【MLB】大谷翔平を育てた栗山監督の"うまい呼び方"

(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

MLBエンゼルスの大谷翔平選手が、開幕から10試合で2勝&3本塁打と、大変な活躍を見せています。

大谷選手は、2012年にドラフト1位で北海道日本ハムファイターズに入団。指揮官・栗山英樹監督のもと、プロ野球選手として着実なキャリアを積み、2016年には日本一&MVPに輝いています。

栗山監督は今でも、大谷選手の活躍についてコメントを求められると、厳しさの中に愛情のこもった言葉を寄せています。

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大谷の知られざる入団秘話

先日、栗山監督に、チームマネジメント・コミュニケーション論をテーマにインタビューをする機会がありました。実は栗山監督は、配下の選手を下の名前(あるいはニックネーム)で呼ぶことを徹底していて、それは大谷選手に対しても例外ではありませんでした。

「翔平」の場合は、会う前は「大谷君」でしたが、入団交渉のときには「翔平」と呼んでいました。「君は絶対ファイターズに来るんだ。君の才能が僕たちのチームには必要なんだ!」という必死な思いを伝えるときに、「大谷君」と言っている場合じゃないですからね。

出典:「うまい呼び方」(サンマーク出版)

呼びやすいから、とか、みんなが呼んでるから、とかではなく、選手との距離を最適なものに調整するためのツールとして「下の名前で呼ぶこと」を強く意識していると、語ります。

野球界の行きすぎた上下関係を変えたい

現役を退いた後、スポーツジャーナリストの道を歩んだ栗山さんは、取材対象である選手の心に迫り、言葉を引き出すためのテクニックとして呼びかけ方を意識。それは監督に就任してからより強まったそうです。

選手時代に「栗山!」と呼び捨てにされると、すごく上から言われている感じがしてね(笑)。 でもなかには「栗!」と愛称のように呼んでくれるコーチもいて、そういう方には不思議と「何とか恩返ししたい!」という気持ちになりました。なので自分が監督になったからには、野球界で脈々と引き継がれてきた「厳しい上下関係」という風潮をもっと良い形に変えたいと思ったんです。

出典:「うまい呼び方」(サンマーク出版)

大谷に「昨日何食べた?」と聞かなかった理由

いっぽうで、距離を縮めすぎないことも重要。「なあなあの友達になりたいわけではない」というのが栗山監督のスタンスです。それは話題性も実力も兼ね備えたスター大谷選手に対しても、同様でした。

たとえば翔平を「翔平!」と呼んでも、「昨日は何食べた?」などという話は、 一度もしたことありません。くだらない話もしたことないですね。それは彼が超一流の選手だから。超一流の選手には、まわりがだんだんものを言わなくなる。いずれ自分が叱らないといけないときがくるだろうと思っていました。そのためには距離が遠すぎてもダメだし、近すぎても良くないんです。

出典:「うまい呼び方」(サンマーク出版)

大谷選手のエンゼルスでの立ち居振る舞い、チームメイトやスタッフへの接し方を見ていると、なんともいえない自然さが感じられます。緊張するでもなく、かといってヘラヘラするでもない。

あるときは、ホームランを打ったあと子供のような無邪気さでチームメイトに祝福をせがみ、あるときは、チームメイトのインタビューの最中にカメラの前を堂々と横切る。

他の監督だったら、大谷の今の成功はない?

大谷選手のこうしたフランクで飾らない距離感が、周囲から愛されることにつながり、ひいては好成績につながっているとしたら、まさに、ルーキーイヤーからの6年間を、コミュニケーションの達人である栗山監督のもとで過ごしたことが、現在の成功の一因と言えるでしょう。

ちなみにインタビューは、2017年のドラフト会議で、清宮幸太郎選手を引き当てた直後に行われました。多忙な中、きちんと言葉を選びながらじっくりと対応してくれた監督のひと言ひと言からは、実直な人柄と真摯な情熱がびんびん伝わってきて、取材陣一同、すっかりファンに。「こんな人に総理大臣をやってほしい(笑)」という冗談が飛び出すほどでした。

エンゼルス大谷選手の活躍と、栗山監督率いるファイターズの成績から目が離せない、2018年シーズンです。