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高価な人気猫のメインクーンがペットショップで大安売り… その裏にはどんなリスクが?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

動物が好きな人が、ペットショップに入って「大安売り」状態の猫がいれば、なんとかしようと思います。「このまま売れ残ったら、この子の命はどうなるのだろう」と心配になります。そして足繁くペットショップに通ってしまい、ついに見かねて買ってしまうかもしれません。しかし、購入するとき、その猫にリスクがあることも覚悟して迎えてあげてくださいね。「こんなはずでは、なかった」ということにならないためにも。

メインクーンといえば、ペットショップで20~30万円の価格で販売されることが多い猫種です。専門ブリーダーのサイトを見ると、50万円近い高値が付いていることも。そんなメインクーンを5万円で購入した女性がいます。生後6カ月になっていたとはいえ、破格の値段…。

出典:ペットショップで“大安売り”されていたメインクーン、なにか事情が?店員は「おとなしい」と言うけれど…

メインクーンとは

メインクーンは、猫の中でも大きな種類で、「穏やかな巨人」とも呼ばれる猫です。猫の中では、賢く玉を投げると持って帰ってくるような犬的な面もあります。少し毛が長く外見はアライグマに似ています。

長い間 ペットショップにいる子のリスクとは?

生後6カ月になっても売れない猫や犬は、ペットショップにとっては、悩みの種です。それで、値段をダンピングしてケージの中に並べられています。猫好きが見ていると、「ずっとここで飼ってもらえるのか?」「早く飼い主がついてほしい」と祈りにも似た気持ちを抱きます。その気持ちは、大切なのですが、ずっとペットショップにいる子は、以下のリスクを持っている子が多いのです。

・栄養失調

血液検査で、総合タンパク質(TP)、アルブミン(ALB)などを検査するとよくわかります。体重が軽いな、と思ったら、血液検査をしてもらいましょうね。

・低体重

血統書付きの子は、標準体重がわかります。その3分の1ぐらいの子が多いです。

・食が細い

成長期のときに、しっかり食べさせもらっていないので、胃なども小さなままの子が多く、少量しか食べられません。多くあげようとすると、吐く子もいます。臨床をやっているとよく食べる子の方が元気な子が多いとわかりますね。

・骨密度が低い

すぐに骨折する子もいます。レントゲン検査をすると、張り子の虎のように骨がスカスカの子もいます。骨が折れやすい子も多いので、高いところから飛ぶ行動は、控えた方がいい子もいます。

・発育不全

脳や心臓などの生命の維持に必要なところには、優先的に栄養が届きます。でもそうじゃないところに栄養がいかず、毛ぶりが悪いとか、発情がなかなか来ないなどもあります。

なぜ、このようなことが起こるか?

消費者は、ペットに「可愛さ」や「幼さ」を求めてしまいがちです。どうしても購入してもらいやすい時期が生後2、3カ月前後です。その間に売れればいいですが、全部の子がそういうわけにはいきません。時間は流れています。通常通りの食事量を与えていると、子猫、子犬でなくなり、成猫、成犬に育ってしまいます。それでどうするか? 食事量を減らすわけです。必然的に小さな子になります。見ためはかわいいかもしれませんが、上記のようなリスクを持っている可能性の子が増えるわけです。

長い間 ペットショップにいる子のメリットとは?

長い間ペットショップにいた子は、リスクばかりではありません。いいことも多くあります。

・聞き分けがよく、人なつっこい。

ペットショップに長い間いる子は、自分がずっとここにいるべきではないことを理解するようです。いい飼い主を見つけなければ、ということを学習していきます。多くの人に抱っこされている間に、人なつっこい子になりがちです。そして、いままで経験上、このような子は、天真爛漫というより人の顔色をうかがうという傾向があります(飼い主のもとで長い時間を過ごすと性格が変わり天真爛漫になる子もいます)。

・ケージに入っていてもおとなしい

幼い頃から、ケージに入っています。それが日常なので、ケージを嫌がりません。車での移動や災害時のとき、どうしてもケージに入る必要があります。普段から入っていない子は、ケージトレーニングが必要です。ケージに入ることがストレスになる子もいますから。でもペットショップに長い間いる子はその点は大丈夫です。

まとめ

人の勝手で、犬や猫は、購入されやすい時期があります。あまり好きな言葉ではありませんが、物ののように「売れやすい期限」のようなものが存在するのです。時間がたち、その時期が過ぎた子たちは、大安売り状態になる現実があります。日本の消費者が「ペットショップで子犬や子猫を買うのはよくないね」「保護犬や保護猫の制度を活用しよう」というようになればいいのですが、まだ、そこまでいっていません。

「売れ残ってかわいそうだから」といって購入してみたら、病気があり動物病院代がかかるということもあります。そんなことも含めて、ひとつの命をず~っと愛して、寄り添ってあげてくださいね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は栄養療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医師さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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