「路上飲み」は日本固有の文化?

(写真:アフロ)

新型コロナウイルス感染拡大防止のため飲食店での酒類の提供が制限されるなか、路上にたむろして酒を飲む「路上飲み」が問題になっている。強制力がないため国民のモラルに頼るしかないのが現状だが、実は世界に目をやると、路上を含めた公共の場での飲酒を法律で禁止している国は多い。路上飲みをめぐって論争が起きるのは、海外からしばしば「酔っ払いに寛容すぎる」と指摘される日本ならではの現象とも言えそうだ。

外国人が驚く日本の法律

海外から日本を訪れた観光客やビジネスマンが驚くことの1つが、路上や公園、駅、電車内など公共の場で、缶ビールや日本酒を飲んでいる人を見掛けることだとされる。米国のネットメディア「インサイダー」は数年前、「ほとんどの外国人が驚く日本の4つの法律」と題した記事を掲載し、その1つとして、路上での飲酒が合法であることを挙げた。

記事は「屋外の公共スペースでの飲食に眉をひそめる人も多い」と、公の場での飲酒を必ずしも好ましい風俗と思っていない日本人が多くいることにも触れつつ、酒を自動販売機で手軽に買えることや、大勢で酒を飲みながら花見をする習慣があることなど、日本独特の酒文化を紹介している。

インサイダーの記事が示すように、世界を見ると、飲酒自体は合法であっても、路上など公共の場での飲酒を禁止したり厳しく制限したりしている国や地域は、少なくない。例えば、筆者が住んでいた米国は、国としては公共の場での飲酒を禁じていないが、自治体レベルでは禁止しているところが多く、実質、一部例外を除き公共スペースでの飲酒はご法度だ。日本からの観光客も多いハワイは、州法で公共の場での飲酒を固く禁じており、ワイキキのビーチには「飲酒禁止」の看板が立っている。

「路上寝」に関心

他の先進国では、カナダはケベック州を除いて原則禁止、オーストラリアも大半の公共スペースを飲酒禁止にしている。欧州では原則合法としている国が多いが、都市によっては禁酒区域を設けているところもあるようだ。また、フランスは、カステックス首相が4月1日、新型コロナの感染拡大防止のため、路上飲みを禁止する方針を明らかにしている。

公共の場での飲酒と同様、多くの外国人が驚くのが、酔っぱらって電車の中で寝てしまうなど、泥酔している姿を人前でさらす日本人が多いことだ。英高級紙ガーディアンは昨年8月、泥酔して道路で寝てしまう日本人の話題を取り上げ、道路で寝ることを「rojo-ne」(路上寝)と、あえて日本語のまま紹介した。欧米メディアが日本語をそのまま紹介する時は、それが日本独特の文化や現象であることを強調しようとしている場合が多い。karoshi(過労死)やsalaryman(サラリーマン)が典型例だ。

日本で会社を経営しているフランス人の男性は、「フランス人は食事を楽しむためにワインを飲むが、日本人は酔っぱらうためにワインを飲む人が多い」と、やや困惑した表情で日本人とフランス人の酒の飲み方の違いを筆者に説明した。

日本人の酒の飲み方に驚くのは欧米人だけではない。中国の事情に詳しいジャーナリストの中島恵さんは、多くの中国人が、路上飲みをしたり公の場で酔っぱらったりする日本人の姿を見て驚いているという話を、最近、Yahoo!ニュース個人に書いている

断トツの1位

飲酒に寛容な日本の文化は、数字にも表れている。米国の調査機関ピュー・リサーチ・センターは2013年、世界40カ国の国民を対象に、飲酒は道徳的に受け入れられると思うかどうか聞いた。日本は「受け入れられる」と答えた人の割合が66%で、2位のチェコ(46%)、3位のドイツ(41%)を大きく引き離し、断トツの1位だった。逆に、「受け入れられない」と答えたのは6%で、40カ国中一番少なかった。

日本では、新型コロナ禍がなかなか収束しないなか、感染リスクが最も高いとされる「大勢での飲食」に対する規制に関し、政府や東京都などの対策が「手ぬるい」との批判も多い。一方で、飲食業界からは「なぜ飲食だけを狙い撃ちにするのか」という不満の声も高まっている。こうした飲食をめぐるせめぎ合いが起きるのも、日本独特の飲酒文化が背景にあるからかもしれない。