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あなたが新型コロナに感染したら愛犬をどうする? 実例をもとに臨床獣医師が解説

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:ロイター/アフロ)

1月7日、1都3県を対象とした緊急事態宣言が発令されました。新型コロナウイルス感染症の流行は爆発的な勢いをみせています。今後、他の地域でも拡大される可能性があります。

そこで飼い主が、新型コロナウイルスに感染した場合、愛犬をどうするか? を考えてみましょう。まずは、私たちの病院であった例からお話しましょう。

飼い主が新型コロナウイルスに感染 愛犬をどうしたかの1例

写真:mon_printemps_fleuri/イメージマート

新型コロナウイルスに感染したとき、愛犬(愛猫)をどうするか? は飼い主にとって重要な問題です。行政の指導では、ペットホテルか信頼できる知り合いに預けるようにいわれています。しかし、現実問題として、あなたが感染してしまった以上、なかなか預かってくれるところを見つけるのは難しいですね(東京周辺なら、ペット保険の会社アニコムホールディングスが預かってくれますが)。

私たちの病院もその犬を隔離しているスペースがなくどうするのか? を飼い主と行政と私たちと話し合いました。以下がレアなケースですが紹介します。

(状況)

デイケアーセンターに通っている高齢者が新型コロナウイルスに感染。家族は濃厚接触者ということで、PCR検査を受けました。すると、家族全員が陽性でした。症状の重い人は、病院に入院し、ひとりだけ症状がない人がいました。

(行政との話し合い)

その症状が出ていない人が、自宅待機で犬の面倒を見ることになりました。

その犬の特徴

・小型犬で外に散歩に行かなくても大丈夫

・持病はあったが、内服だけでOKだった

・内服は1カ月分あった

・フードが少し足りなかったので、親戚の人が病院に買いにきて、待機者と接触しないよう、玄関に置いた

(犬との接し方)

・マスクと手袋をして犬の世話をする

・犬と距離をおく

・必要な時以外は、犬と接しない

犬は猫と比べて、新型コロナウイルスの感受性が低いです。

AVMA(アメリカ獣医師会)は、飼い主のくしゃみや咳で飛び散った唾液などが、ペットの被毛に付着したとしても、被毛に吸着されるためペットには感染しにくいと発表しています。

上記のようなことをして、犬をホテルや知人に預けず、症状がほとんどなかった飼い主は、二回目のPCR検査が陰性になりました。

このような例は、レアなケースで、飼い主の症状が軽く、近所に親切がいたのでよかったのですが、そうでないときは、飼い主は入院になり犬の面倒をみられなくなりますね。

一般的に、行政としては、以下のように指導しています。

飼い主が新型コロナウイルス感染症による入院・宿泊療養の際、ペットの飼育は

写真:Paylessimages/イメージマート

入院や宿泊療養となっても、ご家族などにペットの世話をお願いができない場合は、以下のようになります。

・知人の方に預ける

・ペットホテルを利用する

ペットの受渡し方法

相手に感染させないために注意が必要です。

1、預かり先の方に自宅までペットを受取りに来てもらう場合

飼い主がペットをケージなどに入れて玄関先に置きその後に、受取り側が置かれた場所に向かいます(相手と直接話すなどの接触を避けるようにしてください)。

預かる人はマスク、メガネ、手袋、ガウンなどを装着し、ビニール袋を2枚以上持参して下さい。そして、預かったキャリーバッグの外側や持ち手をアルコールなどで消毒してください。

持参したビニール袋を2重にして、マスク、メガネ、手袋、ガウンなど入れてください。

2、ペットホテルなどに預ける場合

知人の方などに代理を依頼し、1と同様に接触を避けてペットを引き渡し、ペットホテルまで送っていただいてください。

ペットから人に新型コロナウイルスが感染した事例は、いまのところ報告されていません。

相談先について

飼い主が新型コロナウイルスに感染したり、PCR検査を受けて陽性が判明したときのペットの対応がわからないときは、以下に相談してください。

・各行政の動物愛護センター

・お住まいの地域を担当する各保健所

※東京近郊の人は、アニコムが無償で預かってくれます

新型コロナウイルスに感染した方からペットをペットホテルやあなたの家で預かったら

・シャンプーは必ずしも必須ではありません

世界で8000万人以上(1月10日現在)の感染者が出ていますが、いまのところ、ペットの被毛を介した感染報告はありません。AVMAは「必ずしもシャンプーを必要としていない」と報告しています。

それでも、念のためにシャンプーするときは、マスク、メガネ、手袋などを装着することをおすすめします。

・お世話する場合は、マスク、手袋、メガネをして、終わったら、手指の消毒をしましょう

・14日間は隔離した方がいいでしょう

隔離して入る場所や飼育用品は次亜塩素ナトリウム液(0.05%)などで消毒しましょう。

・適当な距離を保ちましょう

キスをするなどの濃厚接触は、避けましょう。

飼い主が事前にすべきこと

・フードや内服の常備(できれば1カ月以上 余裕を持って)

・かかりつけの動物病院の連絡先をメモしておく

・なかなか難しいですが、信頼できる方に相談するなど、もし新型コロナウイルスに感染したら預かってもらえるところを探しておく

今後の課題

写真:Paylessimages/イメージマート

新型コロナウイルス感染は、爆発的に増えているいま、だれが感染してもおかしくない状況です。そんなとき、飼い主が愛するペットを安心して預けられる施設を行政は作る必要があります。

これからも今回のような感染症により、パンデミックが起こることが予想されます。そのときに備えて、今後、考えておくことも大切ですね。

ペットは、いまや家族の一員です。そんな子を残して、病院や宿泊施設にいけないので、風邪っぽくてなんだか怪しいなと思っても検査を受けないなんて考えてしまうと、飼い主を命の危険にさらしますね。

飼い主になにかあったときに、ペットをどうすべきかは新型コロナウイルスが終息しても考えなければならない課題ですね。ひとまず、飼い主は、愛するペットのためにも新型コロナウイルスに感染しないように、不要不急の外出を自粛しましょう。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は栄養療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医師さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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