悪徳ブリーダーによる残酷な出産の現実…獣医師資格がない人の帝王切開手術が横行?

(写真:アフロ)

コロナ禍でにわかペットブームになっています。小規模なペットショップだと、子猫や子犬を入荷することも難しくなっているほどです。連休中にペットショップを覗きに行きました。子犬や子猫が並んでいるショップは、多くの人で賑わい、魔法をかけたように輝き、お客さんに抱っこされていました。

消費者に、その子たちが、どのようにして産まれたかを考えている人は、ほとんどいないでしょう。ウインドーの張り紙には、そのようなことは書いていなく、種類と生年月日ぐらいですから。犬は、安産のイメージがあるので、普通に陣痛が来て、出産していると思っているかもしれませんね。

しかし、現実は、繁殖用に飼育されている犬猫は、母体に負荷がかかりやすい帝王切開をされていることが多いのです。それを踏まえて、環境省は、一部業者による劣悪な飼育を防ぐため、来年6月施行の改正省令で、「帝王切開は、獣医師に行わせる」と明記しました。今回は、帝王切開手術について考えてみましょう。

小泉環境相が動き、改めて「報告書」公表

 こうした声を受けて、小泉環境相が動いた。検討会でいったん取りまとめられた案が変更されることは、普通はない。だが8月31日、環境省は改めて「報告書」を公表した。

 そこには、犬の出産回数規制が盛り込まれていた。これまでは「メスの交配は6歳まで」という規制だけだったのに、「生涯出産回数は6回まで」とする規制があらたに加えられたのだ。さらに、獣医師資格をもたない繁殖業者による帝王切開が横行していた問題についても、「(帝王切開は)獣医師に行わせる」とする規制に踏み込んでいた。

出典:数値規制で「犬の生涯出産回数6回まで」 踏み込んだ小泉氏、さらなる「前進」を期待

小泉進次郎環境相は、熱心に「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」を行い、何度も動物愛護関係者からの聞き取り調査をしています。

今月の初めに、筆者は悪徳ブリーダーによる残酷な繁殖の現実… 国の新指針、犬の生涯出産上限6回は適正か? を書きました。反響も大きく、悪徳ブリーダーによる帝王切開についての情報が多数届くようになりました。

上記の記事にある獣医師資格をもたない繁殖業者による帝王切開が横行していた問題を読んでびっくりしました。帝王切開手術を、獣医師以外の人も今までやっていたために新しく、帝王切開手術は、獣医師だけが行えると法律に明記されます。

まずは、帝王切開とは、何か考えましょう。

帝王切開手術とは

普通分娩は、経膣分娩です。メスなどはいらないですね。帝王切開手術(ていおうせっかいしゅじゅつ)は、子宮切開によって胎児を取り出す手術方法です。

獣医師資格を持たない人が帝王切開手術するとは?

帝王切開は、獣医医療で、そして手術です。

私は、獣医師以外の人が帝王切開手術をしているのを見たことはありません。うわさで聞いたことがある程度です。しかし、わざわざ帝王切開手術は、獣医師だけが行えると法律に明記するということは、獣医師でない人がやっていたという事実なのでしょう。

法律的にも、もちろん獣医医療を獣医師以外が行うのは、違法行為です。そもそもその時点でアウトですね。それを前提に、獣医師資格を持たない人がやることの問題点について考えてみましょう。

・獣医学的知識の人が帝王切開手術をするとき、感染症はどうする?

帝王切開は、腹部にある子宮を切開して、赤ちゃんを取る出すことです。滅菌した器具をつかって、術式も無菌的に行わないと感染症を起こしやすいです。母体は、手術のためストレスなどで免疫力が落ちているので、感染症になるリスクは高くなります。獣医師がした場合でも術後、血液検査をして、感染症になっていないかきめ細かにチェックします。

・獣医学的知識の人が帝王切開手術をするとき、出血などをしたときの対処方法は?

