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盲導犬の白いハーネス、お散歩中に”黄色いリボン”をつけたワンコを見たらどうしたらいいの?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:PantherMedia/イメージマート)

コロナ禍で犬や猫を飼いたい人が増えています。

コロナの感染者が減っていますが、やはり以前のようにはいかず、人と話をするときは、以前より距離をおきますね。そんななか、ペットの温もりは癒やしになります。動物が好きだけれどなかなか犬や猫を飼えない人は、街で犬を見ると触れたくなりますね。

現実的には、どの犬にも簡単に近寄っていくと問題になることもあります。今日は、Twitterで話題のお散歩中に”黄色いリボン”をつけた犬を見たらどうするか。そして盲導犬を見かけたときのマナーについて話をします。

イエロードッグプロジェクトとは?

みんなのイエロードッグプロジェクト サイトより
みんなのイエロードッグプロジェクト サイトより

Twitterで話題になっていました”黄色いリボン”をつけた犬のことをご存じでしょうか。

日本ではあまり知られていませんが、みんなのイエロードッグプロジェクトのサイトによりますと、その黄色いリボンの意味は「そっとしておいてね」「触りに来ないでね」というサインなのです。健康上の問題やしつけトレーニングの最中など、社会復帰訓練中のワンコたちがストレスなく過ごせるよう配慮したもので、まだ歴史は浅く、2012年にスウェーデンで発祥したといわれています。

犬にあまり詳しくない人は、犬は群れで生活する動物なので飼われて散歩しているのを見ると近寄ってもOKと思っていませんか。

しかし、犬には犬の事情があるのです。”黄色いリポン”をつけた犬を見たら、遠くから見守ってあげてくださいね。たとえ、あなたに向かってシッポを振ったとしても。

なぜ、”黄色いリボン”をつけた犬に近寄ってはダメか?

それでは、なぜ”黄色いリボン”をつけた犬に近寄ってはダメなのか?の理由を考えていきましょう。上のポスターにもあるように、犬にも色んな個性の子がいるのです。どの子も近寄ってくることや触られることが、大丈夫というわけではないのです。それでは、具体的に見ていきましょう。

病気の犬

・犬も人も好きなのだけれど、呼吸器(気管虚脱など)や心臓(僧帽弁閉鎖不全症など)の疾患を持っていて興奮すると悪化する恐れがあるので、おだやかに暮らす必要があります。

・膝蓋骨脱臼などの関節の病気を持っているので、その子が興奮して飛びつくと悪化する可能性があります。

人が苦手な犬

いまは街の中には、保護犬もお散歩しています。全部の保護犬ではありませんが、なかには元飼い主に虐待された子もいます。そんな子なら、知らない人は苦手な子が多いです。

怖がりな犬

お散歩は好きだけれど人や犬とコミュニケションを取るのが苦手な子もいますし、人にたとえると、人見知りということになります。

襲いかかるおそれのある犬

犬の中には、飼い主を守るために近寄ってくれば、襲いかかってくる子もいます。飼い主には、甘えてフレンドリーなのですが、そうじゃない人には、牙をむく子もいます。

犬が苦手な犬

人は大好きだけれど、犬は苦手な子もいます。お散歩中に人に会うのは、いいけれど犬に会うのは、勘弁してほしい子もいるのです。

黄色いリボンは犬たちからの「近付かないで、そっとしておいてね」のサインです。それに取り組まれている団体が『みんなのイエロードッグプロジェクト』というものです。

黄色いリボンがマタニティマークやヘルプマークと同程度認知されることを目指しています。そのように、黄色いリボンをつけた犬もみなさんに理解される世の中が早くきますように。

ヘルプマークとは?

東京都福祉保健局 ヘルプマークのサイトより
東京都福祉保健局 ヘルプマークのサイトより

人の使われているヘルプマークについて、少しお話をしておきます。

外見では人の事情はわかりにくいです。たとえば、義足や人工関節を使用している人、重い病気の人、妊娠初期の女性などは、ときには援助や配慮を必要とすることがあるので、周りに知らせることで援助を得やすくなるよう作成されたヘルプマークです。このヘルプマークをつけて外出すると、援助が受けやすくて安心ですね。

盲導犬の白い胴輪を見たら

提供:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

黄色いリボンをつけた犬の意味は、まだ浸透していませんが、盲導犬が体につけている白い胴輪であるハーネスをつけているときは、ユーザーが安全に街を歩けるように仕事をしているので、近寄ってはいけないことは割合に理解されています。

人のために懸命に働いている盲導犬を目にすると、温かい言葉をかけたくなりますね。そうするのではなく、遠くから見守ってあげましょうね。近寄ってしまうと、盲導犬の気が散るのでよくないですね。心の中で「人のために働いてくれてありがとう」というだけにとどめておきましょう。

人にも外見からは計り知れない事情を持っている場合もあります。犬も見た目にはわからない事情を持っているかもしれませんね。黄色いリボンをつけた犬だけではなく、どんな犬でも急に近寄ったりせずに、飼い主に「触ってもいいですか」とひと声かけてからにしましょうね。犬にも思いやりを持てる社会になると、人にも思いやりを持てますね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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