小野日子氏、広報官就任から1カ月 重要会見で見せた2つの独自色とは

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

総務省幹部時代に利害関係者から高額接待を受けた問題で辞任した山田真貴子内閣広報官の後任についたのは、外務副報道官で内閣副広報官経験のある小野日子(おの・ひかりこ)氏。3月3日に辞令を受け、3月5日の菅総理による緊急事態宣言延長記者会見、3月18日の緊急事態宣言解除、と立て続けに重要な記者会見2つを仕切りました。運営方法にはこれまでにない特徴が2つありました。

1点目の特徴は、毎回記者の所属と名前で指名していることです。「朝日新聞の〇〇さん」「読売新聞の〇〇さん」「フリーランスの〇〇さん」と、指名する記者を全員把握しているのです。これまでの広報官は「幹事社からお願いします」「日経さんお願いします」と所属だけでした。安倍政権の長谷川広報官は「その〇〇の服の方」といった指名もあり、丁寧さに欠ける指名でした。小野広報官は、初めて仕切る記者会見から、参加している全ての記者名を把握していたこと、そしてそれはご自身の能力アピールになっていたと思います。記者側も自分の名前を呼ばれて嬉しいはず。聞いている側からすると、毎回媒体名と記者名を2回聞くわけですから(広報官と本人から)、菅総理や周囲の人の記憶に残る効果もあります。名前を覚えることは信頼関係を構築する上で基本になります。

2点目の特徴は記者の指名順序です。1回目の3月5日については、幹事社(通常2社)、大手報道機関、地方新聞社、フリーランスの順番でこれまで通りでしたが、3月18日については、英字メディアが3社指名され、地方新聞やフリーランスも前半で指名されました。英字メディアは、ジャパンタイムズ(幹事社ではありましたが、幹事社2社のうち最初に指名されました)、ウォールストリートジャーナル、ブルームバーグ。しかも最後の方ではありませんでした。なるほど、そうきたか、と思わずうなりました。小野氏のカラーが色濃く出た部分でしょう。また、外国への発信強化といった意志が明らかに見えました。

記者を指名する順序は結構重要で報道陣のストレスになります。小池都知事が誕生した際には、「テレビばかり先に指名されて、新聞メディアは時間切れになるぎりぎり最後で十分質問ができないんだ。これではストレスが溜まる」とぼやいていた記者を思い出します。

3月5日の記者会見は、1時間以上となり、その長さも話題となりました。緊急事態宣言延長という厳しい局面に対して、国民に十分説明する必要があると考えた小野氏の判断だったのでしょうか。そうであれば評価したいと思います。国民が不安な時ほど説明は十分するべきだからです。長すぎる、と菅総理は後で叱責したかどうか気になりますが。

菅総理の3月18日の記者会見も少し振り返ります。この日は、最初に指名されたジャパンタイムズの杉山記者が慌てていたのか、スムーズに質問が始まりませんでした。菅総理も記者が質問態勢を整えるまで待つ場面から始まり、やや和やかなムードでのスタートでした。緊急事態宣言解除というほっとする発表の会見であったことも雰囲気には影響するとは思いますが。

この日の菅総理、メッセージ発信に改善は少しですが見られました。いつもより少し目が開いていましたし、言葉も力強くしようとしていたように見えます。また、フリーランス大川さんからの電子マネー提案についても珍しく「その発想を提言というもので受け止める」と穏やかなコミュニケーション。いつもの型どおり返答ではなく、驚くほど柔軟で好感が持てました。

表情と声に詳しい元俳優・自己演出プロデューサーの山口和子氏は、3月18日の会見について「下を向く時間がかなり減ったと思ったので、時間をはかってみたところ、約15分の冒頭スピーチ中下を見たのは約40秒。プロンプターの使い方に慣れてきたのか、よい傾向だと思います。最後の『お願い申し上げます』のお辞儀は、メリハリがあり気持ちが伝わりました。ただ、滑舌は相変わらずで、特に、自治体、情報発信などサ行が聞き取りにくいです」とコメントしています。

少しずつでも改善していく様子を見ていると、国民とのコミュニケーションは大切にする意志があることは伝わってきます。また、女性初の広報官は道半ばで辞職となりましたが、あきらめずに女性を引き続き登用したことは評価したいと思います。