Yahoo!ニュース

新機軸のゲームはまだまだまだある。BitSummitよりインディーゲーム未注目作品5選

井上明人ゲーム研究者

インディーゲームのムーブメントは10年ぐらいかけて非常に多くのゲーム好きの人々の心を捉える大きなものに育ってきました。少人数で制作されるゲームがしょぼいものだったという時代はもうだいぶ昔の話で「新しいゲーム、変わったゲームを見てみたい!」という人にとって、いまインディーゲームシーンというは極めて魅力的なものとなっています。

さて、昨日・今日の二日間のあいだ国内最大級のインディーゲームイベント「BitSummit」が京都のみやこめっせで開催されています。筆者は少しだけBitsummitの審査員として手伝わせていただいております

さて、そんななかで今年のBitSummitのなかでインディーゲーム界隈のなかでもそれほど前評判が集まっていないけれども「これは面白い仕掛けだ!」と筆者が感じた作品5作を簡単に紹介させていただきます。

1.『Sweep It!』

一見すると、いわゆる「時間巻き戻し系」のアクションゲームかなといった感じです。『プリンス・オブ・ペルシャ』シリーズや、インディーゲームでヒットした『Braid』などがそういったものとして知られています。ただ、もう少し注意深く動画を見ていただくとそれだけではないことがわかります。時間巻き戻し系アクションゲームは往々にして難易度の高いステージが多く、繰り返し細かなプレイを求められがちですが、このゲームはその細かなアクション操作を、もう一手一手詰将棋のようにしてコマンドを直接入力することによって操作してしまおう、というものです。

詰将棋ならざる「詰めアクションゲーム」とでも言うべき新しいジャンルを開拓しようという野心を感じるゲームデザインです。

(開発:BY Omoplata Games/対応予定ハード:FOR Android, iOS)

2.『Light It ~ てらし鬼 ~』

ダンジョンを光で照らして探索しつつ、光の特性を利用してダンジョン内の謎を解き先にすすんでいくというアクション要素とパズル要素の合わさったゲームです。似たコンセプトのものだと、『Closure』なんかは有名ですが、『Light It』は、『Closure』とくらべてもパズル要素の比重がかなり高く、光自体がゲームの仕掛けとして何重にも意味を持っているという頭を使う設計になっています。

(開発:QUESTRO/対応予定ハード:PC/Steamサイト

ライジング・アーチ-雷火交わせし試練の塔-

こちらはインターフェイスの工夫が面白い一品です。動画を見ただけだとわかりにくいですが、画面上の好きなポイントをタップすることによって、プレイヤーキャラクターがワープして移動をするという横スクロールアクションゲームになっています。「画面上をタップ」という動作にゲーム画面内で「瞬間移動」という処理を重ね合わせることによって、めちゃくちゃカッコイイ感じの操作が可能になっていて、一工夫によって体験をガラリと変えているタイトルです。

(開発: CarasOhmi/対応予定ハード:PC)

4.AGARTHA(アガルタ)

同人/インディーズ界隈ではよく知られた神奈川電子技術研究所の手による2D物理演算を用いたアクションゲームです。2D物理演算のなかでも特に水や溶岩などの流体を用いたゲームとしては、たとえば『Where's my water』などがありますが、神奈川電子技術研究所もけっこう前から『ばいおるる』のようなタイトルを制作してきました。

このAGARTHAは、そういった流体の2D物理演算処理を活かしたアクションゲームで、溶岩を凍らせたり、水を蒸発させたり、岩を爆発させたりすることで、かなり自由に、多彩な手段でステージを攻略していくことができるゲームになっています。

(開発:神奈川電子技術研究所)

5.BackSlash

キャラクターのタイプと、二種類の攻撃方法の合計三つの要素を自由にカスタムできるという格闘ゲームです。

Canabalt』『Downwell』を思わせるようなスタイリッシュな2D格闘ゲームで、昨日のBitSummitの展示のなかでもかなり人気の展示となっていました。

(開発 Skeleton Crew Studio/対応予定ハード PC)

注目タイトルも多数

以上、五タイトルだけ紹介させていただきましたが、インディーゲームに注目している人にとって話題のタイトルも多数出展されています。

昨年おおきな話題をよんだ『OwlBoy』や、『ひとりぼっち惑星』のところにょりさんの新作『あめのふるほし』、VRを使って全身を使って闘うことのできる格闘ゲーム『GORN』、自分が動く時だけ敵も動くFPS『SUPERHOT』、自動生成されるステージを介したアドベンチャーゲーム『StrangeTelephone』、『Portal』のような雰囲気の『Bootleg Systems』、上下コマンドだけでプレイするシビアなスパルタンXのような『The Counter of death』などなど…ここらへんのタイトルは他のメディアでも紹介されていると思いますが、見ごたえのあるインディーゲームがほんとうにたくさん展示されています。

インディーゲームのイベントは、国内だけで言ってもこのBitSummitのほかに、Sense Of Wonder Night(SOWN)や、東京インディーフェス、デジゲー博などいろいろなものが実施されていますが、「とにかく新機軸のゲームがみてみたい」という人は、ぜひインディーゲームのイベントへと足を運んでいただくと、求めていた体験が見つかるかもしれません。

ゲーム研究者

1980年生。ゲーム研究者。立命館大学講師。現在、ゲームという経験が何なのかについて論じる『中心をもたない、現象としてのゲームについて』を連載中。著書に『ゲーミフィケーション』(NHK出版,2012)。ゲームの開発も行い、震災時にリリースした節電ゲーム『#denkimeter』でCEDEC AWARD ゲームデザイン部門優秀賞受賞。ほか『ビジュアルノベル版 Wikipedia 地方病(日本住血吸虫症)』など。

井上明人の最近の記事