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紺野あさ美さんの次男が「ヘアターニケット」に。ペットも最悪、壊死する恐れも

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

朝日新聞によりますと、元アイドル・アナウンサーの紺野あさ美さんが、10月に次男がヘアターニケット症候群になったとみられるとブログで報告したと伝えています。その話題を呼んでいるヘアターニケットとはどんなものなのかを見ていきましょう。

筆者は、犬がこのヘアターニケットになったのを診たことがあるので、その辺りを解説していきます。

紺野さんの次男の足の指にヘアターニケットが

紺野さんの生まれたばかりの次男の足の指2本に毛が絡まり、指先が腫れ上がっていたといいます。この状態をヘアターニケットといいます。

紺野さん自身が、その毛を取り除きましたが、赤ちゃんの指にまだ、毛が残って血が止まっていたら大変なことになると病院を受診されたそうです。紺野さんの赤ちゃんは、毛が取れて症状は快方に向かっているそうです。

このヘアターニケットの原因はよくわかっていませんが、産後、母親は女性ホルモンの関係で抜け毛が多くなり、赤ちゃんなどの柔らかい指や首などに毛が絡まってしまうことがあるのです。

ヘアターニケットとは?

写真:CavanImages/イメージマート

ヘアターニケットは英語で「髪の止血帯」を意味します。

髪や糸などが体の一部に巻き付き、血流が悪くなる現象のことです。ヘアは毛で、ターニケットは英語で止血帯の意味です。

最悪の場合、患部が急性虚血により壊死(えし)して指などの切断に至ることもあるということです(2019.08.01の日本小児科学会雑誌によりますと、受傷部位としては足趾(そくしで足の指の意味)が5例、陰唇が2例、舌が1例であったそうです)。痛みなどを自ら訴えるのが難しい乳幼児の場合は発見が遅れる恐れがあるのです。

2019年12月、堺市女性は保育所で、市子ども相談所(児童相談所)の職員に、当時2歳の長男の首の左側に赤く細い線状の傷があったので虐待の疑いがあると突然告げられ、長男と引き離されることが起こりました。

両親は身に覚えのないできごとだったので、複数の法医学者を訪ねてこれは、ヘアターニケット症候群だということを証明してもらい、無事にわが子と暮らせるようになりました。

まだまだ日本では、ヘアターニケットは認知が少ないようです。週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)で連載中の漫画『プラタナスの実』でもヘアターニケットについて掲載されました。泣きやまない乳児が登場し紹介されています。同じようなことが、犬でもあったのでそのことを次に紹介します。 

ネグレクト状態の犬で

写真:Paylessimages/イメージマート

人間の場合は、ヘアターニケットが起こる理由がよくわかっていないのですが、犬の場合は、筆者はネグレクト状態の犬でこの症例を診ました。それでは、実際にあった症例をお話しします。

マルちゃん(仮名)は、シニアのシーズ犬でした。飼い主のTさんは「マルちゃんは元気がなく脚を引きずっているし触れると痛がるので診てほしい」と言われました。

マルちゃんは、目ヤニがたくさんついていて、そのうえ全身が毛玉だらけで、瘦せていました。あまり世話をしていないけれど、やっぱり亡くなったら困るので連れてきました、という感じに見えました。

マルちゃんの後肢から化膿した酸っぱい嫌なニオイがしていました。筆者が触ると痛がるので、鎮静剤を注射してから毛を刈ってみると、その部分に長い飼い主のものと思われる髪の毛が巻きついていたのです。

そのため、髪の毛が時間をかけて皮膚を拘束することによって、皮膚が壊死し筋肉と少し白い骨が見えていました。つまり毛が巻きついて、ヘアターニケットになっていたのでした。

(治療)

マルちゃんの治療は、以下のようにしました。

□患部の周りの毛刈り

□生理食塩水で洗浄

□抗生剤の注射

□栄養価が高いフード

など

時間はかかりましたが、脚を切断することがなく完治しました。患部は綺麗に毛が生えそろうまでには時間がかかりましが、事なきを得ました。

現在は、室内飼いの子が割合にいるし、長毛の犬や猫が多いのでこのようなヘアタニーケットになる子が稀にいるのです。

室内に飼い主の髪の毛が落ちていないこと、そして犬や猫のブラッシングを毎日することで、このようなヘアターニケットは防ぐことができます。

コロナ禍で、犬や猫を飼った人も多いと思いますが、彼らは「脚になにか着いていて、痛い」とか言ってくれません。

徐々に髪の毛が皮膚を縛って血液障害を起こして、このようなヘアターニケットになることもあるので観察してあげてくださいね。

犬や猫のある部分を触ると怒るとか、歩き方が普段と違うなどがあれば、動物病院へ連れて行ってあげてくださいね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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