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イオン、リユース容器での販売開始 プラごみ削減の起爆剤となるか?

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
イオンが販売するリユース容器を使った商品(イオン提供)

スーパー大手のイオンは19日、一部の食品やシャンプーなどの日用品を25日から、従来の使い捨て容器ではなく繰り返し利用可能なリユース容器で販売すると発表した。当面は首都圏の19店舗で販売し、そのうち15店舗では実店舗だけでなく「イオンネットスーパー」でも販売する。当初の取り扱い商品数は6メーカーの13品目に限定するが、徐々に増やしていく方針だ。

海洋汚染の元凶

使い捨てのプラスチック製容器は海洋汚染を引き起こすプラスチックごみの主要な排出源となっており、イオンはプラごみの排出量を削減することで、地球環境保護への取り組み姿勢をアピールする狙いだ。日本は世界有数のプラごみ大国にもかかわらず、欧米先進国やアジアの一部の国に比べてプラごみ削減への取り組みが遅れている。小売り大手のイオンがプラごみ削減への姿勢を強化することで、企業や消費者の関心が高まるかどうか注目される。

イオンは、リユース容器での販売を開始するにあたり、世界各国でリユース容器を使った事業を展開する米テラサイクル・グループのループ・ジャパンと提携する。容器の回収や洗浄などの業務はループが担う。

商品を提供する企業は、ロッテ、P&G、エステー、アース製薬、LUV WAVES of materials、ネイチャーズウェイの合計6社。イオンは今後、提供企業数を増やし、品目数も、開始時の13品目から、来春をめどに50品目前後に拡大する見通しだ。

容器返却はスマホで管理

消費者はイオンの店頭で、欲しい商品を容器代込みの価格で購入。使い終わった容器は、再び店舗を訪れた際に店内に設置された回収ボックスに返却する。容器が返却されたかどうかは、スマートフォンのアプリを通じて確認できる仕組みで、返却が確認されると、約2週間後に容器代がアプリを通じて利用者に返金される。イオンネットスーパーで購入した消費者も、返却は店舗に行く必要がある。

イオンは1991年に買い物袋持参運動を始めるなど、日本ではいち早く環境問題に取り組み始めた企業の1つ。プラごみ削減の柱とみられている3R(リデュース、リユース、リサイクル)活動にも力を入れてきた。だが、使用量そのものを減らすリデュースや、ごみを資源として再利用するリサイクルは一定の成果を上げていたものの、使い捨てせずに繰り返し使うリユースに関しては、他の2つに比べ、遅れていたという。イオン環境・社会貢献部の鈴木隆博部長は、今回の試みは、「資源循環型の新たな買い物スタイルを生む」と、会見で話した。

ループ・ジャパンは、イオンとの提携のほか、今夏をメドに独自のネット通販サイトを立ち上げ、リユース容器を使った商品の販売を始める予定だ。すでに、25前後の食品や消費財メーカーが参加を表明している。

米テラサイクルは、リユース容器を使った小売り事業を2019年5月に米国とフランスでスタート。その後、英国、カナダでも立ち上げ、ドイツでも始める計画だ。ネット通販のほか、フランスではカルフール、英国ではテスコなど、その国を代表する小売り大手と組んでサービスを展開している。

取り組み遅れる日本

国連環境計画(UNEP)の使い捨てプラスチックに関する報告書によると、世界のプラスチック生産量に占める用途別の割合で最も大きいのは、使い捨てを前提とした包装容器で全体の36%を占めている。プラごみに占める割合はさらに高く、47%。排出量が多いにもかかわらず、リサイクル率は手間がかかるなどの理由で14%と非常に低く、このため、海外では、プラごみ削減のため、リデュースやリユースに力を入れる国や企業が増えている。

日本は、プラスチック包装容器の1人あたり排出量が米国に次いで多く、欧州連合(EU)の平均や中国を上回る、プラごみ大国だ。だが、プラごみのリサイクル率が海外の主要国に比べて低い上に、リデュースやリユースの取り組みも遅れており、環境団体などから国や自治体、企業に対し、取り組みの強化を求める声が上がっている。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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