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「ネコにマタタビ」の謎が解けた! 他に身近な、ニャンコ様を陶酔させる植物とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:PantherMedia/イメージマート)

愛猫家の間ではよく知られている「ネコにマタタビ」。

うちの子は、マタタビを与えるとなぜだかクネクネするのよね、と思っている飼い主は、多いはずです。この謎解きの鍵を岩手大や京都大、名古屋大などの研究チームが実験で突き止めました。今日は、マタタビをはじめとするネコを陶酔させる植物を紹介します。

ネコがマタタビに反応する謎とは?

ネコは、マタタビに反応しますが、イヌは反応しません。その謎を岩手大や京都大、名古屋大などの研究チームが解き明かしてくれました。

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

マタタビの枝

 チームは、マタタビの葉をすりつぶして、含まれている成分を分離し、1種類ずつネコに匂いをかがせてみた。すると、「ネペタラクトール」という成分に反応を示すことがわかった。

 この成分を含ませたろ紙を、ネコがいるおりの壁面や天井に置くと、ネコは地面に転がらず、頭を壁面や天井にこすり付けた。ネコの反応は、ネペタラクトールを体に付けるためだとわかった。

(略)

 チームは、ネペタラクトールの性質を調べ、蚊を寄せ付けない効果を持つことも突き止めた。そこでネコの頭に塗って蚊30匹を放つ実験もした。すると、蚊が頭に止まる数は、何も塗らない場合と比べて半減した。チームは、マタタビ反応は寄生虫フィラリアや病気を運ぶ蚊から身を守る重要な行動だと結論付けた。チームは、ネペタラクトールを使った新たな蚊よけ剤の開発につなげたいとしている。

 蚊よけの目的と、ネコがマタタビで酔ったようになる陶酔状態の関連性はわかっていない。チームは、ネコがマタタビをかいだ時の脳内の状態を血液検査で調べ、いわゆる脳内麻薬の濃度が上がっていることも確かめた。

「ネコにマタタビの謎、蚊よけ成分付けるため 酔うのは?」 より

要約すると以下です。

・マタタビの成分の「ネペタラクトール」が蚊からネコの身を守る

・マタタビの成分によって、脳内麻薬の濃度が上がる

ネコにマタタビの粉をあげると、体に擦りつけてクネクネしていますね。そして、反応の強い子は、よだれを垂らして陶酔感を味わっています。こんな粉がどうして効果があるものかと不思議です。ネコが変わったようにすら見えますものね。

全部のネコが反応するわけではないところも面白いですが。このように反応するのは、マタタビ以外にもあります。それを見ていきましょう。

マタタビ以外にネコが陶酔する植物とは?

知られているのは、キャットニップキウイです。

・キャットニップ

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

キャットニップ

キャットニップという植物です。日本名はイヌハッカと呼ばれています。西洋では、マタタビよりキャットニップの方が有名です。ネペタラクトンというネコを興奮させる物質が含まれているのです。

ネペタラクトンは、マタタビと同じように、ネコの体をクネクネさせます。まるで発情期の雌ネコのようです。それとゴキブリや蚊などの昆虫へ作用することも知られており忌避剤の役目もあります。

・キウイ

写真:UTS/イメージマート

キウイ

キウイは、マタタビ科マタタビ属の植物です。

キウイの木を植えていると、ネコが寄ってきます。根を掘るネコもいます。マタタビ科なので、ネペタラクトールがあるのでしょう。

ネコとマタタビの謎が解明されて、ネコにやさしい蚊の予防薬ができるといいですね。

ネコが蚊に刺されてなる病気

写真:PantherMedia/イメージマート

外に出ている子は、蚊に刺されると以下のような病気になるおそれがあります。

・モスキートアレルギー

モスキートは蚊のことで、刺されることでアレルギーを起こすのです。症状が出るのは、被毛の薄いところです。そのところは、蚊に刺されやすいからです。具体的には、主に耳介、目の上の被毛の薄いところです。

「症状」

・痒み

・掻くので、そこが化膿

蚊に刺されると治療しても完治は難しいです。ネコを外に出さないことです。

・フィラリア症

イヌの病気として知られていますが、実はネコもフィラリア症があります。フィラリアの幼虫を吸血した蚊に刺されることによってネコの体内に侵入します。そして成長した成虫は肺や心臓の血管に寄生し発症します。

なぜ、あまり知られていないかは、ネコの場合はイヌほど、フィラリアが体に寄生しないし、イヌのように血液検査で簡単にわからないからです。

まとめ

ネコの体に優しく、そしてネコが喜ぶマタタビの成分ネペタラクトールを使った新たな蚊よけ剤が開発されるといいですね。

あまり知られていませんが、前述の通り、ネコも蚊に刺されることは、よくないです。このような成分の薬ができれば、ネコの病気を防ぐことができますね。優秀な研究者たちの実験によりこのようなことが、解明されるとネコ好きの者としては、本当に嬉しいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は栄養療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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