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飲む「酒の種類」で感情が変わる

石田雅彦サイエンスライター、編集者
写真:筆者撮影

 そろそろ忘年会シーズンだ。最近の若い人はあまり酒席が好きではないらしい。筆者は酒が飲めればどこへでも行くし、甘酒以外ならどんな酒でも飲むが、アルコールの種類によっても好き嫌いがあるようだ。

 大きく分けると、発酵酒派と蒸留酒派になるだろうか。ワインや日本酒は発酵酒だし、ウォッカや焼酎は蒸留酒だ。どちらかと言えば、発酵酒派は雰囲気を楽しみ、蒸留酒派は酔い心地を楽しむような気がする。

蒸留酒を飲むと攻撃的になる

 その酒の種類と感情について、英国の医学雑誌『BMJ』のオンライン版「BMJ Open」に興味深い調査研究が出た(※1)。英国ウェールズの公衆衛生研究者らによるもので、国際薬物調査(Global Drug Survey)が21カ国、2万9836人(18歳から34歳の男女)を対象に、ジンやウォッカなどの蒸留酒(スピリット)、赤ワイン、白ワイン、ビールの4種類の酒の消費について調べたデータを分析したものだ。調査方法は、11の言語について2015年11月から2016年1月までの間に新聞、雑誌、オンラインで匿名アンケートを行った。

 その結果、蒸留酒(スピリット)を飲むと元気や自信が出たりセクシーな気分になる反面、攻撃的になったり気分が滅入ったりするなど、感情は肯定的にも否定的にも揺れ動いた。赤ワインはリラックスするのと同時に脱力感が出るが攻撃的な感情は抑えられる。白ワインはあまり特徴的ではなく、ビールを飲むと自信が出たりリラックスしたりするがセクシー度では最も低い。

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酒の種類別の感情の違い(%)。蒸留酒と赤ワインの感情の差が激しいが、特に蒸留酒を飲むと肯定的にも否定的にも感情が揺れ動くことがわかる。Via:Kathryn Ashton, et al., "Do emotions related to alcohol consumption differ by alcohol type? An international cross-sectional survey of emotions associated with alcohol consumption and influence on drink choice in different settings." BMJ Open, 2017より数値をグラフ化した。

女性はセクシーな気分になる

 また、男女別でみると酒を飲むとあらゆる感情が出るが、リラックスして脱力感に襲われるようだ。男女で違いが出た感情は、女性は酒を飲むとセクシーな気分になったり哀しくなったりする。

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飲酒した際の男女別の感情の違い(%)。「攻撃的になる」だけ男性のほうが高い。特に違いが出るのが「セクシーになる」と「哀しくなる」だ。女性を口説くときには一緒に酒を飲むのがいいのだろうが、泣き上戸には要注意だ。Via:Kathryn Ashton, et al., "Do emotions related to alcohol consumption differ by alcohol type? An international cross-sectional survey of emotions associated with alcohol consumption and influence on drink choice in different settings." BMJ Open, 2017より数値をグラフ化した。

 もちろん、匿名によるアンケート調査なので不正確な部分はあるだろうし、飲酒している際のアンケートではなく記憶に頼ったものなので、そうしたバイアスもありそうだ。だが、母数が大きいので確度はそれなりにあると言える。よく「酒に飲まれるな」と言うが、アルコールが入ると多種多様な感情が増幅される。自分をコントロールして飲みたいものだ。

※1:Kathryn Ashton, Mark A Bellis, Alisha R Davies, Karen Hughes, Adam Winstock, "Do emotions related to alcohol consumption differ by alcohol type? An international cross-sectional survey of emotions associated with alcohol consumption and influence on drink choice in different settings." BMJ Open, Vol.7, Issue10, 2017

サイエンスライター、編集者

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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