国民総寿命という概念:長寿は本当にめでたいのか?

(写真:アフロ)

年金積立金は幾ら残っているのか

2017年に消費税を10%に上げる際に、低所得者の負担に対して食料品などの消費税を8%のままにしておく案を公明党の強い主張で自民党が受け入れた。景気もそれほどよくないのに、消費税を必死に上げようとするのは、少子高齢化で社会保障費が”やばい”事になっているからに違いない。医療費の負担も大きいが、なんといっても年金の財源がピンチだ。現在、年金積立金は幾ら残っているのかは定かではない。いくら調べても出てこない(調べ方が悪いからか?)。厚生労働省のサイトにあるらしいが、専門家でも探すのが苦労するらしい。私は確認をとっていないが、優秀なYahooニュースの読者なら探し当てられるだろう?しかも、色々な費用が混ざっているので、よくわからないというのが識者の見解である(鈴木旦さんのブログ参照)。様々な情報を総合すると130兆円位は残っているらしい。

内憂外患の2015年

2015年前半は安保法制で揉めに揉めたが、これは主に対外的危機に対する問題である。仮想敵国がいつ襲ってくるか、国際的な紛争に日本が貢献できるかという、あるかないかの場合に関しての議論である。戦争に巻き込まれたくはないという多くの国民の心情から、法案に対する議論が盛り上がった。

2015年の後半は消費税を上げる際の軽減税率の問題で揉めた。与党でもめたというより、年金や医療の財源がパンクしつつあるのを実感している財務省がなかなか首を縦に振らなかったからだろう。

2015年11月には、公的年金を運用する'''年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が7兆8899億円の赤字に転落した'''と発表した。GPIFは2006年に『年金積立金』を運用して収益を上げる事を目的に設立されたが、従来の運用先が国内債券60%、国内外株式24%であったものを、国内債券を35%まで下げ、国内外株式を50%まで上げるという改革が行われた。その結果、しばらくは運用益が増加していたようであるが、チャイナショックで8兆円近くの損益が出たという。年金積立金を使ってばくちに出たのが災いしたようだ。軽減税率や年金運用の問題を見ているだけで、わが国の社会保障制度がかなりやばい事になっているのは容易に想像できる。

国民総寿命という概念

さて、私の専門は医学なので年金制度の崩壊を平均寿命から考えてみたい。国民総年金が開始されたのは1961年であり、その当時の平均寿命は男性約65歳、女性約70歳である。寿命近くまで働ける、農業・漁業などの一次産業や自営業の人口が減り、サラリーマンが増えて来た頃である。当時の厚生省は、退職後10年ほど保障すれば年金制度は成り立つと考えていたようだ。

しかし、30年後の1990年の平均寿命は男性約75歳、女性約80歳と10年延びてしまった。厚生省などの健康政策が功を奏した結果であるが、予想以上に寿命が延びてしまった結果、退職後20年以上保障する事になり財源が枯渇し始めた。最近は寿命の急激な伸びはないものの年平均0.2歳増えている。1億2730万人の国民の寿命が0.2歳延びると、日本人全体で2546万年延びる。年金受給対象の65歳以上の人口はその約25%だから、約636万年延びる。65歳以上の個々の年金額はまちまちであるが、仮に年100万円支給されていたら、636万年x100万円=6.36兆円、200万ならその倍の年金が余分に必要となる。厚生省が当初予想した寿命を遥かに超えた事が年金問題の核心である。

下の表は約50年後の2060年の平均寿命の予想であるが、現在より4歳位伸びただけである。年平均0.1歳以下の伸びである。1960年からの50年で15歳近く伸びた寿命が、同じように伸び続けると日本は確実に沈没する。高齢者に長生きしないでほしいとは言えないので、自ずと少子化対策に力が入るが予算が不足気味である。新しい年は、医療費と年金の財源を含めて高齢者問題を真剣に考えないと、近い将来、安保以上の大変な事態にになりかねない。

平均寿命の推移
平均寿命の推移