高齢化時代の水害被害をみると・・・

ジオラマ模型で見る都市水害(石垣撮影)

高齢化時代の自然災害は?

近年、自然災害が頻発していますが、その拡大要因としては、地球規模の環境変化、都市化および高齢化の進展があげられます。わが国では、現在、高齢化率が25%を超え、2050年には40%に達すると予測されていて、高齢化社会における災害対策のあり方が喫緊の課題となっています。図は、1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災および2012年のハリケーンサンディにおける被災者の年代別割合を示したものです。図をみると、いずれの自然災害においても60代以上の犠牲者が大半を占めています。阪神・淡路大震災では建物倒壊による被災、東日本大震災では津波による被災、ハリケーンサンディでは高潮による被災であり、被災原因は異なりますが高齢者の被災割合は高く、高齢者避難の重要性が再確認されます。なお、高齢化率がわが国の約半分のアメリカでも高齢者の被災が多いことから、高齢化以外の要因も考えられます。

大規模自然災害による被災者の年齢構成(防災白書および災害報告書データより作成)
大規模自然災害による被災者の年齢構成(防災白書および災害報告書データより作成)

水害被害の実態と高齢化は?

水害による高齢者被害の実態を、2009年から2011年に発生した水害による犠牲者について、新聞4紙の記事から、災害名、年齢、被災場所、被災状況を読み取り、重複する内容を除いて取りまとめた結果から、被災原因について整理すると、図のように土砂による被災が38%と最も多く、洪水による35%を上回っています。なお、この結果は、2009年の中国・九州北部豪雨と台風10号~27号、2010年の梅雨前線に伴う豪雨と奄美豪雨、2011年の台風12号による紀伊半島豪雨災害を対象とした17県36市町村での被災記事によるものです。

水害による被災原因
水害による被災原因

対象とした36市町村の72%の26市町村が全国平均の25%を超えていますが、兵庫県佐用町を除き、高齢化率と被災者の高齢者率(65歳以上)は対応しているようです。なお、佐用町では、家族で避難途中に流された非高齢者の存在が被災者の高齢者率が低くなった原因です。被災原因別の高齢者率をみると、図のように、屋内で土砂による被害にあった、あるいは、屋外で濁流に流された高齢者が多いことが分かります。このような被害を軽減するため、高齢者の水害時における安全な場所への早期避難の重要性であることを示しています。

被災原因別の高齢者数
被災原因別の高齢者数

高齢者の避難は?

以上示したように自然災害により多くの高齢者が犠牲となっています。これは、水害常襲地であっても同様であり、水害経験者の高齢者であっても被災経験を活かすことができないほど水害形態が変化していることが原因と考えられます。2004年10月の台風23号による由良川の水害調査では、水害常襲地の高齢者が、これまでの水害時の経験から1階の荷物を2階へと移動している間に1階が水没して犠牲になりました。加齢に伴う動作速度や体力の低下への配慮、高齢者のみによる共助体制など、高齢者の避難について、多く問題が山積しています。さらに、降雨が短時間に集中するという環境変化がもたらす安全避難に必要な時間(リードタイム)の減少についても考慮が必要です。高齢者を含めた減災対策として、住民と行政機関(市町村、県、国)のそれぞれが持っている災害情報の共有化(地域情報、水害経験、浸水シミュレーション結果等)が必要であり、「いつ、だれが、どこで、何をするか」という個々のタイムラインの確立が不可欠です。現在、避難準備情報が発令され、高齢者など要援護者の避難が促されており、早期避難が命を守る唯一の方法です。