たかが更年期障害と甘く見ていませんか?

体調不良で苦しむ女性(ペイレスイメージズ/アフロ)

審査員への心無い批判

 先日漫才のチャンピオンを決める大会で、審査員の採点をめぐって様々な論議や批判が広がりました。その批判などを見ると弱気の私などとても審査員などできないと感じました。その批判の中でも、若手の漫才師が女性の審査員に対して暴言を発したことが大きな問題になっています。ライブ配信なので具体的には見ていませんが、ネット情報によると更年期障害を持ち出して批判したようです。本人は事態の深刻さに気付いてすぐに謝罪されたようです。

 このような発言をする男性が少なからずいることは、女性に特有な更年期障害を深刻な病気ではないとか、中年の我儘のように考えているからではないでしょうか?そして、中年の女性が自分の気に食わない言動をした時に、ヒステリーとか更年期障害という言葉を浴びせるのではないでしょうか?

更年期障害とは

 50歳前後になって卵巣の活動が次第に低下して閉経に向かいます。閉経する前後に起きるさまざまな症状の中で他の病気に伴わないものを更年期障害と呼びます。更年期障害の主な原因は女性ホルモン(エストロゲン)の低下ですが、これに年齢に伴う体の変化や精神・心理的な要因、社会文化的な環境因子が複合的に影響することで症状が出ると言われています。主な症状として下記の3つがあります。

1.のぼせ、汗、寒気、冷え症、動悸、胸痛、息苦しさ、疲れやすい、頭痛、肩こり、めまいなどの自律神経失調に関係する症状

2.イライラや怒りっぽいなどの情緒不安定、抑うつ気分などの精神的な症状

3.腰痛や関節痛、嘔気や食欲不振、皮膚の乾燥感やかゆみ、外陰部の不快感など

 検査をしてもホルモンの減少以外にはっきりした原因が見つからないことや、症状が長引くことなどで男性は”誰でも経験するし、命には別条ない“と軽く考えがちです。暴言を発した芸人さんも軽く考えていたのでしょう。そして、イライラや怒りっぽいなどの情緒不安定になることを殊更強調する傾向にあるのかもしれません。

理解してもらえない辛さ

 確かに更年期障害は命に係わるような深刻な病気ではありませんが、症状はかなりきつく、経験した人しかわからない辛さがあります。実際にはっきりした病気よりも症状は強いことも稀ではありません。さらに辛いのは、今回のように周囲の人、特に夫などの男性に理解してもらえないことです。更年期障害の辛さや周囲の無理解でうつ状態になり、生きていくのが辛くなる人も少なからずおられます。そのような状態になると更年期障害も命に係わる病気ともいえるのです。

引き金はストレス?

 更年期障害の理解を得られない背景は先ほど原因を説明したように、単に女性ホルモンが低下しただけでなく、ストレスなどの環境の問題が大きいからです。そのストレスが昔なら嫁姑関係だったかもしれませんが、最近では夫の存在が大きいようです。私の診察の経験から夫のストレスが原因の更年期障害で苦しんでいる妻が多かったことから7年前に“夫源病”という概念を発表しました。男性には大変失礼な話ですが、多くの女性が納得されたようです。

ホルモンとストレスの関係

 更年期障害の難しいところはほとんどすべての女性が中年期に女性ホルモンが低下して閉経を迎えるのに、重い更年期障害で苦しむ人もいれば、全く症状のない方もおられることです。さらにまだホルモンが十分にある40歳前後で経験したり、10年ほど前に閉経したのに60歳過ぎで体調の悪くなる方もおられます。この疑問にストレスとホルモンの関係をシーソーのように示した図で解説しましょう。

 一般に若い時はストレスをホルモンがカバーして問題は起きません(1の図)。閉経後はホルモンが少なくなりストレス予防ができずに症状が出ます、これが一般的な更年期障害です(2の図)。閉経後も快適に過ごす女性はホルモンが減ってもストレスが少ないのかも知れません(3の図)。ホルモンが豊富な若い時に症状が出る人はホルモンでカバーできない程の過剰なストレスにさらされている可能性があります(4の図)。

画像

更年期障害を引き起こすストレスとは?

 若い時の主なストレスは育児でしょう。夫や親に頼れない状況で孤立して育児を行う、いわゆる“ワンオペ育児”が大きなストレスとなって、様々な症状を引き起こすことがあります。この場合は何らかの方法で育児のストレスを軽くすることです。60歳以降のストレスには夫の定年が関係していることが多いようです。“亭主元気で留守が良い“時期には自由な時間を楽しんでいた妻も、生活自立ができていない定年を迎えた夫の世話で自由に行動できなくなり、体調を崩すというものです。この場合は夫の生活自立が重要です。女性の更年期障害のすべてに夫の言動が関係しているわけではありませんが、最近ではかなり大きな要因になっていると感じます。

共感することの重要さ

 がんで闘病している人に向かって心無い発言をする人はほとんどいないのは、その辛さや大変さが色々な情報から理解しているからでしょう。今回の場合は、更年期障害に対する理解のなさからの発言で、同じようなことがうつ病や不安障害で苦しんでいる人にも当てはまると思います。経験した人でないとわからない辛さはありますが、それを想像し、共感できる力を養っていただきたいと思います。