環境少女の警告「第6の大絶滅」のトバ口にいるのは本当か

(写真:ロイター/アフロ)

 国連の気候行動サミットでの発言が注目を集めた16歳の少女グレタ・トゥンベリだが、彼女が言った「我々は大絶滅のトバ口にいる(We are in the beginning of a Mass Extinction)」が衝撃的だ。人類や生物種が大絶滅に直面しているのは本当だろうか。

白亜紀末に続く大絶滅か

 地球が徐々に温暖化しつつあるのは事実だ。その大きな原因の一つに、人類の存在や経済活動などがあるという説も正しいのだろう。20世紀に入る前頃から、地球規模で工業化や開発が進み、人類の人口も増え続けているからだ。

 20世紀の半ば頃には化学物質の排出などによる環境への汚染が問題になり、二酸化炭素の濃度が上がるとともに地球が温暖化すると警告が発せられ始める。環境汚染と温暖化が本格的に国際的な課題になるのは、オゾン層の破壊が取り沙汰された頃の1988年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が設立されてからだ。

 その後、定期的にIPCCの悲観的な報告書が出され、各国は世界気候会議や地球サミットを開いて対策を協議するようになる。だが、主要排出国と低排出国、途上国の間で利害が対立し、先進各国も数値目標で一致点が見いだせず、具体的な解決に向かえないまま、時間だけが経ってきた。

 一方、米国のトランプ大統領などがその代表だが、依然として地球温暖化や二酸化炭素の排出に関し、懐疑的な立場を取る勢力が発言力を持ち続けている。そうした各国の態度に対し、激烈な言葉で批判しているのが、温暖化による直接の被害を受ける若い世代の代表のような存在になったスウェーデン人のグレタ・トゥンベリだ。

 彼女の言動が契機になり、若い世代が学校を休み、自国政府に気候変動対策を求める「未来のための金曜日(Fridays for Future)」運動が世界中で巻き起こることになる。

 トゥンベリは2019年9月23日、国連の気候行動サミットで演説し、政治家に代表される大人たちを厳しく批判したが、その中の言葉に「我々は大絶滅のトバ口にいる(We are in the beginning of a Mass Extinction)」というものがあった。彼女はまた「我々は第6の大絶滅のただ中にいる(We are in the midst of the Sixth Mass Extinction)」とも発言し、事態は切迫していて一刻の猶予もないと警告している。

 この「第6の大絶滅」というのは、恐竜が絶滅した前回の大絶滅が第5回目(約6600万年前、恐竜は鳥類になって生き延びたという説あり)であり、その次の大絶滅という意味だ。種の多様性が失われ、気候変動が起き、地球環境が破壊されつつある現在こそ、まさに大絶滅の入り口、いやすでに大絶滅の中に入っているとトゥンベリは言っていることになる。

第6の大絶滅説

 研究者が現在を大絶滅の時代であると考え始めたのは、1990年代の終わり頃だ。米国の自然史博物館は、米国生物科学協会(the American Institute of Biological Sciences)の会員を対象に「次の千年における生物多様性(the Biodiversity in the Next Millennium)」という調査を行い、その結果を1998年4月20日に発表した。

 この調査によれば、次の1000年で地球の生物多様性は大きく損なわれ、多くの研究者はそれを知っているが、政府や大衆は危機に関して過小評価しているという会員が多かった。こうした調査や議論を経て、現在が大絶滅、つまり第6の大絶滅の始まり、もしくは真っ最中なのではないかと言われ始める。

 2000年には英国の科学雑誌『nature』に、生物多様性が変わることで何が起きるかを述べ、人間の活動が第6の大絶滅のトリガーになると警告する論文が掲載された(※1)。論文では、政府や国際機関のみならず、地域や市民レベルで対策にあたらなければ、この危機を乗り越えることは難しいだろうと述べている。

 その後、米国の自然史博物館の研究者が継続して調査をするが、しばらく第6の大絶滅はそれほど話題にのぼらなくなった。1997年の京都議定書から2000年代に入り、2001年に米国が京都議定書の誓約国から離脱したものの、2005年から京都議定書が発効し、約10年間の目標ができたことも大きかったのだろう。

