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ささっと「CEATEC」に行ってきた

石田雅彦科学ジャーナリスト、編集者
Photo by Masahiko Ishida

今日、10月7日から千葉県の幕張メッセで「CEATEC JAPAN 2015」が開かれています(10月10日まで)。毎年この時期に開かれ、国内外のIT系、テクノロジー系の関連企業、業界団体などがブースを出して自社などの技術をビジネス的にアピールする国内最大級のコンベンションです。というわけで、筆者は昨日のメディア取材日に行ってきました。

今年の目玉は、やはり「IoT(Internet of Things)」いわゆるモノのインターネットでしょうか。CEATECでも「CPS(Cyber Physical System)」というマークがついた展示が多く見受けられました。あとは、最近の流れからヘルス医療系、自動運転系、ドローン系、Cloud系の出展が目立つようです。

こうした技術については、あちこちで掲載されるでしょうから、筆者が目をとめたものをいくつかささっと紹介してみます。まず、駐車場側のHall 1から。全体にロボット系が目立たなくなっている中、シャープで見慣れたお顔に出会いました。ロボットクリエーターの高橋智隆(ロボ・ガレージCEO)氏です。Panasonicの乾電池ロボットでおなじみですが、シャープでもお仕事されるんですね。

ロボ・ガレージ代表の高橋智隆氏。
ロボ・ガレージ代表の高橋智隆氏。

同氏の写真の胸ポケットに入っているのが「RoBoHoN」。携帯端末(電話)とロボットが融合したヒューマノイド。これを持って通話するんですが、ちょっと滑稽な感じもしました。同氏は「これからはこういうスタイルで通話するようになります」と言ってましたが……。2016年の半ばまでには発売する予定だそうです。

次は、日立ハイテクノロジーズの携帯型脳波活動計測装置「HOT-1000」です。前額部の血流量を計測し、その変化をリアルタイムにデータに変えてBluetooth通信で携帯端末へ送る、というしろもの。人体に悪影響のない近赤外線を使い、脳の活動を解析するようです。

日立ハイテクノロジーズの携帯型脳波活動計測装置「HOT-1000」
日立ハイテクノロジーズの携帯型脳波活動計測装置「HOT-1000」

当初は、企業の研究開発や大学などの研究機関向けに発売し、値段をさげつつ、汎用製品に広げていくらしい。ヘッドセット形状のウェアラブル型装置で重量は約110g。学習中やゲーム中、テレビや映画を視聴中の脳の、どの部位が活発に活動しているかがわかれば、興味深い分析結果が出てくるかもしれません。

産業技術総合研究所のロボットイノベーション研究センターが開発した単眼カメラとマーカによる安価で高精度な「位置姿勢計測システム」も興味深い技術です。ロボットなどのセンサーで位置情報を計測するのは、実はなかなか難しい。我々が何気なく握って回すドアノブにしても、その位置や形状、回す力などは千差万別です。

モアレパターンを使ったマーカとロボットアーム先端の単眼カメラ
モアレパターンを使ったマーカとロボットアーム先端の単眼カメラ

子供の頃にカマボコ型のレンズを使ったモアレパターン、レンチキュラー(lenticular)の食玩などがありましたが、この技術ではあれを発達させ、マイクロレンズアレイを使って新たなモアレパターンのマーカを作ったそうです。このマーカを識別することで単眼のカメラでも立体視が可能となり、そのマーカがつけられた物体に対する位置や姿勢などのアプローチ認識をすることができるようになるらしい。マーカ自体は単なる印刷物のようなものなので、安価で軽量、電力不要。現状では2cm角ほどですが、さらなる小型化もできるようです。

豊橋技術科学大学が大成建設と共同開発した電気自動車のワイヤレス給電システムも、少し前から話題になっていますが、なかなか興味深いものです。従来の給電システムでは道路に送電コイルを並べるものが多いようですが、この技術ではコイルではなく金属板なので敷設が安価ですみます。また、電気自動車側の受電をタイヤのスチールベルトで受ける、というところがミソ。ほとんどのタイヤの中には、ピアノ線やスチールコードを束ねたスチールベルトが入っているので汎用性も高い、というわけです。

タイヤのスチールベルトを使ったワイヤレス給電システム
タイヤのスチールベルトを使ったワイヤレス給電システム

基本的には道路から給電され続けるので車載バッテリーは不要ですが、同ブースの方によれば高速道路などに敷設して給電し、一般道路上では高速時にためたバッテリーで動かすのが現実的、とのこと。また、工場内など限られたエリア内での給電システムにも使えるようです。こうしたワイヤレス給電システムをインフラ化するのには、政治や行政などの制約があるので難しそうですが、限定エリア内だけなら可能でしょう。

最後に紹介したいのは、京セラが日本予防医学協会と共同で始めた「デイリーサポート」というサービスです。スマホなどの携帯端末とアプリを使ったヘルスケアサービスは多種多様なものがありますが、このサービスでは「TSUC(ツック)」というウェアラブルデバイスがセットになり、日本予防医学協会が協力するサポートを受けられるようです。

日本予防医学協会とコラボしているところも強み
日本予防医学協会とコラボしているところも強み

この「TSUC」は万歩計としても機能し、カロリー消費量の計測も可能です。歩行時はもちろん、上下動もエレベーターかエスカレーターか階段かを検知し、ジョギングと自転車、自動車乗車時など、それぞれの微細な振動の違いと高度差などによってカロリー消費を検出するそうです。スマホのアプリには、体重と性別、ウエストサイズをあらかじめ入力し、スマホをお腹の周囲に沿ってすべらせると内臓脂肪をイメージ画像で見える化する「デイリースキャン」という機能が入っています。

以上、ささっと紹介しましたが、今日からの「CEATEC JAPAN 2015」へぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。筆者が興味を抱いた技術以外にも、おなじみの「村田製作所チアリーディング部」もパフォーマンスをやっていますし、オムロンの卓球ロボットも進化したラリーを見せています。

科学ジャーナリスト、編集者

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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