退職を考えるときに気を付けてほしいこと

(写真:アフロ)

退職の陰にメンタルストレス

私の男性更年期外来には大企業の中堅サラリーマンがよく受診する。その多くはメンタルストレスでうつ状態になっている。受診者の4人に1人は漠然と世の中から消えたいという自殺念慮を持っている。死にたいとまで思わなくても、会社を辞めたいとか早期の引退をしたいという。男性自身が相談に来る場合もあるが、状態がおかしいと気付いた妻からの受診依頼の方が多い。嫌がる夫を何とか説得して受診してもらった時はまず退職を思いとどまらすことからはじめる。様々なストレスからうつ状態になり、仕事ができない責任感や人間関係の煩わしさから退職を考えるようになる。自分なりに退職後のプランは考えているものの、第三者が考えるとかなり甘い。冷静な妻はそんなプランではとても生活が持たないと判断して、必死に退職を思い留まらせると共に受診を促す。

うつ状態の時には重大な判断は禁物

うつ状態になった時には少なくとも回復するまでの三か月位は、退職や高額な物品の売買、離婚などは思い留まったほうが良い。治療がうまくいってうつ状態から脱すると、『あの時はなんで退職なんて考えていたのだろう』と本人も不思議がる。メンタルストレスが続くと脳内のセロトニンなどの神経伝達物質が少なくなって冷静な判断ができなくなる。しかも能率が上がらないので仕事を辞めたくなる。手持ちの金や退職金を細かく計算して、今やめても何とかなるという結論に至るが、見通しが甘いので妻はヤバいと感じる。

冷静になるには医療関係者の支援も必要

うつ状態にならなくても、上司との方針の違いなどから感情的になって退職を考えることもある。特に大企業の場合は、その看板の威力がわからずに自分が会社を背負っていて、退職してもどこでも就職できると勘違いして人も少なくない。

普通の医師がビジネスに精通してアドバイスできるわけではないが、唯一できるのが気持ちを冷静にすることである。うつ状態なら抗うつ薬、感情が高ぶって寝られない時には睡眠導入剤などを処方して落着かせることができる。

次の就職先が決まっていない場合は冷静になるまで、なんとか退職を思いとどまってもらう。精神的な回復が遅れている場合には、診断書を書いてしばらく休職することで乗り切ってもらうこともある。

家族やローンが退職の抑止力

妻や子供がいる場合は家族の事を考えて踏みとどまる人も多いが、独身者にとって退職のハードルは低い。精神状態がある程度回復しても、漠然と退職を考えている人には、婚活や身の丈に合ったマンションの購入を勧める。

仕事は元来楽しくないので、給料をもらっていると割り切れれば気持ちも楽になるだろうし、家族やローンなどの負担も退職の歯止めになる。

今回のSMAPの分裂騒動の真相はよくわからないが、少なくとも漠然と退職を考えているサラリーマンにはよい勉強になったと思う。