線維筋痛症の治療を困難にしている原因とは?

線維筋痛症は、全身の様々な箇所に慢性的な激しい痛みが起きる病気です。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

線維筋痛症とは

 有名なアナウンサーが線維筋痛症で休養宣言をされました。線維筋痛症は、全身の様々な箇所に慢性的な激しい痛みが起きる病気です。その原因は良くわかっていませんが、痛みを感じるシステムに何らかの問題があるのではないか?と考えられています。その為に、色々な検査をしてもこれといった病因が見つからないので、患者さんが余計に滅入ってしまうことがよくあります。疼痛だけでなく、抑うつ状態や不眠、慢性的な疲労などを伴います。さらに主に自律神経の不調から生じるような、口や眼の渇き、発汗、胃腸障害、動悸、頭痛、めまい、耳鳴りなども生じます。また、音や光に過敏になることもよくあります。そして、一番問題なのは、原因がはっきりしないために、根本的な治療が確立されていないことです。現在は対症的な治療が中心になります。

繊維筋痛症と女性アナウンサーとの関係

 私の記憶では繊維筋痛症に悩まされている有名人に女性アナウンサーが多いように思います。繊維筋痛症は圧倒的に女性に多い病気です。原因はよくわかっていませんが、精神的なストレスが大きく関係していると言われています。私も時々マスコミに出演することがあり、繊維筋痛症までひどい状態ではありませんが、全身の痛みがあると言う女性アナウンサーに少なからず出会います。またマスコミに関係している方々は、男女関係なしに同じような症状を訴える方が多いように思います。

 この原因としては大勢から注目されること、生放送などでは失敗が許されないこと、時間に追われることなど、精神的な緊張が高まって、それが持続することにあるのではないかと思います。特に頑張り屋さんで真面目な方によく起こっているような印象があります。つまり女性アナウンサーは職業的に繊維筋痛症になりやすいのかもしれません。

繊維筋痛症の背景:夫源病との関係

 厚労省によると国内の患者数は約200万人といわれています。多くは中年以降の女性ですが、子育て中の若い女性も注意が必要です。私の夫源病外来を受診される患者さんの中にかなりの頻度で全身の痛みを訴える方がいらっしゃいます。この場合のストレスは、夫の上から目線や支配的な言動にあるようです。そして妻は辛抱強く、たとえ不平・不満があっても我慢をして良妻賢母を演じるような人です。50歳位まではエストロゲンなどの女性ホルモンが心身を支えていたのですが、閉経とともに女性ホルモンが急激に減少していろいろなストレスに耐えられなくなったために発症したのかもしれません。また、50歳前後は頑張って育ててきた子供たちが親元を離れる時期でもあります。今まで子供たちのためにと耐えてきたエネルギーがなくなり、空の巣症候群として一気に発症する可能性もあります。

 ストレスを持続的に受けると脳内のセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が減少してきて、鬱状態になったり不安感が強くなったりします。また自律神経が乱れて更年期のような症状が現れます。さらに痛みを制御するシステムも不調になる可能性があります。更年期にはいろいろな症状に悩まされる女性が多いですが、全身の強い痛みが続くと社会生活が困難になります。

 夫源病の場合は神経伝達物質を調整する抗鬱剤や不安や不眠を改善する精神安定剤等を処方するとともに、環境因子である夫との関係を見直す必要があります。そのために夫婦揃ってのカウンセリング、特に夫の面談は非常に大切です。繊維筋痛症に根本的な治療はありませんが、辛抱強く治療を続けることで症状が改善する方は少なくありません。

繊維筋痛症と過敏症の関係 

 以前のコラムでHSC/HSPのお話をしました。HSC/HSPは敏感な子供や大人の概念で病気ではありません。しかし、あまりにも外部の音や光等の刺激に敏感なために社会生活を送るのが困難になる人もいます。過敏な性格を修正するのは大変難しいことです。周囲の人々も理解を示すことが大事ですが、多くの方が十分な理解を持って接することも難しいです。そのために、私は強い刺激を受けても交感神経があまり体に影響しないような薬(β遮断剤)を処方しています。抗鬱剤や環境を整えるカウンセリング等とともにβ遮断剤を少し服用していただくと痛みが改善する人が少なくありません。

繊維筋痛症治療の問題点

 日本繊維筋痛症学会ではガイドラインを作成し、専門家を紹介しています。それによると全国で繊維筋痛症を専門に扱っている施設は約150です。主に大都市に集中し、専門医がいない地域もあります。繊維筋痛症の治療において、まず専門医が少なすぎることが大きな問題です。専門医が少ない理由には、原因が不明で抜本的な治療法が確立されていないことが大きいと思います。さらに繊維筋痛症の患者さんの診断や治療にはかなりの時間が必要です。多くの医療機関が保険診療をしているようですが、長時間診療してもいただける診察代はわずかです。丁寧な診察をしていると経営を圧迫して、結局は長続きできないなどの問題が生じます。私事で恐縮ですが、私の診察も時間がかかる割にあまりにも収入が少ないために外来を閉鎖せざるをえない事態に何度も追い込まれました。私の場合は男性更年期外来でしたが、繊維筋痛症と同じようにストレス環境を整えるためには十分なカウンセリングの時間が必要ですので、10年ほど前から初診だけを自由診療に切り替えました。

 繊維筋痛症の治療には薬物療法のほかにカウンセリングや運動療法などかなり時間のかかる治療が必要となります。そのような時間をかけても医療機関に十分な収入がないことも繊維筋痛症の専門家が少なく、治療を困難にしている側面があるように思えます。