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ペットを襲う「受動喫煙」や「3次喫煙」のリスク 法改正を機会に知ってほしい問題点とは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

受動喫煙防止をうたった改正健康増進法の全面施行が4月1日から行われます。原則的に店舗や施設などにおいて、室内では禁煙です。ただ、それだけでペットの健康が守られるわけではありません。この機会に「タバコとペット」の健康被害について考えましょう。「タバコ」はペットを命の危険にさらすこともあります。そのことを解説します。

副流煙と主流煙

タバコの煙は、肺の中に吸入される「主流煙」。

そして、火のついた先端から立ち上る「副流煙」があります。有害物質は副流煙の方が多いと言われています。この「受動喫煙」が問題になります。タバコを吸わないペットが「副流煙」に触れるので健康に害を及ぼすのです。

  

 

ペットの受動喫煙とは

受動喫煙とは 飼い主など、喫煙者のタバコの煙を浴びることです。ペットは、受動喫煙にさらされると、病気になりやすいです。小さい体で、 タバコを直接口から吸う主流煙に比べ、フィルターで保護されていないためです。厚生労働省によりますと、有害物質は主流煙よりもニコチンは2.8倍、タールは3.4倍、一酸化炭素は4.7倍も多くなります。また発がん性のある化学物質であるベンゾピレン、ニトロソアミンなどもあります。これらを多量に体の中に取り込むことになります。

3次喫煙

「3次喫煙」という言葉をご存知でしょうか。

これはタバコの副流煙が衣服や壁、カーテン、絨毯などに付着して、その残留物が再び直接・間接的に被害をもたらすというものです。犬や猫は、家飼いの子が増えています。飼い主が、ペットの前でタバコを吸わなくても喫煙者の服や髪にタバコの副流煙がついています。抱っこされることで、彼らの被毛についてしまうのです。それを舐めるので、口からタバコの成分が入っていきます。

空気清浄機や換気扇があっても危険

「自宅に空気清浄機があるから大丈夫」「換気扇の下なら大丈夫」と思っているかもしれません。

しかし空気清浄機は、粒子状物質を除去できますが、ガス状物質は全て除去できないのです。換気扇にはたいした効果がなかったのです。

やはり副流煙が、服や絨毯、カーテン、ソファ、壁紙に染み込みます。それが「残留受動喫煙」としてペットの健康に害を及ぼします。

猫の方が犬より危険度は高い

犬も猫もグルーミングといって、毛づくろいしますが、猫の方が懸命にします。それで、いくらペットの前で喫煙しなくても飼い主の体や毛についているので、被害が起こるのです。最近のペットは室内飼いなので、以前より余計に影響を受けやすいのです。

口腔内や鼻腔内のがんで特にリンパ腫に

タバコを吸っている飼い主のペットは、リンパ腫になりやすいといわれています。

口腔内や鼻腔内のがんにもなりやすいのですが、一番影響を受けやすいのは、リンパ腫です。私は、喫煙しないのですが、飼い主と話していると、ニオイでその人はタバコを吸っているかどうかがわかります。ペットたちはゲージに入っているので、そこにタバコのニオイがついていて、家族に喫煙する人がいるとわかります。

がんだけではなく、心臓循環器系、呼吸器系、皮膚系、アレルギー、目の炎症なども起こりやすいです。

「ポイ捨て」で、野良猫に危険が

タバコを「ポイ捨て」する人たちがいます。雨が降って水たまりにタバコの吸い殻が浮かんでいる風景を見た方もいるでしょう。水たまりに投げ捨てられるとたばこは溶け出し、ニコチンを多く流出します。野良猫は、外の水を飲むことが多く、もしそれを飲んでしまったらどうなるでしょうか。当然中毒を引き起こすでしょう。

人が作りだした野良猫が、そんなことでまた悲劇を生まないように、吸い殻の処理をきちんとしましょうね。

まとめ

飼い主が、ペットの前でタバコを吸わなくても副流煙が、家や飼い主の体についていて、それを体に取り込んでしまいます。それで、リンパ腫などのがんになるリスクが高くなります。愛猫、愛犬のために、禁煙をしてあげてくださいね。筆者は、ペットのがん治療を多くしています。個人的には、飼い主の喫煙は本当に止めていただきたいです。

参考サイト

住 宅 密 集 地 における犬 猫 の適 正 飼 養 ガイドライン - 環境省

犬猫などペットに対するタバコや化学物質の影響に注意しましょう

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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