「サードウェーブ系男子」は、そんなに痛いのか?【SNS時代の”流行”の運命】

(写真:アフロ)

今年2月に「ブルーボトルコーヒー」が日本に進出して、半年以上がたちました。その勢いに陰りは見えないどころか、春先からは「サードウェーブ系男子」なるフレーズが注目されています。

そもそも、なにがサードウェーブなのか?

スターバックスのようなチェーン店で大量販売されるコーヒーではなく、豆の質にこだわり一杯ずつ丁寧に淹れるコーヒーが流行しています。

アメリカでコーヒーが大量消費されるようになった19世紀後半の第1波、1960年~90年代に大手コーヒーチェーンが躍進した第2波に次ぐ、第3波(サードウェーブ)というわけで、そのシンボルとなっているのが「ブルーボトルコーヒー」。

そんな「サードウェーブコーヒー」を飲んでいるような男性のことを類型化して、「サードウェーブ系男子」と呼ぶのだそうです(女子ではないところが面白いですね)。

コーヒー的ライフスタイル?

そのライフスタイルの特徴としては、服装はシンプルで上質なオシャレを志向。足元はニューバランスのスニーカー、ヒゲにメガネにニットキャップ。手軽でエコな自転車にまたがり、消費社会に流されず毎日を丁寧に生きる……。

なるほど、時代の空気をとらえた生き方のように思えますが、これがネット上では実に評判が悪い。

ちょっと流行れば、すぐに水をかける人が現れる

曰く「おしゃれぶってる時点でおしゃれじゃない」「結局、消費社会に踊らされている」「目新しいトレンドではなく、既視感がある」などなど。実に手厳しい批判が並びます。

「意識高い系」「丁寧な暮らし」「インスタ女子」などなど、特定のカルチャー・ファッションに象徴されるライフスタイルとそれに対する批判の声はセットのようなもので、毎日のように生まれては消えています。

誰もが認めるオシャレなんてない

思春期のころ、小田舎に住むダッサい僕にとって、世のトレンド情報は実にワクワクしたモノでした。

テレビや雑誌を通じて発信されるものは、「完全に新しく」「過去に例を見ないもので」「これを身につければ間違いなくオシャレでかっこいい」と信じ込んでいました。

ところがオトナになるにつれ、当たり前ですが、すべての流行は過去の焼き直しであることを知ります。とくにファッションは、いくつかの選択肢の組み合わせと、揺り戻しの歴史でしかないのだということが分かると、がっかりしたものです。そうか「すでにあったものなのか」と……。

「流行った時点でかっこわるい」時代

この情報社会では、すべての新しいものは、知られた時点ですでに古い。乗っかっていれば安心という鉄板の流行はないし、あったとしてもあっという間に消えていく。

ファッション、トレンド、ライフスタイル……。そのどれもに、既視感があり、メディア主導で、消費にひもづいている。そのことをみんな知ってしまったわけです。

流行の構造:踊る阿呆は楽しそう

けれど、そんな難しいことは考えず、流行のまっただ中にいる人たちはそこそこ楽しいし、ワクワクと毎日を過ごすことができるのも事実。

その構造をまとめると、こうなるでしょうか。

1、人より目立ちたい。でも、みんなとなじみたい。認められたいし一目置かれたい……。SNSのおかげで肥大し延長された「思春期的自意識」から生じる、「~~系な私」という自己主張。

2、そこを上手にくすぐり、後押ししてくれるメディア記事。過去の焼き直し、パクリでかまわないし、圧倒的な新しさはむしろ余計。

3、そうしたトレンドを揶揄し批判し、ときには憤る人たち。そこには、自分たちこそが正しい知識とセンスを持ち合わせている(目を覚まさせたい、啓蒙したい)という、強い自負心があります。

みんなカテゴリー化されたい(あるいは死んでもされたくない)

ファッションやグルメにとどまらず、生き方や性格・ライフスタイルにまで範囲を広げてのカテゴリー化は、上手くいけば多くの人の気持ちを揺り動かします(プラスにもマイナスにも)。それは、血液型や星座占いが、永遠不滅なのと同様です。

結局のところ、「サードウェーブ系男子」にしろ「肉食系女子」にしろ「マイペースなB型」にしろ「嫉妬深いさそり座」にしろ、「自分ってこうだな(ウットリ)」と静かに自負している(あるいは内心バカにしている)うちは平和なわけです。それをSNSでつぶやくのも、いいでしょう。

問題なのは、開き直ること、ことさら自慢して言い立てること、自分とは違う人を敵視して攻撃すること。

多様性社会に向けて考えるべきこと

「世の中にはいろんな人がいるし、ぶっちゃけ、言いたいことはいろいろあるけど、まあ、それぞれで楽しくやっていこうかね」あたりの感覚こそが、今後多様性を身につける必要に迫られている日本社会にとって、欠かせない視点ではないでしょうか。