なぜ妻は夫に殺意を抱くのか?インフルエンザ流行前に知っておきたいワンオペ育児の破綻と対策

病気の妻を看病する夫(写真:アフロ)

熟年夫婦の危機

 妻からの離婚の理由に浮気、酒癖、ギャンブル、暴力、借金よりも上位に来るのは、家事を手伝わない、暴言などの精神的虐待です。最近ではモラハラと呼ばれる夫の上から目線の発言に我慢の限界を感じている妻が多いようです。

病気の時に冷たかったとは?

 今回は10-20位くらいに位置する「妻が病気だったとき、冷たかった」という理由について深く考えてみましょう。これは私が女性の相談にかかわっていてよく聞く理由です。そして、そのために離婚どころか「夫に殺意を抱く」妻が少なからずいます。どのような状況を想像したらよいのでしょうか?

 インフルエンザが流行しているときを考えてください。2歳くらいの子供がインフルエンザで発熱した場合は、当然保育園も休ませて誰かが面倒を見なくてはなりません。双方の両親が近所に住んでいればありがたい話ですが、そのような助けもない共働き夫婦の場合は母親か父親が休んで面倒を見る必要があります。こんな時に男性は「俺じゃ面倒見られないので、よろしくね!」と逃げてしまうことが多いでしょう。予定していた休みなら仕方がないのですが、インフルエンザは突然襲ってきますので、妻にとっても仕事の算段をするのは大変です。一方的に押し付けられる妻は突然仕事をキャンセルして、周囲に頭を下げるだけでなく「できないやつ!」とレッテルを貼られかねません。その恨みだけでも、その後の夫婦生活を危うくしかねません。

ワンオペ育児の産後クライシス

 このようなことが重なると仕事を断念しようと考える妻もいるでしょうし、時間の融通がきく低賃金の仕事を選ばざるを得ない人もいるでしょう。このような子育て時の不満が募って、出産後数年で夫婦間に大きな亀裂が入ることを「産後クライシス」と言って、2012年のNHKの「あさイチ」で特集され有名になりました。その後、産後クライシスの原因として、妻に子育てのすべてを押し付ける「ワンオペ育児」が大きな問題となっています。

 2015年に岡山大学が行った調査によりますと、回答をした353人中、約半数の女性が産後クライシス(出産後2年以内に夫婦の愛情が急速に冷え込む状況)を経験しています。そして、その中でも6割の女性はその状態が持続しているといわれています。残念ながら子供のいる多くの夫婦で、出産後まもなく夫婦の亀裂が入り、それが継続することが判明しています。

熟年夫婦の場合は30-40年前にこのような亀裂が起こっても、小さな子供を抱えて女性が生計を立てるには厳しい時代でしたので、辛抱するしかなかったのでしょう。その恨みを抱えている上に、夫のモラハラが加わり熟年離婚に発展するようです。最近の若い世代は、産後クライシスが即離婚に結び付き、シングルマザーが増えた一因ともいわれています。

妻が殺意を抱くとき

 それでも妻が夫を恨んでも、殺意を抱くほどの強い怒りにはならないのでないかと私は考えていました。インフルエンザを発症するのは子供だけではありません。保育園では一人発症すると瞬く間に広がってしまいます。そしてそれは家庭でも同じです。子供が発症した時に、同時に親が発症する場合もあるでしょう。子供と母親同時に発症した時を想像してみてください。父親が元気であれば、「ママもこの際ゆっくりして!」と気楽なことを言って出勤するでしょう。妻の会社に「インフルエンザで休みます」と連絡すると、最近では「無理するな!ゆっくり休みなさい」と言われるでしょう。しかし、病気の子供と一緒ではゆっくりする時間はありません。当然、子供もつらいのでグズるだろうし、母親にむやみに甘えてきます。それなりの食事も用意しなければなりません。ベッドでゆっくりする暇はなく、子供が寝ている少しの時間に休憩できる程度でしょう。

 これだけ想像しても、かなり辛そうです。妻が病気なのにいつも通り残業をこなしてのんきに帰ってくる夫の言動が一気に夫婦関係を壊滅に追い込むどころか、殺意まで生むようです。

 子供と一緒に寝ている妻に向かって、「俺の飯はどうなっているんだ?」と上から目線で妻を責めるのは一番まずい対応です。その後、命があっただけでもありがたいと思った方が良いでしょう。そう、この言葉こそが最大の地雷、妻の殺意にスイッチをつけるのです。少し気を使った夫は「大変そうだから簡単な料理でよいよ!」と一応優しくしたつもりでしょうが、これもアウトです。

妻子が病気の時にどうするのか?

 ではどうすればよいのでしょうか?少なくとも夕食のことをとやかく言わずに、自分で食べておくことです。妻と子が発熱しているなら、なるべく早く仕事を切り上げて、夕食や子守をカバーして妻がゆっくり寝られるようにするのが一番でしょう。急ぐ仕事がなければ有休をとって、看病すればもっと良いでしょう。

 迂闊にも私は「病気の時に冷たかった」という妻の恨みに対して、あまり実感がわきませんでした。しかし、最近たまたま自分自身でそれを体験したのです。孫がウイルス性の風邪で発熱して保育園を休んだので、仕事のない私が世話をしていたのです。ところが昼から孫の風邪がうつったのか?かなり発熱して、強い倦怠感に襲われました。自分のことだけでも辛いのに、ぐったりした孫の世話はかなり厳しかったです。そんな時に、帰ってきた家族に「ご飯まだ?」と言われたら、殺意を覚えるかもしれないと感じました。体験してみないとわからないこともありますが、少し想像力を働かせればわかることでもあります。

インフルエンザには早めの備えを

 今年はインフルエンザの流行が早く、ワクチンの供給が追い付かないのではないかと言われていましたが、例年並み以上の供給がされる見通しとなっています。流行が長いと免疫力が落ちる恐れがありますので、ブースト効果を期待して2回接種する方が効果的と言われていますが、今年も13歳以上は原則1回接種にしてほしいとの要望が出ています。子育て中のインフルエンザで夫婦関係が破綻しないように、早めの接種が望ましいでしょう。もしワクチンに余裕があれば2回接種も考えておいたほうが良いでしょう。さらに、両親にいざという時に手伝ってもらうように依頼するとか、病児保育を調べておくなどの予防策を練っておいた方が良いでしょう。

 最近、都心では自宅に来て病児を世話してくれる会員制の病児保育も増えてきています。ある程度の期間は子育てにお金がかかるものと覚悟を決めて入会しておくのもよいでしょう。この時も夫が「他人が家に入るのは嫌だ!」などと抵抗すれば、妻の怒りに火をつける事にもなりかねないので、妻の指示に文句も言わずに従う方が得策です。