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SNSで人気の「ハムスター」...過去の悲しい出来事を知っていますか?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

コロナ禍で犬や猫を飼う人が増えています。

犬や猫を飼いたいけれどちょっと無理なので、場所を取らないし手頃なのでハムスターを飼おうと思ってSNSを眺めている人もいるかもしれません。「おもちみたいでかわいい」「液体みたい」などとコメントが付き丸みのあるハムスターの写真や動画が人気がありますね。それを見ると、確かに癒やされます。

しかし、筆者は、ハムスターを飼った人は最後までちゃんと飼ってくれるのかなと不安がよぎります。というのは、2000年が少し過ぎた頃は、筆者は毎日、ハムスターの診察をしていました。その頃、ハムスターのアニメがあり、ハムスターの存在が知れ渡り人気に火がつきました。ところがある悲しい出来事が起こり、一気にハムスターを飼う人が少なくなりました。

ハムスターのことを理解して飼育すれば、悲しい出来事はほとんど起こらないと思います。今日は、その出来事について解説します。

ハムスターに関する悲しい出来事は「アナフィラキシーショック」

2000年過ぎぐらいからハムスターをペットとして飼う人が増えて、ハムスターにかまれて「アナフィラキシーショック」という激しいアレルギー反応を起こす例が各地で相次ぎました。

具体的に見ていきますと、2000年4月、広島市に住む12歳の女の子が、ペットのハムスターに指先をかまれて数分後に呼吸困難を起こし意識不明になりました。救命治療が功を奏しその後、回復しました。この頃から、全国でハムスターにかまれたことで、「アナフィラキシーショック」を受けた人が出始めました。

さらに2004年には、埼玉県に住む40代の男性がハムスターにかまれた直後に持病のぜんそく発作を起こして心肺停止に陥り、その日のうちに搬送先の病院で亡くなりました。原因は、傷口からハムスターの唾液(だえき)が体内に入って「アナフィラキシーショック」に似た症状を起こし、ぜんそくの発作を誘発して呼吸困難になり亡くなったのです。

もちろん上述の例は、強い「アナフィラキシーショック」ですが、軽いものは以下のものがあります。

クシャミや鼻水

全身のじんましん

腹痛

息切れ

動悸(どうき)

めまい

けいれん

などです。このような症状がおきれば、すぐに病院にいってください。

ハチ刺されや薬により「アナフィラキシーショック」はよく知られていましたが、わが国では2000年以前は、ハムスターにかまれたことによる「アナフィラキシーショック」の報告はありませんでした。

このような悲しい出来事が起きて、ハムスターを飼う人が少なくなっていました。しかし、最近ではSNSでよくハムスターを見かけるので、取り扱いは大丈夫かなと危惧しています。

ハムスターはどんな動物?

写真:choa/イメージマート

ハムスターはどんな動物なのかを見ていきましょう。

□齧歯類

□体重は、ジャンガリアンハムスターは30-50g、ゴールデンハムスターで80-150g

□平均寿命は2-3年

まれに5年生きた個体などもある

□大きな頬袋を持つ

□夜行性

夜中に回し車が動くので、夜に寝ることができず飼育放棄の原因にもなる

□雑食性

□1年を過ぎたぐらいから腫瘍ができやすい

犬や猫に比べて寿命が短いですが、そのことも理解して飼ってあげてくださいね。

ハムスターによる「アナフィラキシーショック」に遭わないために

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

ハムスターにかまれて死ぬことがあるなんて危ないといって飼っているハムスターを危険視するのはやめてくださいね。

「アナフィラキシーショック」の仕組みを理解すれば、極端に怖がる必要はないです。以下のことに気をつけてくださいね。

飼育前に家族でアレルギー体質の人がいないかを確認する

アレルギー持ちでない方も頻繁にかまれるような接し方をしない

掃除はこまめにする

換気を頻繫にする

ハムスターを触った後は必ず手を洗う

ハムスターにかまれて「アナフィラキシーショック」を起こす場合は、ハムスターが病気なのではなく、飼い主の体質の問題です。

飼い主がかまれないように気を付ければ深刻な事態は避けられます。ハムスターは比較的おだやかな動物ですから、嫌がるようなことをしなければそうかまれたりしません。

初めて、ハムスターを飼う人は衝動買いをせずに、事前にどんな動物か理解してから飼育しましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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