「いい夫婦の日」にあえていい夫婦を目指さないという選択~円満なのに不満という矛盾~

仲の良さそうな熟年夫婦(写真:アフロ)

いい夫婦に関するアンケート調査

 本日11月22日は「いい夫婦」の日です。明治安田生命は毎年「いい夫婦の日」に関してアンケート調査をしています。その結果と私の感覚がかなりずれていたので、今回はいい夫婦とは何かを考えてみたいと思います。まず、いい夫婦の逆は何でしょうか?通常は悪い夫婦となりますが、これでは夫婦で強盗や詐欺を働いているイメージになるかもしれません。多分いい夫婦というのは仲の良い夫婦という意味と考えても、概ね間違いではないでしょう。ではその逆は仲の悪い夫婦ということになります。仲の悪い夫婦の一部はすでに離婚して夫婦ではなくなっているかもしれません。

 明治安田生命の調査では20-79歳の既婚男女を対象に調査しているので、おそらく離婚した方は含まれていないと考えられます。既婚者に離婚経験のある再婚した人も入るのかどうかは不明です。現在は三組に一組の夫婦が離婚する時代ですので、このアンケートは何とか夫婦生活を続けている方のアンケートだと受け取った方が良いでしょう。

調査法をチェック

 このアンケートはインターネット調査で、20歳代から70歳代まで各世代の男女それぞれ135名(計1620名)が回答しています。我々も時々インターネットでアンケート調査を行いますが、回答してくれる人を多く募集登録している業者に依頼するのが通例で、業者は委託された料金から回答者に薄謝(本当に少ないらしい)を支払います。

 インターネット調査はネットを利用できない人の意見が反映されないとの批判もありましたが、最近は高齢者も簡便に使えるようになり、年齢的なバイアスは解消されつつあります。またインターネットで答える人の意見は偏るのではないかとの指摘があるようですが、大きな問題となっていないようです。手間のかかる郵送のほうが、自分の思いを反映したい強い気持ちのある方が回答すると言われています。ただ郵送だと回答率が高いのは高齢者で、若者の回答率は低い傾向があります。このため若者の世代で極端な意見のある数人が回答すると、極端な意見のパーセンテージが跳ね上がり、実態とはかけ離れた結論が導かれる可能性があります。今回のアンケートは各世代135名と揃っていますし、そのような心配はないでしょう。おそらく先着135名で締め切ったのでしょう。即座に回答する人たちにも何らかのバイアスがあるかもしれないと疑い出すときりがないので、ここは素直に調査結果を拝見することにします。

アンケートに見る本音と建て前

 このアンケートでは何と四人に三人が夫婦円満と答えているのです。これは私の感覚とは大きくかけ離れています。私は円満な夫婦など三組に一組くらいだろうと思っていたのに、これはかなりの高率です。しかし、アンケートを読み進むと、生まれ変わってももう一度同じ相手と結婚したいかの質問には42.6%しか同意しませんでした。特に妻の方がそう考える人の割合が36%とかなり少なかったのです。しかも夫の45.7%が妻に不満がなかったのにもかかわらず、夫に不満がないと答えている妻は24%しかいなかったのです。

 このデータから、妻の多くは夫に不満を感じているものの、「円満」や「まあ円満」という枠に収めているのではないでしょうか?実際にこのアンケートでは「まあ円満」と答えた人が45.4%と一番多く、前回の調査よりも増えています。これから考えると。いい夫婦とは「まあ円満」な夫婦であり、その逆はあまり円満でない夫婦ということになるのでしょうか?

 このアンケートではさらに興味深い結果が示されています。夫婦の主導権を握っているのは51.6%が妻で、夫はわずかに12.8%だったのです。この差は年を重ねるに連れて高くなります。つまりこのアンケートに答えた多くの家庭が妻の意見の強い「かかあ天下」ではないのでしょうか?この回答にこのアンケートの重要なポイントがあるようです。つまり「かかあ天下」の方が回答しているというバイアスがかかっているかもしれないのです。

夫婦生活を安定させる魔法のねぎらいの言葉:ありがとう

 私の外来に相談に来る方の多くの例では、夫が経済的に支配し、上から目線で妻をこき使う、いわゆるモラハラ状態になっています。明らかな暴力を振るう訳でもなく、逆に外面が良いのでモラハラが分かりにくいことがあります。ぐ~たら亭主よりも、妻を精神的に支配しようとするモラハラ夫が一番嫌われるようです。そんな夫は妻のやることは当たり前と考えて、感謝の気持ちをもたないので「ありがとう」などの声をかけることはありません。このアンケートでも妻が望むのは夫からのねぎらいの言葉なのです。少しのことでも、「ありがとう」と妻に感謝の気持ちを伝えたら、離婚の予防にもなるでしょう。

本音言い合いストレス発散 「寄り添わない」夫婦に

 今年も三浦友和、山口百恵さんご夫婦が、理想の夫婦に選ばれて13連覇を達成されたようです。理想の夫婦に選ばれたら人前で喧嘩することも、相手の悪口も言えずに体面を気にするようになるので、ある意味気の毒です。夫婦喧嘩の少ない、仲の良さそうな夫婦よりも、喧嘩の多い夫婦のほうが長生きするという研究もあります。仲が良いというのはお互いが我慢しているだけで、ストレスの発散もできずにお互いの本音もわからずに過ごすので寿命が短くなるのでしょう。

 実際にベストカップルとして選ばれた夫婦も離婚で修羅場になったり、浮気や体調不良を訴える方もおられます。有名人も体面を気にして仲の良い夫婦を演じると後が大変です。まあ、お互いが嫌な思いをしないように、生活自立をして適当な距離間を持って過ごすことが夫婦円満を保つ秘訣かもしれません。

結婚には間違った判断力と強い忍耐力が必要

 余談ですがこのアンケートでは結婚相手の多くは職場や学校などの同僚や先輩であり、2年以内に結婚している夫婦が多いという結果です。これは医学的にも理にかなっています。恋愛の時に多く分泌されるフェニールエチルアミンなどの恋愛ホルモンは3年くらいで勢いがなくなってきます。同じ相手と3年以上付き合っていると、結婚する気がなくなるのはある意味当然でしょう。相手をいくら吟味しても粗が目立つだけで、本能的に結婚に踏み切った方が良いでしょう。あとは運任せです。劇作家のアルマン・サラクルーは「人間は判断力の欠如によって結婚し、 忍耐力の欠如によって離婚し、記憶力の欠如によって再婚する」という名言を残しています。つまり、円満な家庭を維持するには「愛」よりも「忍耐力」を鍛えたほうが良いということでしょう。

円満家庭よりも「半円満」家庭を

 このアンケート調査では、四人に三人が円満・ほぼ円満と答えているのに、妻の四人に三人が夫に不満を持っています。つまり、円満なのに不満という奇妙な状態が起きています。ある意味これが一般の夫婦の実態かもしれません。老後の夫は妻にはなるべく家にいて、一緒に趣味を楽しもうと希望していますが、妻はお互いに干渉しないで自由に暮らしたいと望んでいます。このギャップが熟年離婚の原因でもあるようです。テレビなどでは家族円満を強調しますが、あまり無理をせずに半円(50%)くらいの満足感でよいのではないでしょうか?