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ロンブー淳が結婚、芸能界でも結婚はステータス?

五百田達成作家・心理カウンセラー

先日、雑誌「anan」から、「結婚したい男が増えている」というテーマで取材を受けました。

数年前から若い世代の早婚化は指摘されていますし、実際、「1年以内に結婚したいという男性の割合(25歳~29歳)が上昇に転じている」というデータもあります(国立社会保障・人口問題研究所 2010年 )。

「なるほど、男性たちの『結婚なんてまだまだ先』という意識は下げ止まったのかも」という思いを抱いていた矢先の、昨日の「ロンドンハーツ」です。

ロンドンブーツ1号2号の田村淳(39)が、生放送中に結婚を発表。相手の香那さん(29)をお披露目し、結婚を決意してからの8ヶ月間を報告しました。番組に生登場した香那さんと一緒に、なれそめを語ったり、秘蔵写真を公開したりと終始ラブラブ。相方・田村亮、有吉弘行、千原ジュニアをはじめとする共演者たちも、幸せそうにその様子を見守っていました。

際立つ「『年貢を納めた感』のなさ」

この番組を見ていて印象的だったのが、その圧倒的なまでの「『年貢を納めた感』のなさ」です。

確かにこれまで数々の大物タレントと浮き名を流してきたとはいえ、番組内で強調されたのは田村淳の一途な姿勢。一度は別れを告げた彼女のことが忘れられず、数年後に猛アプローチ。ついに彼女のハートを射止めるまでの過程が、ドラマチックに語られます。

自らの冠番組を使って、幸せいっぱいに報告する様は「ついに年貢を納めた」とか「彼女にせっつかれて仕方なく」とか、そういうネガティブイメージはなくいたって前向き。珍しく見せる照れた表情や、感極まってときおり見せる涙は、視聴者を手放しで幸せな気持ちにさせてくれました。

芸能界でも結婚はステータス

結婚難のこの時代に「結婚している」ということは、ちょっとしたステータスになりつつあります。

それは芸能界において顕著で、多くの女性タレントたちが結婚後も仕事を続け、むしろ家庭っぽさや子どものイメージを武器に、ママタレントとして仕事の幅を広げているのが現状です。

同様の流れが、男性芸人の世界にも来ているのを感じます。

芸人と言えば一昔前は、「遊びは芸の肥やし」「芸人の妻は浮気に耐えなくてはいけない」というような、破天荒でやんちゃなイメージがありましたが、最近は様変わり。

「アメトーーク!」で「嫁を大事にしてる芸人」企画がヒットしたり、ナインティナインの矢部浩之も自分の番組(「めちゃ×2イケてるッ!」)内で結婚披露宴を行うなど、男性芸人が結婚をポジティブに捉えている様子が伝えられます。

そこには「松本人志が45歳で、ついに19歳下の女性とできちゃった婚」とか「木村祐一が49歳で4度目の結婚」とか、上の世代の芸人のエピソードにはない、さわやかな親しみやすさが漂います。

「イクメン」ブームに憧れて!?

冒頭で述べたように、一般男性の間でも「結婚」はちょっとしたトレンドに。「イクメン」ブームも手伝い、ファッション誌でも子どもと一緒にオシャレを楽しむ父親像が提案されています。そうした流れに「結婚って、なんかいいかも・・・」と、淡い憧れを抱く男性は少なくありません。

こうしたいわば「ファッションとしての結婚」には賛否両論あるわけですが、そういう男性が増えた結果、結婚に対する抵抗や重い責任感がなくなっているのは事実。「結婚は男の墓場」とか「なるべくたくさんの女の子と遊んでから結婚したい」という意識が弱まっているのは、身のまわりの20代男性と話していても実感します。

それでも、男性たちの結婚観は女性に比べて、とてもあいまい。出産を含めてライフステージの中でリアルに結婚をプランする女性と、「キャッチボールとかしたいよね~」などとふわっとしたことを言っている男性の溝は、見た目ほど埋まっていないのでは、とも感じています。

半沢直樹の妻と、淳の妻

ところで、いま注目の夫婦像といえばドラマ「半沢直樹」の主人公・半沢(堺雅人)と妻・花(上戸彩)。あるときはタメ口でハッパをかけて励まし、あるときは「どこへでも着いていくよ」と癒し、ときには仕事面で夫をかっこよくサポート。その空気感は極めてイマドキで、多くの独身男性が「あんな子なら結婚してもいいよなあ」と魅了されています

対照的に、昨日の「ロンドンハーツ」での新妻・香那さんは、絵に描いたような「よくできた昭和の嫁」。

育ちのいいおっとりとした性格で、決して怒らず家事も上手。夫の言うことには「はい!」と返事をする、すらっとした美人。怖いぐらいの包容力と、これでもかと言わんばかりの上品さに、多くの視聴者が度肝を抜かれました。

放送を見た多くの独身男性が「うん、やっぱり、上戸彩もいいけど、こういう子もいいよね」「こんな人だったら、そりゃオレだって結婚したいよ」と、影響を受けたのは間違いのないところ。相手が芸能界の女性であればまだしも、29歳の一般人となれば、「もしかして・・・」とふくらむ妄想を止めることはできません。

今も昔も、芸能人の結婚が世の中の意識に与える影響は、小さくありません。

昨晩の田村淳の結婚報告が、独身男性たちの結婚のハードルをさらに下げて、「よし、オレも!」と背中を押したのか、はたまた、理想のハードルをぐんと押し上げ、「ま、身近にこんな子が現れたら、そのうちね」と上げかけた腰を落ち着かさせてしまったのか。

なんとも判断に困る、一夜の狂騒曲でした。

作家・心理カウンセラー

著書累計120万部:「超雑談力」「不機嫌な妻 無関心な夫」「察しない男 説明しない女」「不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち」「話し方で損する人 得する人」など。角川書店、博報堂を経て独立。コミュニケーション×心理を出発点に、「男女のコミュニケーション」「生まれ順性格分析」「伝え方とSNS」「恋愛・結婚・ジェンダー」などをテーマに執筆。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。

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