溢れた水が地下街に流れ込むと・・・

高齢者を想定した階段避難実験(京都大学との共同研究) 石垣撮影

何分ぐらいで浸水が始まるのか?

道路冠水が始まって水深が出入口の高さを超えると、地下街に流れ込んできます。大阪梅田地下街の出入口の道路面からの高さを調べた結果、約6割が30cm以下でした。豪雨時に下水が溢れて浸水する場合、1分間に約2~3cm程度の割合で水深が増えて行くと言われています。道路面から30cm高い出入口では、15分で水が入り始めることになります。多くの出入口には、浸水を防ぐための止水板が設置されています。また、過去の浸水や解析結果から、どこの出入口から入り始めるのかが分かっていますので、対応は可能です。しかしながら、記録的な豪雨が発生した場合や近くの川が溢れた場合には、複数の出入口から地下街に水が入ってくると、対応が間に合わなくてことがあります。その時、安全に避難できるのでしょうか?

=流れに逆らって安全に避難できるのか?=

自力で安全に避難できる目安 石垣作成
自力で安全に避難できる目安 石垣作成

写真は、京都大学との共同研究の中で、防災研究所にある実物大の施設を用いて出入口から階段上を流れるケースの実験映像です。装置は、一段の高さ15cm、奥行き30cmの一般的な階段が20段(一階分)と10mの通路が再現されています。最上段の水深を地上水深と想定して変化させることにより、安全に階段を上れる限界について実験をしました。地上水深10cmでも階段上の流れは秒速2mになり、30cmで秒速4m、50cmで秒速6mに達します。洪水の時の川の流れに相当する速さです。これは、階段が25.6度という急勾配なので、下に行くほど加速されるためです。このような状態の階段を流れに逆らって上る時、流れの速さと水深で決まる力が両足に働きます。その力は、靴や服装によって変わり、素足とスニーカにズボンでは約1.7倍の違いがあります。足を滑らせたり、戻ろうとして足をすくわれたりすると、流されてしまいます。人は後ろや横からの力に弱いのです。この装置を用いた実験結果から、流れのある階段から避難する場合の危険性を判断する図を作成することができました。図に年齢や性別により異なった曲線が描かれています。流れの速さ(流速)と水深の組合せが曲線の下にあれば、比較的安全に避難ができるという目安が分かります。重要なことは、水深がわずか10cmであっても流速が3m以上になると危険であることです。この結果は、浸水した道路を避難する場合や川での水難事故についても適用できます。このように、流れ込んでくる階段を上って避難するのは危険ですので、浸水していない階段から地上に避難するべきです。

以上のように地下街が浸水した場合の危険性ですが、地下街の下層に地下鉄駅があるところでは、最悪の場合、浸水した水は地下駅に流れ込んだ後、地下トンネルを通して隣の駅まで広がって行くとことも考えておくことが必要です。