M-1グランプリが復活しても、お笑いは冬の時代?【越えなくてはいけない3つのハードル】

(写真:毎日新聞デジタル)

 漫才日本一決定戦・M-1グランプリが5年ぶりに復活。12月6日(日)に放送される決勝大会には、お笑い界全体からの熱い期待が込められています。

M-1が帰ってくる

 笑い飯の優勝で幕を閉じた、M-1グランプリ(2010年・第10回大会)。今回ついに復活するということで、大きな話題を呼んでいます。

 12月6日(日)の決勝に進出したのは、和牛、馬鹿よ貴方は、スーパーマラドーナ、メイプル超合金、タイムマシーン3号、銀シャリ、ジャルジャル、ハライチの8組。MCは今田耕司と上戸彩が務め、当日の昼間に行われる敗者復活戦を勝ち残った1組を加えた9組が頂点を目指します。

 この進行スタイルは、オールドファンとしては懐かしいのひと言。復活にあたり伝統を崩さなかったことは、好感度大です。

 

お笑いブームは終わった?

 M-1が復活と聞けば、我が国のお笑いブームは安定して絶好調なのだろう、と思うのが普通ですが、どうやら状況は芳しくない様子。

 今年頭にはビートたけしが「お笑いブームは終わった」と語り、メディア環境変化の影響をもろに受けたテレビから力がなくなっていることもあり、純粋なお笑い番組・ネタ見せ番組は減るいっぽう。

 さらには、新しいスターが生まれてもその多くが「一発屋」として葬られてしまう消費の速さもあいまって、お笑いブームは斜陽だという意見も少なくありません。

ライバル番組たちの動向は?

 M-1の後を受けるようにしてスタートした「THE MANZAI」(フジテレビ)も、歴代王者(パンクブーブー、ハマカーンなど)が大ブレイクとはならず小粒の印象がぬぐえません(個人的には好きなのですが)。

 この冬はM-1グランプリ(テレビ朝日)に話題をさらわれ、打ち切りではないもののコンテスト形式で行われないことが決まっているとか(現に、THE MANZAI2015に関する発表は未だ行われていません)。

 さらに、M-1グランプリと並び称された賞レース、「R-1ぐらんぷり」「キングオブコント」も、一時期ほどの輝きを放てないでいます。近年のキングオブコントは視聴率が10%を切り、長年おなじみのスポンサーだったオロナミンCが降りてしまったことも話題になりました。

 若手芸人・制作者たちの「笑いを追求したい」「天下を取りたい」という高いモチベーションも、中堅・大御所芸人の底力や、お笑いビジネス全体の低調さを前に、息も絶え絶えという状況がこの数年続いていたのです。

 

希望の光も

 いっぽうで、希望の光も差し込みつつあります。

 フジテレビが「国民の誰もがおもしろいと認める最強の芸人だけが出演しネタを披露する」というコンセプトでスタートした特番「ENGEIグランドスラム」は、9月に放送された第3弾の視聴率が12.5%を記録。7月12日放送の第2弾と比較すると、2%増となったことが報じられました(ビデオリサーチ調べ)。となれば、この番組が「THE MANZAI」と合併していくと見るのが妥当でしょうか。

 さらには、10月に行われた「キングオブコント2015」は審査方法を一新し、松本人志、さまぁ~ず、バナナマンが審査員を担当するなどのテコ入れが実施。その結果、過去最高の平均視聴率15.0%を獲得し、「やればできる!」というムードが業界内に高まっているはず。

 となれば、ここで復活する名門・M-1グランプリは、絶対にこけるわけにはいかない!!……と、お笑い界全体からの異常なまでの期待感がかけられているのが、今大会なのです。

新スターは現れるのか?

 大会・ライブとして盛り上がり、番組として高視聴率が取れる、だけでは不十分。そこで優勝した芸人が新たなスターとして輝き、売れることが「お笑い界再興」のためには必須という、あまりに高いハードルが、今大会には課されています。

 だから、というわけではないでしょうが、本番まで1週間を切った現在も注目の審査員たちの顔ぶれは発表されていません。念には念を入れて、万全を期している制作側の執念が伝わってきます。

 

お笑いブーム=景気のようなもの

 と、こう見てみると結局、「お笑い人気」というものは、「景気」のようなものということをつくづく感じます。

 世の中でお金がどれだけ活発に回っているかの指標である「景気」は、つまりは「気」であって実体がない、というのは経済界の常識。

 「景気がいい」と人々が感じると、実際にお金を使って景気がよくなるし、「景気が悪い」と感じると、財布のひもを締めるので、実際に景気が悪くなる。

 お笑いブームにしても「陰が差した」「つまらない、飽きた」と思えば、つまらなく見えるし番組も視聴しないけれど、「盛り上がっている」「要チェック!」と感じれば、人々は賞レースに熱狂し、ブームは再燃する……。

 そういう意味では、これまでのお笑いブームで育った制作者・芸人・ファンが一体となって、信じて盛り上げ続けることが、大事。そうすることで初めて、腹を抱えて笑えるあの至福の時間が続くのです!……と、つい力んでしまいました。

注目度は錦織レベル?

 ちなみに、景気のいい話題として、もう一つ指摘しておきましょう。

 これだけ注目度の高い今回のM-1グランプリですから、スポンサーも名だたる企業が顔をそろえます。中でも、もっとも値段の高い「プレミアムスポンサー」は4社。サイゲームス、ファミリーマート、日清食品、そしてユニクロです。

 

 日清食品とユニクロと聞いて思い出すのは、そう、テニスの錦織圭選手。こうしたささいな偶然ひとつひとつにも、M-1グランプリへの期待感を(無理矢理にでも)感じていきたいもの。

 新生・M-1グランプリ(と優勝コンビ)が、「世界のエアK」同様、卓越した存在感と輝きを放つことを祈りつつ、決勝大会本番を待ちましょう。

(五百田 達成)