今こそ必要な遠隔医療と精神的ストレスの軽減:普及には我々の意識改革が必要

治療に当たる武漢市の医療チーム(写真:ロイター/アフロ)

医療崩壊を防ぐために緩やかな感染の広がりにシフト

 日本では新型コロナウィルスの爆発的な感染を防ぎ、医療崩壊を予防する作戦のようです。もはや感染を止める事はかなり困難だという専門家も増えてきました。一気に感染を流行らせて、早く収束した方が良いだろうと言う乱暴な意見もありますが、重症患者も一気に増えて病院機能が崩壊します。現在のイタリアがその状態のようで、米国も同様な危険性があると指摘している専門家もいます。マスクの有用性は議論のあるところですが、東アジアとイタリアの現状を比較すると、マスクは有用だと私は感じます。また、マスクをして悪いということは少なくともなさそうです。

大阪に学ぶ新型コロナウィルス対策

 新型コロナウィルスでは大阪が先進的な取り組みをしてるように思います。現在の指定病院には濃厚接触者でPCR陽性の方が少なからず隔離入院されています。陽性と言うだけで、熱も咳も全くなく、炎症反応すらない濃厚接触者に約2週間の入院をお願いしている状態です。まだ病床に空きがあるようですが、このような無症状の患者さんが増えてくると重症の患者さんの治療ができなくなります。そのため大阪ではこのような健常キャリアの方にはホテルなどで2週間ほど滞在していただく方針に切り替えるようです。そうすれば多少感染が広がっても、病院で何とか対応ができます。また、インバウンドの客がいなくなったホテルにもメリットはあります。

感染症病棟での深刻なマスク・防御服不足

 軽症患者さんを医療施設以外にやんわりと隔離すると言う方針は良いのですが、肺炎になった患者さんの治療をする医療従事者のマスクや防御服がかなり不足しているのが問題です。政府はマスクの買い占めや転売等に規制をかけ、病院や介護施設への優先的なマスクの配布など始めています。

 感染症対策で重要なのは感染を広めない、感染にかかった患者さんを助ける他に、医療従事者の安全を確保することです。新型コロナウィルスに対しては特効薬がない事は皆さんご承知でしょう。そのため軽症患者さんにはほとんど何もしていません。肺炎の患者さんについては栄養の補給や酸素投与、時に重症になった場合の人工呼吸器などの治療があります。人工呼吸器のような機械が必要な場合は別ですが、酸素や点滴での治療においては医療従事者が頻繁に病室を訪れる必要はありません。

 当然、心拍数や酸素濃度などはモニターで別室から監視することができます。看護師さんは定期的に脈拍や体温測定をするために病室を訪れるのが通例です。その度にマスクや防御服を使い捨てにすれば、早晩なくなるのは当たり前でしょう。医療従事者が頻繁に寄り添う事は患者さんにも心強いと思いますが、このような感染症の場合は必要最低限の接触に止め、モニターで監視し、タブレットなどで綿密に交流することも必要でしょう。将来はこのような現場にアバターロボットが登場すると思いますが、現在はタブレットなどの遠隔医療で乗り切れるのではないでしょうか?

感染症対策の次は心のケア:精神的なケアには遠隔医療が最適

  先日、「ダイヤモンド・プリンセス」での災害派遣精神医療チーム(DPAT)の活動についてお話ししました。 閉じ込められた狭い船内で未知のウィルスが蔓延すると、精神的なストレスは相当なものです、そこでDPATが政府の要請を受け派遣されました。当初は対面での診療をしていましたが、感染症チームのアドバイスにより船外からの相談に切り替えたそうです。最近では高度な外科治療でも遠隔医療が可能な時代になってきています。心のケアに関しては遠隔医療がやりやすい分野だと思われます。

 先週、医療者向けのサイトから遠隔医療に対応できる医師の募集がありました。我々のようなセミリタイヤしている医師にとっては良い社会貢献だと思って申し込みました。(私はある程度ITに慣れているのですが、結構登録が面倒でITに慣れていない高齢医師は申し込みすら難しいかもしれないと思いました。)

不安を募らせる患者さんへの対応

 男性更年期外来を開設している私の主な仕事は心のケアです。新型コロナウィルスが流行してから私の患者さんの不安がいっそう増しているようです。患者さんには私のメールアドレスや緊急連絡先を伝えてありますのでよく連絡がきます。夜中や講演会中などは対応できないことをご承知いただき、24時間以内に対応できるようにしています。不安の強い患者さんには少しアドバイスするだけでかなり有効です。先日は海外におられる患者さんからも相談がありました。LINEで何回かアドバイスをしているうちに次第に落ちつかれてきたようです。

重要なのは患者さんの意識

 外科手術などの遠隔医療にはまだ課題が多いでしょうが、発熱や心のケアに関しては遠隔医療がある程度効果があると思います。2018年より政府は離島や僻地を想定した遠隔医療に対して診療報酬を認めてきました。

 ここで重要なのは患者さんの意識でしょう。医療は対面が基本だと言う事は重々承知しています。画面越しだとどうしても冷たい印象があるかもしれませんが、何もしないよりははるかに有効です。今後は非常時だけでなく一般の診療にもさらに遠隔医療を取り入れ、異常時の際にもすぐに対応できるようにすれば良いでしょう。

治療法がない時は、ストレスケアが最善の方法

 現在のところ新型コロナウィルスに対するワクチンや特効薬はありません。そのためマスコミは免疫力が決め手だと紹介しています。早速、免疫力をアップに良い食事やサプリメントなどが紹介され始めています。多くは科学的根拠があまりないものと推測されます。

 精神的なストレスが多くの病気を悪化させる事は各分野の専門家は理解しています。そして精神的ストレスと感染症の関係を調査した論文では精神的ストレスが大きいほど感染症を起こしやすく、その影響は細菌感染よりもウィルス性感染がより傾向が強かったようです(Mark Hamerら:Brain, Behavior, and Immunity、76, 2019, 280-283)。

 簡単に言えば明るく、楽しく過ごすことが感染症の予防になると言うことです。無症状のPCR陽性者を厳格に管理すると免疫力が落ちて本当に発症してしまうかもしれません。このような観点からも軽症者や健常キャリアの方は自宅やホテルなどでゆっくり過ごす事は良いことだと思います。

重症化の予防には精神的ストレスを少なくすることも必要

 感染症の予防の基本は人との接触をなるべく少なくすることです。その為にイベントの自粛や休校の処置がとられています。この対策は致し方ないと私も思いますが、長期間続くと経済的打撃以外に国民の精神的ストレスも大きくなるのは間違いありません。精神的ストレスがかなりの疾患を悪化させることは知られていますので、感染症以外の死亡者も増える可能性は否定できません。

 今回の新型コロナウィルスでは高齢者と合併症のある方が重症化するリスクが高いようです。そこで、時間とお金に余裕のある高齢者は、この際に人の少ない地方の旅館やホテルに1ヵ月ほど避難すればいかがでしょうか?

 現在は新幹線などの移動手段もかなり空いていますので危険性は少ないと思われます。すべてマイナス思考では、経済が疲弊し、感染のリスクは大きくなります。ピンチをチャンスに変えて、楽しく過ごして元気な高齢者の免疫力を上げて、経済も活性化させると言う意識も必要ではないでしょうか?