ドラマより深刻な家庭内後妻業:夫の歯ブラシで掃除する妻たち

そのワイン、飲んでも大丈夫ですか?(ペイレスイメージズ/アフロ)

妻に先立たれると寿命が縮む夫たち

 フジテレビ系列で放映された「後妻業」が先日最終回を迎えました。男性にとってはあまり笑えない話ではなかったでしょうか?現実に近畿地方では後妻業と思われる犯罪が発生し、多くの独身高齢男性が犠牲になりました。高齢女性は夫がいると早く死亡し、男性は逆に妻を亡くすと早く死亡するという研究があります。

 最近では妻の樹木希林さんが亡くなって約半年後の3月17日にロック歌手の内田裕也さんが肺炎で死去されました。昨年は4月に朝丘雪路さんの他界4か月後に夫の津川雅彦さんが亡くなられました。二人とも連れ合いを亡くした寂しさから気力が衰えて、後を追うように旅立たれたのかもしれません。有名人の例だけではなく、身近でも妻を亡くした夫の多くは元気がなく、間もなく寿命を迎えることはよく経験します。逆に夫と死別や離婚した女性は概ね元気です。

熟年離婚は高止まり

 同居20年以上の離婚率は1970年代には5%程度でしたが、2000年まで急上昇し約3倍となっています。その後は高止まりの傾向にあります。しかし、結婚30年以上の夫婦の離婚率は年々増加し、約20年で倍増しています(厚生労働省 平成21年度離婚に関する統計より筆者作成)。

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同様に70歳以上で離婚した方も倍増しています。これは平均寿命が延びて高齢化したことが原因ですが、70歳代でも「連れ合いはまだまだ元気そうだ。もう一緒に暮らしたくない!」との思いが強いのかもしれません。

 熟年離婚には経済的な問題が大きく関係します。年金や貯蓄が少ない時は、夫婦別れて生活するのは困難です。高齢になると仕事をして収入を得るのも難しく、本当は別れたいけど仕方なく同居しているという仮面夫婦は相当数いるのではないかと想像できます。

仮面夫婦の現実的な対応

 経済的問題で離婚や別居ができない時には、比較的円満な家庭内別居をしている熟年夫婦が多いようです。老後はお互いに干渉しないで自由に過ごしたいので、居住空間の住み分けや食事や洗濯・掃除を別々にしたいという妻が増えているように感じます。特に毎日3度の食事は別にしたいところですが、「夕飯くらいは一緒に」というのがまずまずの落としどころでしょう。 

 これを現実化するためには夫が最低限の家事を覚えて生活自立をすることが大切です。生活をすべて妻に依存し、妻が外出するのを監視・制限するようになると事態は深刻化します。良妻賢母で従順な女性は、我慢が体調不良となりいわゆる「夫源病」を発症するかもしれません。しかし、もっと恐ろしいのは不満を悪い方向に向ける妻でしょう。

夫に早く死んでほしいと考えている妻たち

 2016年に小林美希さんが出版された「夫に死んでほしい妻たち」(朝日新書)が話題になりました。我々の調査でも夫婦仲の悪い妻の約半分は「夫に早く死んでほしい」または「長生きしてほしくない」と思っているという衝撃的な結果がでました。「それほど嫌なら離婚すればいいじゃないか?」と思うでしょうが、先ほど示したように離婚すれば経済的に成り立たないなどの理由で離婚に踏み切れないのが実情です。残る手段は「夫の他界」と考える妻も少なくないようです。私の外来を受診している女性もふと「夫が事故にでもあえば本当に楽になるのに・・・」と愚痴をこぼす人もいます。そうかと言って本当に毒を盛ったり、事故死に見せかけると完全な殺人です。

家庭内後妻業の手口

 では彼女たちはどのようにストレスを発散させているのでしょうか?まだ許せるのはスターの追っかけや高級な食事や買い物ですが、それが度を超すと経済的な問題が起きます。雑誌などで紹介される手口は夫への目に見えない復讐です。よくある復讐は「みそ汁に鼻くそを入れる」とか「夫の歯ブラシで掃除をする」というものです。先日あるテレビで、あまり推奨されない妻のストレス発散として「夫の歯ブラシで掃除をする」ことを紹介したら、大阪大学に「これは犯罪にも繋がる行為です。もし、これを実践して菌が付き、それを知らずにその後使った旦那さんが亡くなってしまったら責任取れるのでしょうか?冗談でも医師が言うべき事ではないと思います」という抗議のメールがありました。確かにご指摘の通りです。しかし、この方法は私が指摘する以前からよくある有名な復讐方法です。その為に私は警鐘を鳴らし続けてきましたが、やっと気が付いていただいた方がおられて安心しました。このコラムはメールをいただいた方へのお返事でもあります。気になる男性は、今後は歯ブラシは入念に洗ってからお使いください。

 ある番組に出演した時も、収録の合間に同じような復讐方法を不満が鬱積した妻から聞きました。そしてもっと恐ろしいのはそのような不満を抱えた女性は夫に逆らわない一見貞淑な妻を演じているとのことです。つまり、そんなことをしそうにないと思っている従順な妻が実際に我々の健康被害をもくろんでいる可能性があります。ここで紹介できないような過激な復讐方法もあるようですので、気になる方はご自身で調べてみてください。

「亭主を早死にさせる10カ条」の逆が夫にはお勧め

 そんな不満が溜まった妻には約50年前にハーバード大学の栄養学のジーン・メイヤー教授が提唱した「亭主を早死にさせる10カ条」の概要を紹介します。

(1)夫を太らせる

(2)酒をうんと飲ませる(飲酒習慣を注意しない)

(3)夫を座らせたままにして運動をさせないようにする

(4)健康に悪い飽和脂肪酸の多いものをたくさん食べさせる

(5)塩分の濃い食事を夫に提供する

(6)濃い珈琲をたくさん飲ませて睡眠不足にさせる

(7)タバコを勧める(禁煙を勧めない)

(8)夜更かしをさせる

(9)休暇旅行に行かせない(気晴らしをさせない)

(10)いつも文句を言って夫をいじめる

 私も講演会の時にブラックジョークとして使っています。もちろん妻にお勧めできる話ではありませんが、男性にはこの逆をすることをお勧めしています。つまり、禁煙・減酒をして適当な運動をすることです。そして、自分の食べ物・飲み物を自分で用意すれば少なくとも毒を盛られる心配はありません。そのような行動が老後の妻が望む「お互いに干渉しないで自由に過ごしたい」に合致し、ある程度居心地の良い空間や時間を保たれるのではないでしょうか?不満のある妻も夫の健康被害になるような行動は慎んでいただければ幸いです。

 最後に「後妻業」のようなとんでもない話の舞台はなぜいつも大阪で、関西弁が飛び交うのでしょうか?関西在住の私としてはまた大阪のイメージが悪くなると若干心配しています。