「女性差別発言も日本では謝れば許される」海外メディア、日本社会の特殊性を指摘

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

東京発で世界中に発信された、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の発言が、徐々に波紋を広げている。これまでは、元首相の女性蔑視的な発言に日本中が怒っているという国内の反応を伝える海外メディアが多かったが、一部メディアは、日本の政治や社会の特殊性に目を向け始めた。

なぜ辞任しないでいられるのか

「オリンピック組織のトップが女性を侮辱したとして謝罪。でも、日本では、それ(謝罪)で十分」。こんな、日本社会を揶揄するような見出しの記事を配信したのは、米紙ニューヨーク・タイムズだ。同紙は全世界に750万人超の有料読者を抱え、主要国の新聞業界が部数減に苦しむ中、例外的に部数を伸ばし続けている。世界で最も影響力のあるメディアの1つだ。

そのニューヨーク・タイムズは、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」との森氏の発言を受け、半数以上の国民が森氏のことを五輪組織委員会の会長職にふさわしくないと考え、テニスの大坂なおみ選手は発言を「非常に教養がない」と評し、大手紙は社説で辞任を求め、森氏自身も公に謝罪したが、しかし、森氏は依然、会長職にとどまっていると報じた。

そして、森氏が辞任しないでいられるのは、国民に対し説明責任を果たさず、保守勢力を守り、若者の批判的な意見に耳を貸さない日本の政治構造に支えられているからだと指摘。この構造は強固で、その証拠に、菅義偉首相をはじめとする政権与党幹部は誰一人として、森氏に辞任を求めていないと述べている。

継続性を重視する有権者

同紙はまた、そうした構造が出来上がったのは有権者にも原因があると、専門家の意見を交えながら解説。東京大学社会科学研究所のグレゴリー・W・ノーブル教授は、同紙の取材に対し、日本の有権者は政策よりも安全や継続性を重視して候補者を選ぶため、自民党の長期政権が続いていると述べた。その結果、自民党は、たとえ女性の地位向上策に失敗しても選挙で負ける心配がないため、女性の地位向上に真剣に取り組もうという気が起きず、それが森氏の厚顔な態度にも表れていると同紙は分析している。

女性の地位向上策の失敗とは、安倍晋三前政権の時に女性管理職の比率を「2020年までに30%程度」にすると目標を掲げたが、思うように進まず、その結果、昨年末に目標を「2020年代の可能な限り早い時期にする」と大幅に下方修正したことを指している。ついでに同紙は、現在、自民党所属の国会議員391人のうち女性が40人しかいないことや、菅内閣の女性閣僚はたった2人という事実を挙げ、自民党にとって女性の地位向上は単なるお題目にすぎないと強調した。

英経済紙フィナンシャルタイムズのレオ・ルイス記者も、「男女平等に関する日本のお粗末な実績や、SNSに毎日のように投稿される女性差別に関する話題を見れば、(森氏の発言を)笑って済ますことなど、とてもできない」と述べ、ニューヨーク・タイムズ同様、問題の根本が日本社会にあるとの見方を示した。

オールド・ボーイズ・クラブの存在

米国の公共ラジオNPRは、「女性差別は日本社会の至る所で見られる問題だが、特に、一時期を除いて戦後の政治をずっと支配してきた自民党の中で深刻だ」と報じた。NPRの取材に応じた青山学院大学のチェルシー・シーダー准教授は、「女性政策に関する自民党の実績は非常にひどく、そもそも野党が女性を積極的に登用し始めるまで、女性の登用など考えさえしなかった」と述べた。

同じくNPRの取材に答えた早稲田大学大学院アジア太平洋研究科のデイビッド・レーニー教授は、森氏を「オールド・ボーイズ・クラブ」のメンバーだと表現した。オールド・ボーイズ・クラブは、オールド・ボーイズ・ネットワークとも呼ばれ、組織内の男性が飲み会やゴルフなど勤務時間外の非公式な活動を通じて密かに親睦を深め、そこで重要なことや人事が決まる文化を指し、組織内での女性の活躍や出世を妨げる元凶とされてきた。外国企業に比べ、日本企業が今なお女性の登用で大きく後れを取っているのも、オールド・ボーイズ・クラブの存在が一因とされている。

森発言の直後に記事を配信したフランスのAFP通信は、記事の中で「日本は世界経済フォーラムのジェンダーギャップ(男女格差)指数ランキングで、世界153カ国中121位」と紹介したが、このランキングはその後、森問題を報道する他の海外メディアにも引用されている。ちなみに121位という位置は、同じ東アジアの中国や韓国より10位以上も低く、最近になってようやく女性の参政権が認められたアラブ首長国連邦の1つ下。日本の次はクウェートだ。

森発言は、女性の人権に関する日本社会の後進性や日本社会の特殊性を、改めて世界に印象付ける結果となっているようだ。