DNA解析で暴かれた「ジンベエザメ」市場流通の実態

インドネシアのジンベエザメ(写真:アフロ)

 絶滅の危機に瀕しているとされ、日本も締約国になっている「ワシントン条約」で取引が規制されている海洋生物、特にサメやエイの仲間が世界中の市場に違法に流通している実態について、カナダのゲルフ(Guelph)大学の研究者がDNA(遺伝子)解析で明らかにした。この報告は、8月25日付け英国の科学雑誌『nature』の「SCIENTIFIC REPORT」に掲載されている(※1)。

フカヒレ食材や漢方薬として

 研究者は、カナダ、中国、スリランカの129カ所の市場から、希少種のサメ20種とエイ5種のDNAを採集した。それを解析した結果、そのうちの少なくとも12種類がワシントン条約附属書で取引が規制される野生生物のリストにも記載されている種類のサメやエイであり、この中には沖縄などでダイバーたちに人気のマンタや巨大なジンベエザメのDNAも含まれていることがわかった、と言う。

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このリポートを作成した研究者は、DNA解析により134種類のサメとエイを同定した。図はその中の希少種。縦軸の色分けは稀少性を、横軸は取得された試料の量を示す。色分けは「CITES(サイテス、 Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)」のリストから、また「16S rRNA系統解析」などの手法でDNAを調べた。リストの種類とDNA分類や学術的系統分類の間に多少ズレがある。

 こうしたサメのヒレは、いわゆる「フカヒレ」として高級食材となり、エイのエラは漢方薬(膨魚鰓)の原料になるなどしている。一般的に世界の沿岸部では、サメ類は貴重なタンパク源となり、フカヒレの需要は特に中華料理の文化圏で急増している。

 フカヒレや薬膳素材になる場合、乾燥したり粉末にされたりしているため、サメやエイの流通についてはその実態があまり明らかにされていなかった。乾燥や粉末の状態になっているとDNA解析は難しくなるが、この研究者は99%以上の確率で一致させることができた、と言う。マンタ類の細かい系統分類もDNAにより分けたそうだ。その結果、希少種として世界的に知られ、保護の対象になっているジンベエザメではヒレとエラの両方が採取された。

 サメやエイの仲間は、繁殖力が低く、成長が遅いため、乱獲による個体数減少圧に対して脆弱と言われ、中でもジンベエザメは成長が遅く長寿だ。絶滅してしまえば、その種を復活させることは難しい。持続可能で多様な生物種環境を保全するためには、こうした絶滅危惧種の保護は喫緊の課題だろう。研究者は、DNA解析による追跡調査の有効性を主張し、早く対策を取るべきだ、と言っている。

※1:Dirk Steinke, Andrea M. Bernard, Rebekah L. Horn, Paul Hilton, Robert Hanner, Mahmood S. Shivji, "DNA analysis of traded shark fins and mobulid gill plates reveals a high proportion of species of conservation concern." Nature, SCIENTIFIC REPORTS, 25, August, 2017