どうする「加熱式タバコ」の後発製品

写真:筆者撮影

 厚生労働省は、健康増進法の改正案の中に加熱式タバコ(加熱式たばこ)を入れるかどうかについて、ようやく検討に入ったらしい。厚生労働省の健康課によれば、加熱式タバコについての治験の結果などを眺め、専門家の意見を聞きつつ改正法案をまとめたい、ということだ。

 ところで、資本主義経済・自由主義経済だから当然だが、人気のある製品には必ず競合が出現する。加熱式タバコも例外ではない。売れている大手タバコ会社の製品を追随するように、すでに多くのサードパーティ製品(海賊版)が市場に出回っている。

加熱式タバコは陳腐化した技術

 筆者が前に書いた(※1)ように加熱式タバコの機構の多くは、30年以上前にすでに出ている陳腐化した技術が多い。アイコスやグローなど、タバコ葉を燃やさずに加熱する方式は1988年に出ているし、リキッドを加熱して発生した蒸気をタバコ葉に通過させるプルーム・テックの機構にしても基本的には既存の電子タバコを流用したものだ。

 開発費をかけた先行製品を後発品から守るために特許などの知財保護があるわけだが、すでに特許の多くは期限切れ(20年)でいかに大手タバコ会社といえど後発のサードパーティ製品に対してクレームを付けることはできないだろう。

 また、大手タバコ会社が販売する加熱式タバコは、最初に本体を入手するのに手間と時間がかかる。各社ホームページへ行けばわかるが、まず年齢確認があり、個人情報を入力して登録しなければ購入ページへ進むことができない。さらに、品薄な製品はネットで高く売られていたり、そもそも入手に時間がかかったりする。

 そのため、後発の中小規模の企業が参入する大きなメリットがあるわけだ。これらの企業は基本的に自社でタバコ葉を扱わない。ガジェットの売上げで稼げばいい、というスタンスになる。

 タバコ葉を加熱するタイプの加熱式タバコは、「世界で初めて加熱式タバコを作った」という触れ込みの、あるメーカーが「ヴェポライザー」というジャンルを立ち上げ、大手タバコ会社に伍して参入している。同社には中国製のいくつかのサードパーティ製品があるが、基本的には刻みタバコや既存の紙巻きタバコのタバコ葉にグリセリンなどのリキッドを添加し、それを加熱して吸う。

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ヴェポライザーと銘打ったサードパーティ製品の1つ。あるガジェットは230℃まで加熱することができ、既存のタバコ葉を本体の穴に入れ、吸い口をネジ込んで吸う。当然だが、タバコ葉を入れると燻ったような焦げたような匂いがする。本体もかなり熱くなるが持てないほどではない。写真:筆者撮影

 大手タバコ会社の加熱式タバコは、自社製のスティックなりカプセルなりを使わないと吸うことが難しいが、ヴェポライザーの場合、どんな銘柄でも好きに味わうことが可能になる。タバコ葉はなんでも自由に選んでもらい、自社製のガジェットで勝負する、というわけだ。ただ、紙巻きタバコを適当な長さに切ったりリキッドを添加したり、あるいは特性のアルミ筒に詰めたりという煩雑さがある。

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サードパーティ製品は、アルミでできた筒状の付属品がついていることもあり、そこに既存の紙巻きタバコを入れ、いちいちハサミなどで切断し、本体の穴へ入れて吸うタイプのものもある。これだと、1本の紙巻きタバコで3回分、吸うことができそうだ。また、グリセリンなどの液体を添加し、揮発性を高めるなどする。写真:筆者撮影

プルーム・テックの互換バッテリーも

 ところで、JTのプルーム・テックは、アイコスやグローと加熱の方式が異なる。本体は加熱機構がついた単なるバッテリーで、リキッドカートリッジを加熱して出た蒸気をタバコ葉が詰まったタバコカプセルに通過させて吸う。だから、サードパーティ製品もアイコスやグローなどの方法ではないものが出ている。

 プルーム・テックは経営戦略を間違えたせいで需要に対して生産が遅れ、製品不足が続いてきた。この品薄感とタイムラグを利用し、プルーム・テックの互換性バッテリーが早々に開発され、市場に出回っている。

 これら製品は、互換バッテリーと銘打ってはいるが、実質的にはプルーム・テック本体(バッテリー)のサードパーティ版と言っていい。プルーム・テック用のタバコカプセル(カプセル5本、リキッドカートリッジ1本、460円)を購入すれば、プルーム・テック本体がなくても吸うことが可能だ。

 ちなみに、プルーム・テック用タバコカプセルは、20歳以上ならコンビニやタバコ店などで購入(今のところ東京都と福岡県のみ)できるが、本体と同じでまだかなりの品薄状態のようだ。筆者が買った渋谷のタバコ店は12月下旬になって「ようやくJTが持って来た」と言うが、通りのすぐ向いのアイコス専門店では本体さえ「今すぐ購入できます」となっていた。

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JTのプルーム・テックのタバコカプセル(メビウス・レギュラー)。1パックにカプセルが5本とリキッドカートリッジが1本入っている。上の黒い棒状のものがリキッドカートリッジだ。サードパーティ製品は、このカプセルとリキッドカートリッジがあれば吸うことができる。写真:筆者撮影

求められるサードパーティ製品への対応

 ところで筆者は以前、加熱式タバコや電子タバコに使われているリチウムイオン電池の爆発の危険性について書いた(※2)ことがある。東京消防庁によれば、電池の爆発事故は今後、増えていくことが予想される。

 大手タバコ会社製品の場合、技術的ガバナンスやマネジメントにそれなりの担保を期待できるだろう。もし仮に電池爆発などの事故が起きても、それなりの対応をとるはずだ。

 しかし、中小規模のサードパーティ企業が参入する電気的なガジェットでは、PL法などで責任を負うことができるほどの体力があるかどうか疑問だろう。また、バッテリー容量を変えるなど、電気機構を自分で改造したりすれば、危険性が高まることも十分に想像できる。実際、バッテリー切れを嫌い、様々な改造方法がネット上などで入手可能だ。

 当然だが、大手タバコ会社は勝手に出してきた後発のサードパーティ製品に対して責任など持たない。また、改造した製品にも対応しないだろう。電気的なガジェットである加熱式タバコや電子タバコは、たばこ事業法の適用と同時に、製造者責任の観点からその安全性に製造側の責任を明示し、販売には技術的な安全証明を求めるなどの措置が必要だ。

 さらに言えば、大手タバコ会社がいくら加熱式タバコについて健康への害の低減を訴えても、こうした後発品で使用法に変更が加えられれば何の説得力も持たない。厚生労働省はようやく加熱式タバコの評価検討に入ったようだが、消費者庁などとも連携し、大手タバコ会社以外の製品にも目配りのできるような施策を考えるべきだろう。

※1:陳腐化した加熱式タバコ技術についての参考記事:加熱式タバコは手を換えた「ニコチン伝送システム」だ

※2:リチウムイオン電池の爆発事故についての参考記事:タバコが口元で「爆発」したら