虐待を受けていた柴犬ダイちゃんが救出され、人間の愛を知り心おだやかになった実話

(写真:アフロ)

動物虐待のニュースが増えていますが、シニアの犬で、病気のある子、性格に問題のある子だけを積極的に保護している人がいることをあなたは、知っていますか。

柴犬のダイちゃんが、「愛」を手に入れたのは、13歳(推定)になってからでした。飼い主からの長きに渡る虐待を経て、一時的に預けられていた動物管理センターから電話が入り、大阪に住む田中さん(仮名)が引き取ったからです。田中さんは、シニアの柴犬を積極的に何頭も引き取っているのです。「いまから、連れていくので、診ていただけますか」という連絡を受けました。ダイちゃんは、目を伏せたくなるような状態でやってきました。

ダイちゃんの保護されたときの様子

田中さんは「こんな子ですが、最期は、自宅で看取ってあげたいと思っています」といわれた。外見からでも、疾患が多く、多額の医療費がかかりそうだし、なかなか懐かない子の面倒を見るのは、そう簡単なことでない。全てを承知の上で引き取った田中さんに敬意を払いながら、私は診察をしていました。

ダイちゃんの様子

・慢性の下痢

・皮膚炎

・元飼い主に虐待かネグレクトを受けていたようで、噛む。

・噛んで攻撃的なので、犬歯を半分に削られていた。

 (歯が当たっても痛くないように)

ダイちゃんの治療

・血液検査などの結果から、アレルギーがあったので、魚のタンパク質だけフードに変更

・手作り食などの食事療法

引き取った当時は、部屋中にペットシーツを敷きつめて、田中さんは世話をされました。治療と世話のかいもあり、ダイちゃんは、だんだん下痢も治り、下痢が治っていくのに伴い、毛もフサフサになり、顔も丸くなり、目もおだやかに、ほとんど噛まなくなりました。

なぜ、ダイちゃんは過去に虐待受けたかわかるの

ダイちゃんの場合は、犬歯4本が全部、半分に削られているので、この子は、噛んでいたのだとわかります。そうじゃない場合も以下のような一定の行動をします。

・獣医師は、注射や患部を触るなど、痛いことをするので、そのときに噛まれるのは、理解できます。ただ、見ているだけでも襲いかかる子もいます。何もしてないとき、噛む子は虐待を受けた過去を持っている可能性が高いです。

・顔の前にたまたま手を近づけときに、目を閉じ、耳を伏せる。

よく頭などを叩かれていると、顔の近くに手を持っていっただけで、このような行動をして、叩かれるのを避けようとします。

・情緒不安定

このようなことから、ものいわぬ子たちを相手にしていますが、行動を見ながら過去を推測します。

虐待を受けた子のケア

・時間をかけてゆっくり接してあげる。

・数年、かかるかもしれませんが、虐待を受けた期間、強さによって、違ってきます。

・温かい寝床や美味しい食事、清潔な水などをおきながら、世話をしていると、彼らとの距離がだんだんと近くなります。

・病気になったときに、懸命に世話をすると距離がより縮まります。

・虐待やネグレクトされた子たちは、人間は信用できないものと思っているので、その考えを変えることは、時間と根気がいるのは当然でしょう。

ダイちゃんの晩年

田中さんの元でダイちゃんは、小さい頃から飼ってもらっていたように、仲良く診察にやってくるようになりました。目が優しくなり、診察中でも「噛む」という気配を見せることもなくなりました。数年して、ダイちゃんは、腺がんを患いましたが、手術もして、そして、術後のがん治療もして手厚い治療をされました。保護犬だから、お金をかけないということはなかったです。最後は、脳の疾患で、寝たきりになりましたが、最期まで、看病をされて、ダイちゃんは、人間の温かみを知って、天に召されました。田中さんは、「最期ぐらい、安らかに温かいところで逝って欲しかったのでね」と静かに話されていました。

まとめ

猫ブームで、外猫に、血統書付きの子や人懐っこい子が増えていると聞きます。犬のしつけといって、虐待をしているニュースを見る度、なんて人間って、勝手な生き物だろうかと、自分が人間であることが嫌になることもあります(私は、長い間、獣医師で臨床をしているため、動物は、決して裏切らないし、そして信頼関係ができるとゆらぐことはないと思っています)。

そんな人間の中に、田中さんのような人を見ると、崇高な心に触れて、心が洗われます。犬や猫も心があり、人間のしていることをちゃんと理解できているのですから。