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ひろゆき氏が「スコティッシュフォールドは『病気の猫』」と一石を投じたのはどういう意味か?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:CavanImages/イメージマート)

現在、たびたび話題に上がるひろゆき氏が、スコティッシュフォールドを「病気の猫」といって、人気の猫について一石を投じてくれました。

ひろゆき氏が話題にしたスコティッシュフォールドの問題点を詳しく解説します。まずは、ひろゆき氏の発言内容を見ていきましょう。

ひろゆき氏のスコティッシュフォールドへの発言内容とは?

写真:PantherMedia/イメージマート

中日スポーツによりますと、ひろゆき氏は自身のTwitterで、一部の報道内容を添付して、以下のように発信されています。

「スコティッシュフォールドは『猫種』と捉えるのではなく、『病気の猫』と見るべきだ。そんな猫が日本では人気ナンバーワンというのは、かなり深刻な状況と言える 折れ耳は、骨軟骨異形成症の症状。重症化すれば、骨瘤ができ、歩く際に脚を引きずるようになる病気だ」

とあります。

SNSの写真や動画でスコティッシュフォールドをよく見かけますね。YouTubeを見れば、この猫がよく登場しています。スコティッシュフォールドの特徴を知らない人からすれば、なにが「病気の猫」なのだろうかと思うかもしれませんが、その辺りから見ていきましょう。

おじさんのような座り方でかわいいのは実は「スコ座り」

筆者の知人が撮影 立ち耳のスコティッシュフォールドでスコ座りしている写真
筆者の知人が撮影 立ち耳のスコティッシュフォールドでスコ座りしている写真

はじめに、いま飼われているスコティッシュフォールドはこの猫の特性を知って、しっかり終身飼育してもらいたいと考えています。いまから、猫をほしいと思っている人は、スコティッシュフォールドとは、どんな猫か知ってくださいね。

SNSの写真で、「座り方がかわいい」とか「おじさんが座っているみたい」というので話題になっています。この座り方が「スコ座り」といわれています。

スコ座りとは、別名は「おやじ座り」ともいわれていて、猫が人間のように後ろ足を投げ出す座り方です。そんな座り方をする猫を見るとスコティッシュフォールドが断然多いですね(他の猫の中にはスコ座りする子もまれにいます)。

なぜ、このような座り方をするのかといえば、変形した関節の痛みを和らげるため、足首などに負担がかからないように座っているのではないかといわれています。

なぜ、スコ座りするようになるの?

日本で絶大な人気を誇っているスコティッシュフォールドは、1960年代に生み出されたまだ歴史の短い猫種です。

スコティッシュフォールドは、スコットランドの折れ耳の猫という意味です。しかし、折れ耳だと骨軟骨形成不全症が強く出るので、最近は折れ耳ではない立ち耳のスコティッシュフォールドがたくさんいます。

耳の特徴だけではなく、短めの首、丸い顔、丸みを帯びた体も、かわいいので、人気なのでしょう。折れ耳のスコティッシュフォールドは、筆者はすぐにわかりましたが、立ち耳のスコティッシュフォールドだと飼い主にいわれないとわからないこともあります。

この折れ耳というのが、問題なわけです。実は折れ耳は、骨軟骨形成不全症の症状のひとつで、症状に程度の差はありますが、前脚や後ろ脚に骨瘤(りゅう)ができて引きずって歩くようになるなどし、鈍痛に苦しみ続けるのです。

筆者が臨床現場で骨瘤がない猫を採血などで保定をすると極端に嫌がる子は、このスコティッシュフォールドが多いです。これは、関節に痛みを持っている子が多いので、少し持ち方が悪いと痛がるのです。

この疾患は、優性遺伝します。治療で治ることはありません。消費者もいくら立ち耳だからといってもスコティッシュフォールドはこのような背景があることを知っていることは大切だと思います。

本当に関節痛があるの?

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

うちにいるスコティッシュフォールドは、機嫌よくしているので関節痛があるのかしらと思っている人もいるでしょう。おとなしいし高いところに上らないので飼いやすいと考えているかもしれません。もしかしたら、それが関節痛のせいかもしれないのです。以下がその症状です。

□高い場所にジャンプできない

□高い場所から降りられないので、ちょこちょこ降りる

□高い所から飛び降りる前に悩む

□敏捷ではない

□動きが緩慢

□飛び上がったら、失敗する

□足を引きずる

□座り方はいわゆるスコ座りをする

などがあれば、関節痛などを持っている可能性があることを知ってくださいね。

見た目のかわいさより猫の「生活の質」を優先してほしい

ヨーロッパ諸国などでは、スコティッシュフォールドは繁殖を行うべきでないとの立場をとっています。

その理由は、痛みを伴う骨軟骨形成不全症などの重大な病気を引き起こすことがわかっている遺伝子変異をもっているので、倫理的な問題があるからです。猫の痛みは、飼い主には、わかりにくいですが、関節炎などの病気を発症して痛みは生涯続くからです。もちろん、鎮静剤などはありますが、根本的な治療法はなくこの遺伝子を持つ猫の交配を避ける以外に回避手段はないのです。

いまスコティッシュフォールドを飼っている人やSNSを見てスコティッシュフォールドがかわいいと思っている人は、このような猫だということを知ってほしいと思います。そして、いまいるスコティッシュフォールドは、このような疾患を持っていることを知って正しくケアをしてあげてくださいね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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