生物多様性と個体数の激減

 もっとも当然だが、その間も生物の大絶滅は進行していたようで、まず環境変化に脆弱な両生類の調査研究報告が2008年に出される(※2)。世界にいる6300種類の両生類の1/3以上が絶滅の危機に瀕し、中でも200種類以上が深刻な状況にあるという内容の論文で、気候変動による感染症と新たな捕食者、そして環境汚染が両生類の個体数維持や種の多様性確保に重要な悪影響を及ぼしているという。

 昆虫についての調査研究報告もある。その論文は、1989年から2016年までの27年で、ドイツの生物保護地域の飛翔性昆虫の数が3/4以上減少したという内容になっている(※3)。夏の半ばにはさらに昆虫の数が減り(最大82%減)、受粉を昆虫に頼る植物や昆虫を捕食する動物の多様性にも深刻な影響を与えるだろうというのだ。

 昆虫の減少は数だけでなく種の減少にも及ぶ。最近、昆虫種の40%以上が絶滅の危機にあり、中でもチョウやガの仲間(Lepidoptera)、ハチの仲間(Hymenoptera)、カブトムシなどの甲虫の仲間(Coleoptera)、水棲昆虫の仲間が危ういという論文が出ている(※4)。

 もちろん、鳥類や爬虫類、哺乳類などの多様性も失われつつある。なんとなく我々の中には、生物はゆっくりと絶滅していくような印象があるが、実は急速に個体数と生物多様性が減少しているという論文(※5)があり、特に陸上の脊椎動物がまさに第6の大絶滅に陥っているという。こうして「第6の大絶滅」という言葉が再びよく使われるようになった。

 特に、大型の生物が、人類の活動のせいで絶滅の危機に瀕しているようだ。人類を含めて生態系の頂点に位置する生物同士が争い、その結果として人類によって絶滅させられようとしているということになる(※6)。

 ただ、これらの研究報告のほとんどは、生物の絶滅の実態については詳しく述べているが、その原因が人為的な二酸化炭素の排出とまでは明言していない。生物種の絶滅の原因は多種多様であり、地球に起きた過去の大絶滅の原因についても結論は出ていないようだ(※7)。

 地球が温暖化し、生物の多様性が失われているのは確かだが、その主な原因が人類の活動による二酸化炭素排出のみによるものかどうかは議論のあるところだろう。いずれにせよ、我々を含む地球上の生物が第6の大絶滅のトバ口にいる、というトゥンベリの警鐘には真摯に耳を傾けなければならない。

※1:F Stuart Chapin III, et al., "Consequences of changing biodiversity." nature, Vol.405(6783), 234-242, 2000

※2:David B. Wake, Vance T. Vredenburg, "Are we in the midst of the sixth mass extinction? A view from the world of amphibians." PNAS, Vol.105, 11466-11473, 2008

※3:Caspar A. Mallmann, et al., "More than 75 percent decline over 27 years in total flying insect biomass in protected areas." PLOS ONE, doi.org/10.1371/journal.pone.0185809, 2017

※4:Francisco Sanchez-Bayo, Kris A G. Wyckhuys, "Worldwide decline of the entomofauna: A review of its drivers." Biological Conservation, Vol.232, 8-27, 2019

※5-1:Gerardo Ceballos, et al., "The Sixth Extinction Crisis Loss of Animal Populations and Species." Journal of Cosmology, Vol.8, 1821-1831, 2010

※5-2:Gerardo Ceballos, et al., "Biological annihilation via the ongoing sixth mass extinction signaled by vertebrate population losses and declines." PNAS, Vol.114(30), E6089-6096, 2017

※6:William J. Ripple, et al., "Are we eating the world's megafauna to extinction?" Conservation Letters, Vol.12, Issue3, 2019

※7:Samia R. Toukhsati, "Animal Extinction." Animals and Human Society, doi.org/10.1016/B978-0-12-805247-1.00031-9, 2018