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【犬の未来を考える】志村けんさんが愛した元捨て犬「ちび」ちゃんは朝日山部屋に。命を繋ぐとは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:アフロ)

2020年3月29日に、志村けんさん(享年70)が亡くなられていますが、志村さんの「動物を愛する」精神は、脈々と受け継がれています。

日刊スポーツによりますと、志村さんが愛していた元捨て犬のちびちゃんは、大相撲の朝日山部屋に2017年4月に引き取られています。ちびちゃんの現状を見ながら、「犬の未来」について考えましょう。

大相撲部屋でのちびちゃんの様子

「日本相撲協会公式チャンネル」志村どうぶつ園で志村けんさんと全国を旅したワンコが登場!相撲部屋のニャンコとワンコ【朝日山部屋編】より

ちびちゃんは、平成25年から日本テレビ「天才!志村どうぶつ園」に出演し、志村さんと全国を旅し、一躍有名になった元捨て犬です。

番組に出演しないときは千葉県松戸市内のドッグスクールにいましたが、ドッグスクールの関係者から声をかけられ、朝日山親方が部屋に迎え入れることになったそうです。ちびちゃんは、引き取られてからもうすぐ5年がたつところで、もう10歳になっています。

つまり、ちびちゃんは、志村さんが生前のうちから朝日山部屋で暮らしていたのです。志村さんは、動物好きで知られていました。番組で一緒に出演したちびちゃん面倒を見られないときは、ドッグスクールに預けて、その後、里親まで見つけていたのです。

上のYouTubeの動画でもわかりますが、ちびちゃんは、朝日山部屋の力士たちにもかわいがってもらっています。この部屋は、動物を大事にして動物愛護に熱心なようで保護猫もいます。

ちびちゃんは、10歳ということもあり加齢による白内障になっていますが、獣医師に相談し体に負担がかかる手術は、回避して点眼などで様子を見ているそうです。

3月27日まで大阪で春場所が開催されていたので、ちびちゃんは以前にいたドッグスクールに預けられていましたが、今ごろは、力士の大部屋にある専用の布団で寝ているのではないでしょうか。

朝日山親方は「うちの力士たちは、生活の一部として、ちびがいることを当たり前にとらえています。動物を大事にすれば、いいことがありますよ」と話されています。

志村さんが、愛された元捨て犬は、いまも温かく育てられていると聞くと心が温かくなります。

ちびちゃんは、命を繋ぐことの大切さを教えてくれている

写真:イメージマート

高齢者のペットの飼育が問題になっていますが、高齢者がペットを飼うことは、体を動かすことに繋がりますし、自分以外に面倒を見るものがあることなどから生活を豊かにするといわれています。

犬や猫の平均寿命は、約14年以上と長生きしてくれるようになりました。その一方で、高齢者がペットを飼って終身飼育ができるのか、そして最後までペットの世話ができるのか、ということが問題になっています。

飼い主が高齢だと、急な入院や施設に入ることなどもあります。もしものことがあったとき、ペットは置き去りになる可能性もあるのです。

そのときに、そのペットをだれが飼うのかということが問題になります。

動物を引き取ることになるときの理由のひとつに、飼い主が高齢で面倒が見られないというものがあります。

しかし、このちびちゃんのように、5歳になっても里親が見つかる世の中になれば、こんな嬉しいことはありません(里親は子犬や子猫をほしがる傾向があるので)。

もちろん、ちびちゃんは、志村さんにかわいがってもらって人気番組に出演していた犬なので、特別なのかもしれません。それは、わかっていますが、このちびちゃんの物語を知ることで、命を繋ぐ大切さを少しでも理解していただければ、高齢者がペットを飼いやすくなるのではないでしょうか。

志村さんが亡くなられましたが、3月29日で三回忌を迎えたいまでも志村さんの動物を愛する精神がちびちゃんを通して受け継がれています。

有名人が、動物愛護に熱心だと、世の中の人に普及しやすいですね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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