"The Battle of the Sexes"にみる真の男女平等とは?

ロンドンフィルムフェスティバルでの主演のエマ・ストーンとビリー・ジーン・キング(写真:Shutterstock/アフロ)

全豪オープン閉幕

 先日、テニスの4大大会の初戦を飾る全豪オープンが終了し、男子はレジェンド:フェデラー選手がメジャー20回目の優勝、女子は無冠の女王ウォズニアッキ選手がついにビッグタイトルをつかんだことで話題となりました。今回は日本期待の錦織選手が参戦できませんでしたが、何かと話題が多い大会でした。 

 今回は私も何とか日程を確保して3日間はしっかりと夢の舞台を観戦してきました。私の専門はスポーツではありませんので、テニスそのものについて語ることは控えますが、今回の全豪オープン観戦で「真の男女平等とは?」について考えさせられることがありましたので、あえて皆様に話題を提供いたします。

キング夫人の問題提起

 皆さんはアメリカの偉大な女子テニスプレイヤーであるビリー・ジーン・キングさんを覚えているでしょうか?彼女の本名はビリー・ジーン・モフィットですが、弁護士のラリー・キングさんと結婚した(のちに離婚)ので、今でもキング夫人としての方が有名でしょう(以下はキング夫人と呼ばせてもらいます)。同時代を戦ったマーガレット・コート夫人も有名で、テニス漫画「エースをねらえ」などで〇〇夫人が一時流行しました。

 さて、そのキング夫人が50年前に全豪オープンを制したことを記念して、大会に招かれましたが、大きな問題が持ち上がったのです。実はキング夫人はアスリートとして早くからレズビアンということをカミングアウトしてきたことでも有名です。全豪にはメインコートが2つあり、それぞれにオーストラリアの英雄で年間グランドスラムを2回も達成した、ロッド・レーバーさんと女子グランドスラムシングルス最多優勝を誇るマーガレット・コートさんの名前がつけられています。

 かねてからLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャルならびにトランスジェンダー)の人々に対してコート夫人が差別的な発言をしているということで、キング夫人がマーガレット・コート・アリーナの名称変更を希望すると発言し大きな話題になりました。私にはコート夫人が具体的にどのような発言をしたのかわかりませんが、オーストラリアでの同性婚の合法化に関してコート夫人が反対したことについてはナブラチロワさんも強く非難しているといいますから、かなりの保守派ではないでしょうか?アリーナの名称変更に関してはうやむやのままですが、平等、多様性及び包括を推進することを掲げている主催者側には頭の痛い問題が残されました。

キング夫人の戦い:The Battle of the Sexes

 さて、キング夫人にはLGBT問題だけでなく、スポーツにおける男女格差の問題と取り組んだことでも有名です。今回の観戦ツアーで、私が成田からメルボルンへの機内で偶々見た映画が今回表題に選んだ”The Battle of the Sexes”(性別間の戦い)です。残念なことに日本未公開ですので、この記事を読んで興味があれば後日DVDでも見てください。

 キング夫人が活躍していた時代は、テニスだけでなく多くの競技の賞金などの男女格差がひどかったのです。当時のテニスの女子の優勝賞金は男子の約1/8でした。これに対してキング夫人たちは抗議し、のちに女子テニス協会を立ち上げ、見事に男女の賞金を同等にしたのです。その間に、キング夫人の運動を快く思わなかった元シングルス1位のボビー・リッグスさん(当時55歳)が、キング夫人(当時29歳)に試合を申し込んだというのが「性別間の戦い」として有名になりました。ボビー・リッグスさんは1973年の母の日にコート夫人と試合をして圧勝したことに乗じて、同年9月にテキサスでキング夫人に挑みましたが、結果は4-6,3-6,3-6(5セットマッチ)のストレート負けに終わりました。世界中で9000万人がこの一戦を観戦したといわれ、関心は非常に高かったようです。この勝利は女子テニス界の地位向上に大いに寄与したということで歴史に名を残しました。女子テニス界はキング夫人たちの努力により、1973年に全米オープンの賞金が男女同額になったのを皮切りに、2007年に4大大会として最後となったウィンブルドン選手権も同調しました。

 キング夫人たちの努力が実って、テニス界では男女の賞金が同額になりましたが、未だに多くのプロスポーツ界での男女の収入格差は激しいようです。同じスポーツでも観客の関心度が違う、はっきり言って女子の競技は観客が少ないし、スポンサーもつかないので仕方がないというのが男性側の言い分です。テニスの場合も同じような議論がありましたが、4大大会などでは入場すれば、男女好きな試合を見られるので、はっきりとどちらに人気があるのかを判別するのは困難です。

男女同額の優勝賞金は本当に公平なのか?

 果たして4大大会のテニスの優勝賞金が男女同額は本当に公平なのでしょうか?どちらに人気があるかは微妙としても、男子の試合のテレビの視聴者や放映権料は女子の約3倍であることから、やはり男子の試合の方が関心は高いようです。人気の判別が難しいでしょうが、一番の問題は労働時間(試合時間)の差ではないでしょうか?4大大会ではご承知のように男子は5セット、女子は3セットマッチです。今回の全豪オープンでは男子優勝のフェデラー選手は順調に勝ち上がり、準決勝では相手のけがで2セットなかばで勝利したものの計22セットを戦いましたが、女子優勝のウォズニアッキ選手は17セットの戦いで優勝しました。優勝までの女子の労働力は男子の7割くらいです。

  少し前のデイリー・メール紙の調査では2015年の男子トップのノバク・ジョコビッチ選手の賞金総額は650万ポンド、女子トップのセリーナ・ウィリアムズ選手の賞金総額は546万ポンドでしたが、ジョコビッチ選手は920ゲーム96セットを戦ったのに対して、ウィリアムズ選手は575ゲーム65セットであったといいます。時間で計算するとジョコビッチ選手の賞金は1分あたり1623ポンド、ウィリアムズ選手は1分あたり2262ポンドで明らかに女性の方が時間給は高いことが分かりました。

 この問題に関しては雨宮圭吾氏が2016年に「白黒はっきりつけるのが難しい問題である」と指摘しています。人気の点はさておいても、労働時間からすると私は男性が少し不利なような気がしますが、読者の皆様のご意見はいかがなものでしょうか?