妊娠中に、胎児に栄養を与えるために、子宮に関係する血管は太くなっています。そのため、術式を間違えると大量出血になり、母体が命の危険にさらされます。大量に出血が起こり、ショック症状になった場合、獣医師資格を持たない人がした場合、たいへん危険です。

・麻酔薬、鎮痛剤の使用は獣医師資格の持っていない人が使うと薬事法に違反!

麻酔薬の中には、麻薬に指定されているものがあり、それは、厳重な管理なもとに、獣医師が使用します。麻薬の免許を持っていない人が使うことは、麻薬及び向精神薬取締法などに違反をしています。

一般的にペットはどんなときに帝王切開手術をするか?

・短頭種

顔の平たい犬、ブルドック、フレンチブル、ボストン・テリア、パグ、シー・ズー、チンなど、猫はヒマラヤン、ペルシャ、エキゾチックショートヘアーなどですが、頭が大きく、産道から出ることが難しいために、帝王切開手術になりやすい種類です。

・母親が小さい

チワワやティーカッププードルなどの骨盤が狭い犬は、難産になりやすいので、交配した日を計算して帝王切開手術をされているケースが多いです。それでしか、出産ができないケースは、そもそも出産には向いていないので、こういう子たちは、交配をさせるべきではない、と筆者は考えています。しかし、SNSでよく見かけるように、小型犬は人気になっています。

・胎児の数が1匹など少ない

犬猫は、胎児が2匹以上で、複数いることが一般的です。しかし、中には1匹ということもあります。そのときは、胎児が子宮の中で大きく成長し過ぎることがあり、検査やエコー検査などをして、事前に帝王切開手術を決めることもあります。

・陣痛が弱い微弱陣痛

出産予定日が来ているのに、陣痛が弱く、母犬(母猫)が、産む気配がない場合は、帝王切開手術をすることもあります。

・胎児が子宮の中で死亡などの胎児の異常

一般の動物病院でも、最近はエコー検査ができるので、胎児の心臓が動いているかどうかわかります。胎児の心臓が動いていない場合は、母体に影響があるので、帝王切開手術をする場合もあります。

帝王切開手術のデメリット

犬猫の出産は、一般的には、経膣分娩です。

でも、母体と胎児のことを考慮して、無理な場合は、獣医師が判断しています。帝王切開手術は、子宮を切開することなので、その部分がやはり、切開していない子宮より弱くなります。妊娠するということは、子宮が膨らむことなのです。ざっくり説明すると、たとえば、子宮を風船だと考えてください。膨らむということは、それだけ、風船は薄くなりますね。子宮も同じようなことが起こるのです。一度、切開している子宮は、もちろん回復はしていますが、その部分が弱い、脆いのです。そのため、何度も帝王切開手術をして妊娠をすると、それだけ母体にリスクがあるのです。

まとめ

今回の改正の数値規制で、犬の生涯出産回数は6回までとなりました。しかし、帝王切開手術は、獣医師だけ行うことと明記されましたが、帝王切開手術を6回も行って、母体が安全かは、問題の残るところです。消費者が、より小型の犬を求める傾向が強いので、骨格の小さい犬に妊娠を強いるため、余計に帝王切開手術で生まれる子が増えるという現実もあります。

新しい家族として、犬や猫を迎えたいという人が増えることは、動物好きの私には、嬉しいことです。その一方で、どのような母親なのだろうか、ということに思いを馳せていただく想像力も持ってもらいたいものです。ひょっといたら、子犬や子猫を産む工場のような劣悪な環境でひどい扱いを受けているのかもしれないのです。

法律が、なぜ、そのように変わるのかを考えることで、ビジネスに使われる犬猫たちの心身の健康を守れるようになると信じています。繁殖をリタイヤした犬猫が、新しい里親に行くのを多く目にしますように。産むためだけに生きていた子たちが、犬らしい、猫らしい生活を送ってほしいものですね。