「五十肩」加熱式タバコも喫煙者はなりやすい?

(ペイレスイメージズ/アフロ)

 加齢と老化によって肩に炎症が起き、激しい痛みによって肩を動かせなくなるのが俗にいう「五十肩(Frozen Shoulder、凍結肩、四十肩とも)」だ。原因がよくわからないため予防法はない。喫煙によるニコチン摂取は糖尿病のリスク因子であることがわかってきているが、糖尿病患者が五十肩になりやすくニコチンに血管収縮作用があり、五十肩の原因と考えられることから、加熱式タバコを含めたタバコを止めることが予防になるのかもしれない。

辛い四十肩・五十肩

 テレビを見ていると、腰痛などの関節痛のための湿布や治療薬などのCMがやけに多いことに気付く。40歳以降にどちらかの肩、まれに両方の肩に痛みが起き、肩が動かしにくくなり、かつ頸椎の動きと肩の痛みが連動しないのが五十肩で、痛くて背広を着られなくなったり寝返りがうてなくなったりと日常生活に悪影響を与える病気だ。

 加齢によってかかりやすい関節炎だが正確な患者統計はなく、肩こりを含めた四十肩・五十肩は全成人の30%前後がかかるという調査がある(※1)。また、ある製薬会社の調査によれば40~60代の8.0%、414万人が四十肩・五十肩にかかっているようだ(※2)。

 肩の腱や筋肉が断裂していたり、関節にできたリン酸カルシウムの結晶による深刻な炎症(石灰沈着性腱板炎)だったり、腫瘍や感染症による痛みだったりすることもあるので、40歳以降で肩に痛みを感じたら安易に五十肩と即断せずに医療機関を受診すべきだ。五十肩の治療は、鎮痛剤や関節内への注射、リハビリテーション、外科手術、鍼灸治療などがある。数ヶ月~数十ヶ月で自然治癒することも多いが、重篤化・長期化する場合もあり適切な治療は欠かせない。

 原因がよくわかっていない五十肩だが、どうすれば予防できるのだろうか。五十肩のリスク因子には、外傷、肺結核、心臓病などがあるが、糖尿病の関係も1970年代からよく知られてきた(※3)。糖尿病にかかると血管の血流が悪くなって血管障害の合併症が起きて五十肩の原因の1つになり、また糖尿病により関節のコラーゲンが硬くなるためとも考えられている(※4)。

 糖尿病の患者の約20%が五十肩にかかるとされ(※3-3)、糖尿病にならないことが五十肩の予防法の1つになりそうだ。生活習慣病である糖尿病(II型)は食事の量や質、運動不足などで発症するが、喫煙すると糖尿病にかかるリスクが上がることも知られている(※5)。

ニコチンと糖尿病の関係とは

 では、最近になって広がり始めているアイコス(IQOS)などの加熱式タバコはどうだろうか。タバコ会社は有害性の低減をPRしているが、加熱式タバコでも糖尿病にかかるリスクは高いと考えられる。なぜなら、仮にタバコ会社のいうとおり有害性が低くなっていてもニコチンだけは、喫煙者をニコチン依存にするため必要十分な量が入っているからだ。

 ニコチンについてタバコ会社はその有害性を認めたがらない。なぜなら、ニコチンこそがタバコという製品にとって必要不可欠な依存性薬物であり、喫煙者に喫煙習慣を植え付け、タバコから逃れられなくするためにニコチンは欠くべからざるものだからだ。

 そもそもニコチンには血管収縮作用があり、血管に障害を引き起こす危険性がある(※6)。それ自体、肩の血行を阻害し、五十肩になるリスクを高める。

 また、最近になってニコチンがホルモンなど内分泌系に作用し、身体のバランスを保つ「恒常性維持機構(グルコース・ホメオスタシス、Glucose Homeostasis)」を乱すことが知られてきた(※7)。このバランスが壊れると糖尿病などにかかりやすくなるが、さらにニコチンは血糖値を下げる働きをするアディポネクチン(Adiponectin)の分泌を抑えるため(※8)、加熱式を含むタバコを吸ってニコチンを摂取するとII型糖尿病にかかるリスクも上がるということになる。

 もちろん、糖尿病は五十肩以外にも多くの網膜症、腎症、神経障害などの合併症や膵臓がんなどの発がんリスクを高める(※9)。糖尿病にならず五十肩にならないためにも、ニコチンを含むタバコ製品を遠ざけることをお勧めする。

※1:矢吹省司ら、「日本における慢性疼痛保有者の実態調査(Pain in Japan2010より)」、臨床整形外科、第47巻(2)、127-134,2012

※2:小林製薬「四十肩、五十肩で悩む人の声」(2018/12/19アクセス)2014年調べ

※3-1:J F. Bridgman, "Periarthritis of the shoulder and diabetes mellitus." Annals of the Rheumatic Diseases, Vol.31, 1972

※3-2:P E. Arkkila, "Shoulder capsulitis in type I and II diabetic patients: association with diabetic complications and related diseases." Annals of the Rheumatic Diseases, Vol.55(12), 902-914, 1996

※3-3:Robert C. Manske, et al., "Diagnosis and management of adhesive capsulitis." Current Reviews in Musculoskeletal Medicine, Vol.1(3-4), 180-189, 2008

※3-4:Nasri Hani Zreik, et al., "Adhesive capsulitis of the shoulder and diabetes: a meta-analysis of prevalence." Muscle, Ligaments and Tendons Journal, VOl.6(1), 26-34, 2016

※4-1:T D. Bunker, et al., "The Pathology of Frozen Shoulder." The Bone & Joint Journal, Vol.77, No.5, 677-683, 1995

※4-2:Jason E. Hsu, et al., "Current review of adhesive capsulitis." Journal of Shoulder and Elbow Surgery, Vol.20, Issue3, 502-514, 2011

※5-1:D Haire-Joshu, et al., "Smoking and diabetes." Diabetes Care, Vol.22(11), 1887-1898, 1999

※5-2:Toshimi Sairenchi, et al., "Cigarette Smoking and Risk of Type 2 Diabetes Mellitus among Middle-aged and Elderly Japanese Men and Women." American Journal of Epidemiology, Vol.160, Issue2, 158-162, 2004

※6:Claire E. Black, et al., "Effect of nicotine on vasoconstrictor and vasodilator responses in human skin vasculature." American Journal of Physiology, Vol.281, Issue4, 2001

※7:Jesse Oliver Tweed, et al., "The endocrine effects of nicotine and cigarette smoke." Trends in Endocrinology & Metabolism, Vol.23, Issue7, 334-342, 2012

※8-1:Li Hong Fan, et al., "Adiponectin may be a biomarker of early atherosclerosis of smokers and decreased by nicotine through KATP channel in adipocytes." Nutrition, Vol.31, Issue7-8, 955-958, 2015

※8-2:Xiao-Jun Bai, et al., "Nicotine may affect the secretion of adipokines leptin, resistin, and visfatin through activation of KATP channel." Nutrition, Vol.32, Issue6, 645-648, 2016

※9:Kiyonori Kuriki, et al., "Diabetes and cancer risk for all and specific sites among Japanese men and women." European Journal of Cancer Prevention, VOl.16, Issue1, 83-89, 2007