患者さんが増える恐れがあります。

 医療関係者も不用意に患者さんと接すると自分自身が感染することになり、医院自体がクラスター化する恐れがあります。3月11日に厚労省が「すべての患者について鼻腔や咽頭から検体採取をする際にサージカルマスクや目の防護具、ガウン、手袋を装着する」ように求める通知を出しました。

多くの医療機関では、マスクなどの感染防護具が足りない

 今はマスクなど感染防護具が不足し、十分に対応できない医療機関は結構ありますので、医師会は「インフルエンザやその他のウィルスの検査については検査をせずに臨床診断で治療薬を処方することを検討してほしい」と要請しています。

 もし医療関係者の防御が不完全で、検査した患者さんが新型コロナウィルスに罹患していた場合は、その医療関係者が濃厚接触者となり、場合よっては2週間位の休院を迫られる場合があります。このような医院が増えると一般レベルの医療崩壊も起こってきます。マスクやガウンが不足している場合はインフルエンザやコロナウィルスの疑いのある発熱患者さんの診療をお断りしている医療機関もあるようです。

 患者さんには不安かもしれませんが、今は政府の要請してるように発熱があってもしばらくの間は自宅で様子を見てほしいと思います。このような事態から、インフルエンザの検出キットを市販すべきだとの意見もありますが、幸いなことにインフルエンザの流行はもうすぐに終わるでしょう。

インフルエンザとの比較

 今回の新型コロナウィルスはよくインフルエンザと比較されます。日本では流行時に1日50人以上のインフルエンザでの死亡者が出ています。これに関しては本川裕氏がPRESIDENT Online で興味深いレポートを発表されていますので参照ください(なんと1日50人以上「インフル死者」が日本で急増する不気味。怖いのは新型コロナだけじゃない)。

 しかし、現在は新型コロナウィルスで亡くなっている方は30人程度です。このようなデータから新型コロナウィルスはそれほど恐ろしいものでは無いと思ってる方もいらっしゃるでしょう。今の日本は感染の制御がある程度できていますが、イタリアの例を見るとかなり感染力が強く、高齢者や合併症のある方には命の危険があると言わざるを得ません。そのために慎重にならざるを得ないのは理解できます。

 逆にインフルエンザは検査法も治療法もあるから大丈夫との意見もあります。インフルエンザの死亡数はどのように変化しているのでしょうか?国内のインフルエンザの死亡者数は1960年前後がピークで徐々に減ってきました。これはインフルエンザワクチンの子供への接種が推奨されるようになり、1977年には予防接種法で小中学生の接種が義務化されたのが大きく死者数を減らしたと言われています。

 しかし、ワクチンによる副作用が問題になったために1987年から保護者の同意、1994年には任意接種に変わりました。その頃からインフルエンザの死亡数が再び増え始めました。このために、インフルエンザワクチンの集団接種は、年間4万人前後の主に高齢者の命を救っていたとも言われています。

検査法も治療法もあるのにインフルエンザの死亡数は増えている

 最近ではインフルエンザの予防接種をする方も結構増えてきています。さらに2001年頃からインフルエンザの検査キットが発売され、治療薬のタミフルが保険適用になっています。その後も様々なインフルエンザに効果のある薬が発売されていますが、いまだにインフルエンザの死亡者数は増加の一途です。

 これには小中学生の集団ワクチン接種の中断も関係していますが、おそらく高齢化が大きな原因ではないかと言われています。つまり診断法や治療法がある程度確立されても高齢者の死亡率はあまり改善されていないように思います。このような観点からインフルエンザは診断法や治療法があるからといって大丈夫と言う意見も少し違うのかな?と私は思います。

医療崩壊を防ぐには遠隔医療と患者さんのご理解が重要

 専門病院だけでなく一般の診療所の医療崩壊も防ぐことが重要です。発熱外来等を作って患者さんを分けて診療する病院も増えています。しかし市中の診療所では待合室を完全に分ける事は困難です。またマスクやガウンなども不足しています。医療は対面が原則だとは分かっていますが、発熱して感染症が疑わしい患者さんには、インターネットを通しての遠隔医療も必要だと感じます。

 そして保険証を提示すれば医師が問診や表情などから勘案して診断し、処方箋を送ることも可能にすべきでしょう。診察料に関しては簡易的な診断なので、比較的安価に設定して、100%保険が使えるようにすれば、患者さんが支払いに行く手間も省けるのではないでしょうか?

 このような遠隔医療は有事の時に急に導入するのは難しいので、新型コロナウィルスの感染が治まってからも日常的に導入すべきだと思います。そして、何よりも大切なのは患者さんのご協力です。このような状況ですので、感染防御が十分できていない医療機関の対応にはご理解をいただきたいと思います。